平成25年平成24年度決算特別委員会(企業庁)

石井秀武委員

1 権現ダムの活用について
(1) 権現ダムの安全管理について

先日、この決算委員会の県土整備部関連の質疑を行うに当たって、加西市の「いこいの村はりま」から加古川市にある権現ダムまでの播磨中央自転車道を、自転車に乗り現地調査を行った。その途中、道路沿いのため池では、道路の路肩から釣りを行っている人が何人もおり、すぐ脇をダンプカーが通り過ぎるという大変危険な状況であった。権現湖においても、立ち入り禁止の看板が設置されているにもかかわらず、同様に多くの人が立ち入って釣りをしており、中にはボートで乗り入れる人もいた。もはや付近の地域一帯がなし崩し的な状態になっているような状況であった。

私の地元、神戸市西区では、数年前にため池で遊んでいた児童がおぼれ、不幸にも亡くなる事故があった。その池の周囲には高さ約二メートルのフェンスが張り巡らされていたが、児童はフェンスを乗り越え池に近づき落ちたとみられている。権現ダムでは、立ち入り禁止の看板を設置されているようだが、残念ながらほとんど意味のないものとなっている。

このほか、釣り人が捨てるゴミの問題だけでなく、ボートで乗り入れた場合、エンジンからオイルが漏れると、水質に悪影響を及ぼし、工業用水を活用する企業に迷惑をかけてしまうなど、新たな問題も発生する。

そこで、企業庁として、同ダムの立入禁止区域についてどのような方針のもと安全管理をされているのか伺う。

水道課長(吉見秀敏)

 加古川工業用水道の水源である権現ダムについては、東播磨臨海部へ安定的に工業用水を供給するための重要な貯水施設である。
 このダムの安全管理については、従前から立入禁止看板の設置や1日1回の巡回監視により対応しており、湖面への侵入者を発見した場合には退去されるまで声掛けを行っているという状況である。
 しかしながら、広大な湖面であるので、常時監視して全ての立ち入りを排除することは困難であるので、昨年度から地元の加古川警察署の協力も得て、許可なく立ち入った場合は軽犯罪法違反で処罰の対象になるという可能性も示唆した内容の大型の看板を追加設置して、進めているところである。
 今後もこの大型看板を順次増設をしていくことにしており、加古川警察署とも連携を図りつつ、引き続き権現ダムの安全管理に努めてまいりたいと考えている。

石井秀武委員

(2) 周辺道路を含めた権現ダムの活用について

権現ダムは一周約10キロメートルあり、その周りの道路は、県道、市道そして企業庁がそれぞれ管理している。

近隣にある同じ工業用水道を供給する平荘ダムでは、普段から多くの方々が湖周辺をウォーキングやランニング、サイクリング等で楽しんでおり、駅伝大会も実施されている。

また、川西市にある、治水と上水の多目的ダムである一庫ダムでは、施設の見学会や周辺でマラソン大会が開催されている。

一方、権現ダムの周りには、市が管理するオートキャンプ場が隣接していることから、周りの道路と一体となった活用を見込むことができる。例えば、自転車レースのうち、一定時間での距離を競うエンデューロという耐久レースを周りの道路で実施すれば、高速道の出入口からも大変近く、多くの参加者が見込まれると考える。

さらには、来年度、播磨中央自転車道第1工区(13.6km)が完成する予定で、これによって加古川右岸自転車道と繋がって、加古川流域で一連の自転車道が形成されることになる。権現ダムはそれぞれの道路を繋ぐ中継地となり、今後、周辺道路において多くの自転車愛好家らの利用が見込まれると考える。

そこで、資産の有効活用や地域おこしといった観点から、周辺道路を含む権現ダムの活用について、県民局や市役所などの団体から、県民が広く参加できるイベントを開催する旨の申し出があった場合、企業のための工業用水道のダム施設ではあるが、企業庁として協力が可能かどうか伺う。

水道課長(吉見秀敏)

 権現ダムについては、これまでダムの堰堤が毎年行われているウォーキングイベントの加古川ツーデーマーチのコースとして多くの方々に利用されている。また、堤体下の用地については、権現第1ダム公園として、少年野球の加古川西リトルリーグのグランドや地域のスポーツ活動、催しなどに活用されている。
 今後もダム周辺で行われるイベント等で、企業庁施設の利用の申し出などがあれば、工業用水道事業に支障のない範囲で協力していきたいと考えている。

石井秀武委員

2 アセットマネジメント推進計画について

全国的に水道・工業用水道施設の多くは建設から数十年が経過しており、老朽化対策が急務となっている。

本県でも例外ではないことから、企業庁におかれては、水道・工業用水道施設にかかる修繕・更新を計画的に行うため、平成20年度にアセットマネジメント推進計画を策定し、効率的かつ効果的な修繕・更新工事の実施に取り組まれている。

同計画は、平成21年度から60年度までの40年間を計画期間とし、管路施設、電機・機械設備、土木・建築施設についてそれぞれ使用目標年数を定め、計画的に修繕・更新工事を実施することとなっており、特に、水道施設については、費用総額が40年間で約2,100億円となっている。

そこで、今後、施設更新のピークについて、どのような見通しを立てておられるのか、また、そのための財源確保対策である建設改良積立金積み立ての考え方とも合わせて伺う。

企業庁次長(土居康成)

 水道施設の更新は、自己財源をもって行うこととしているが、アセットマネジメント推進計画上、主として送水管の多くが耐用年数を迎える平成36年度から平成55年度までの20年間が更新のピークと見込んでおり、その期間は年平均更新費用を上回る費用が必要となり、総額を150億円と見込んでいる。
 この財源を確保し、負担の平準化を図るため、平成22年度決算から建設改良積立金を積み立てることとし、本格的な更新が始まる前の平成35年度までの14年間に、年平均11億円を積み立てることとしている。
 今後とも、より一層経営健全化に取り組み、更新財源の充実に努めるとともに、アセットマメジメント推進計画の着実な遂行により、水道の安全・安心、安定的な供給を維持していきたいと考えている。

石井秀武委員

3 進度調整地の現状と今後の対応方針について

企業庁では、地域の活性化、熟成に向けて地域整備事業として、播磨科学公園都市やひょうご情報公園都市、神戸三田国際公園都市などにおいて、企業誘致あるいは宅地分譲などに取り組まれている。

24年度実績では、21.4ヘクタールの分譲が行われたが、未売却面積は174.5ヘクタールあり、現在、住宅分野の景況が好調な中で、今後は分譲すべき用地は早期分譲に努めるなど、一層の誘致分譲に期待するところである。

一方で、播磨科学公園都市やひょうご情報公園都市には、現在、事業展開がなされていない広大な土地、「進度調整地」を保有されている。

それらの進度調整地は、維持管理にかかる費用は低いと推測されるが、取得された時とは社会経済情勢も大きく変わっていることから、特段の対応方針を定めず、長期間保有し続けることは望ましいものではないと思われる。

本年度は、新経営ビジョンの策定や第2次行革プランの3年目の見直しの年で一つの契機であり、進度調整地は何らかの方向性を示す必要があると考える。

そこで、進度調整地の現状と今後の対応方針について伺う。

公園都市整備課長(森本泰之)

 地域整備事業においては、バブル経済崩壊後の社会経済情勢の変化等による土地需要の縮小傾向を踏まえて、新たな住宅、産業団地の開発には原則として着手しない方針のもと、播磨科学公園都市では第2・第3工区等の1,164ヘクタール、ひょうご情報公園都市では第2から第4工区までの184へクタールについて、事業進度の調整を行っており、いずれの土地も未開発の山林状態である。
 進度調整地の今後の方針については、本年9月に第2次行革プラン3年目の総点検の中で、その検討方向をお示しした。
 その中では、「既開発地区の分譲状況、今後の社会経済情勢等を踏まえて、今後の取り扱いを検討する」としている。その検討に当たっては、過去の経緯はもちろんのこと、既開発地区の分譲状況、今後の社会経済情勢やニーズ等に配慮して、地元市町等の意見も踏まえ、慎重かつ弾力的に進めることとしており、今行っている第2次行革プランの総点検と歩調を合わせて、新たな企業庁経営ビジョンを策定していく中で、その方向性を検討していく。

石井秀武委員

4 今後の企業庁のあり方について

企業庁は、昭和41年に工業用水道事業と電気事業の2事業を行う企業局として発足、昭和49年に組織の強化を図るために企業庁に改組され、県民生活や産業活動に不可欠な水道用水や工業用水の安定的供給、地域の魅力と活力を高める地域整備などに取り組まれてきた。

しかし、近年においては人口減少社会など社会経済情勢の変化の中で、水需要や土地需要が減少するなど、企業庁を取り巻く環境が大きく変化している。

水道事業を見ると、アセットマネジメント推進計画に基づいて老朽化施設を更新しながら、引き続き安心・安全な水の供給に取り組んでいく必要があるものの、一方では、例えば、東京都において、海外の水道設備を受注するため、第3セクターを創設し、今年4月には台湾と技術協力に関する覚書を締結するなど、新しい事業展開に取り組んでいる団体もある。

また、地域整備事業についても、産業用地、住宅用地の分譲が進み、終了に向かいつつある地区もある。

一方で、今年度からは再生可能エネルギーの普及拡大を図るため、ダム堤体など既存のインフラを利用して、20年間にわたってメガソーラー事業に取り組まれている。

以上のように、事業に一定のめどが付きつつあると思われるが、厳しい社会・経済状況の中、第2次行革プランを基本としつつ、企業庁として従来から行っている事業のみを粛々と行っていくのか、もしくは時代の要請に応じた新たな事業を展開していくのか、今後の企業庁のあり方、存在意義についてご所見を伺う。

公営企業管理者(荒木一聡)

 企業庁は、昭和の初期に事業を始めたが、企業局として組織化したのは、昭和41年であり、45年近くにわたって工業用水や産業用地の分譲、さらに水道用水、それから住宅の供給など、県民の生活の向上や地域の活性化に努めてきた。今後の企業庁のあり方を考える際には、二つの点から考えていく必要があると思う。
 一つは、今後の社会経済の醸成をどのように見ていくかということだと思う。
 企業庁に関連する主なものを上げてみると、人口が減少し、人口の地域偏在が起きてくる。恐縮であるが但馬、丹波、淡路、西播磨といった、いわゆる多自然地域と阪神間地域との間で地域間格差が出てくる。そうした中において、県として県土計画をどのように行っていくかが一つの着目点である。
 また、県民の皆様の県政に対する期待を見たときには、安全・安心、医療、健康福祉や環境に対する施策へのご要望が多い。
 それから、3点目は、規制緩和や特区に見られるように、いわゆる民間活力を中心とした経済の再生を考えていく必要があると思う。
 そうした状況の中で、企業庁は公営企業であるので、どのような事業を具体的に選んでいくのかということになると思う。加えて、その場合に、公営企業なので税に依存するのではなく、利用者からいただく料金や、土地を分譲した場合の分譲収入等で事業を賄えるのかという、独立採算の観点である。
 このようなことを踏まえて検討していく必要があると思う。
 病院事業のように、税をつぎ込むのか、つぎ込まないのかといったことも一つの論点になるのではないかと考えているが、今までのところ水道の広域化を除いて基本的には税の継ぎ足しがない。
 そのようなことを考えていくと、水道用水、工業用水は健全経営を維持するという形で、唯一無二の企業であるので、維持していくのだろうと思う。また、地域整備開発については、まずは既に整備をして分譲している開発地区において、平成30年度に分譲率90%を目標にしているので、これをまず優先したいと考えている。
 加えて、現在進度調整をしている地区や新規事業については、引き続き抑制する方向が基本だと考えているので、このたび公表させていただいた第2次行革プラン3年目の論点整理の中においても、そのような記述をさせていただいたところである。また、現在開催している、企業庁の経営ビジョン懇話会での委員の意見や企業庁の若手職員からの提案も踏まえ検討を重ねていきたい。
 なお、メガソーラーについては、企業庁が保有している資産の有効活用と再生エネルギーの普及拡大の観点から、積極的に進めていく。
 また、それ以外に、東京都の水道技術の輸出のことを触れていただいたが、施設とかマンパワーを含め、いわゆる資産運用の形で企業庁として何をすべきかについても、検討していきたいと考えている。

石井秀武委員

ただいま荒木公営企業管理者からしっかりとご答弁をいただいた。企業庁も企業局から3年後には50年目を迎えるので、時代に即した県民ニーズを的確に捉え、その社会的使命をしっかり果たしていかれることを期待し、質問を終わる。ありがとうございました。