平成29年度予算特別委員会(健康福祉部)

石井秀武委員

1 本県の健康づくりの推進について
(1)健康づくり推進プランの改定について

県民が健康で、元気に生活するには、食生活や運動など健康的な生活習慣が必要不可欠です。平成27年2月定例会の一般質問で、私は、「県民の健康増進等による元気な兵庫の実現」について質問し、金澤副知事から「個人のみならず、地域や職場で健康づくりの実践の輪が広がるよう、健康情報の積極的な発信と健康ひょうご21大作戦の展開により、健康寿命の1年延伸の実現を目指す」とのご答弁をいただきました。

県では、平成23年に健康づくり推進条例を制定し、翌24年には、健康づくり推進プランを策定し、県民の健康づくりを総合的に推進してきました。そして、今定例会で第2次プランが議決されました。この間、本県においても受動喫煙防止条例が施行されるなど、県民の健康づくりを推進するにあたり、その社会情勢は大きく変化しています。

そこでまず、健康づくりにおける現状と課題は何か、またそれらを踏まえ、今般の第2次健康づくり推進プランの改定にどう取り組んだのか、お伺いします。

健康増進課長(松下清美)

 急速に少子高齢化が進展し、要介護高齢者や認知症高齢者の増加、医療費や介護費の増大等が問題となる中、健康寿命の延伸が重要な課題と認識している。
 そのため、死亡や要介護に至る主要な原因であるがん、心疾患、脳血管疾患などの生活習慣病への対応が必要であると考えている。
 しかし、こうした生活習慣病を早期に把握し、適切な医療や生活習慣の改善につなげるためのがん検診や特定健診の受診率は依然低く、食塩摂取量や日常生活における歩数、喫煙率も健康づくり推進実施計画の目標には達していない。また、歯や口腔機能の低下から全身虚弱に至るオーラルフレイル対策や、認知症などのこころの健康、災害発生時における二次的健康被害など多く課題があると考えている。
 さらに、メタボリックシンドロームに該当する人の割合、比率、こうした健康状況については、地域差があり、地域ごとの対応も必要となる。
 このため、第2次健康づくり推進プランの基本方針として、一つには、子供から高齢者まで、さまざまなライフステージに対応した取組の強化、二つには、健康寿命の延伸に向けた個人の主体的な取組の推進、三つには、多様な実施主体の連携・協働により、社会全体として健康づくりを支える体制の構築、四つには、本県の多様な地域特性に応じた支援の充実を明記したところである。
 このプランに基づく具体的な施策や数値目標については、来年度改定する実施計画で定めることとしており、引き続き検討を進める。

石井秀武委員

(2)健康寿命の延伸に向けた今後の取組について

本県の平均寿命と健康寿命は、いずれも伸びていますが、その差は、縮まっていません。これは、全国的にも同様の傾向にあります。

(県  H22 男1.38歳/女3.07歳 → H25男1.42歳/女3.08歳)

(全国 H22 男1.47歳/女3.23歳 → H25男1.49歳/女3.24歳)

急速な高齢化に伴い、要介護状態の人も増加し、2025年には約39万人に達する、認知症高齢者も約30~35万人になると見込まれています。また、要介護に至る原因としては、生活習慣病と高齢に伴う認知症、身体機能の低下の割合が多くなっています。

平成29年度当初予算においては、新規事業として、医療ビッグデータを活用した健康づくり支援の事業が計上されていますが、健康づくり推進プランの改定を踏まえ、健康寿命を延伸させ、平均寿命との差を縮めるために、今後どのように取り組んでいくのか、ご所見をお伺いします。

健康福祉部長(太田稔明)

 健康寿命の延伸に向けた取組であるが、県民の健康寿命の延伸に向けては、まず県民一人ひとりが主体的に取り組んでいくこと、そしてそのような健康づくりの取組を、我々行政や団体、あるいは企業など、多様な実施主体が連携・協働して、社会全体で支えることが重要であると思っている。
 このような考えのもとに、平成29年度からの第2次健康づくり推進プランでは、平成23年施行の条例で定めた、一つには、生活習慣病等予防の健康づくり、二つは、歯及び口腔の健康づくり、三つは、こころの健康づくりの3分野、そして、健康危機事案への対応、合計4分野別に取組方針をより具体的に定め、社会全体で総合的かつ計画的に健康づくりを進めたいと思っている。
 幾つか例示をさせていただくと、現在、901社に及ぶ健康づくりチャレンジ企業への支援メニューの拡充など、働き盛り世代の健康づくりの支援を充実したいと思っている。
 二つには、平成25年に施行した受動喫煙防止条例等に基づくたばこ対策の推進、三つには、オーラルフレイルと言われる歯・口腔機能の低下の予防、四つに認知症予防の体操で、コグニサイズとして有名であるが、このようなものの普及や市町特定健診等における認知症チェックシートの導入、五つに災害に備えた平時からの県・市町健康福祉部局と防災部局との情報共有、このような各分野で充実を図っていきたいと考えている。
 それから、ビッグデータの件であるが、市町や企業が健康づくりに効果的に取り組めるように、今は協会けんぽ等と連携し、特定健診結果や医療レセプト等、医療のビッグデータを活用した健康づくり支援システムの構築に取り組みたいと思っている。
 具体的に言うと、個人の健康リスクを判定し、そこから生活習慣病やロコモの予防を支援するシステムの構築に取り組みたいと思っている。
 このような中で、県民一人ひとりが生涯にわたって健康で生き生きと生活でき、健康寿命の延伸、そういう社会の実現に向けて進めていきたいと思っている。

石井秀武委員

(3)ロコモティブシンドローム対策について

ロコモティブシンドロームは、第2次プランの「運動習慣の定着」の中で方針が示されていますが、忙しい働き盛り世代は運動不足になりがちです。推計患者数は、予備群も含めると、全国に約4,700万人いると言われており、40歳以上の男女の5人に4人が、ロコモ及び予備群と推定され、将来的に要介護者になる可能性が指摘されています。加齢とともに忍び寄るため、体力の低下が始まるとされる40代後半を前に対策を講じることが有効とされており、健康寿命の延伸に極めて重要と考えています。

ロコモティブシンドローム対策については、平成25年度の予算特別委員会

において、「メタボリックシンドロームに比べてその認知度が低いことなどから、認知度の向上も含めて、スピード感と危機感を持って取り組むべき重要課題である」と指摘しました。

そこで、指摘から4年が経過し、今回、第2次の健康づくり推進プランを策定されるが、ロコモティブシンドロームの予防に向けた働き盛り世代の運動習慣の定着について、これまでの取組の成果をどのように評価されているのかお伺いします。

健康増進課長(松下清美)

 平成25年の国民生活基礎調査によると、要介護原因の約2割が骨折や関節疾患などの運動器疾患であり、ロコモティブシンドロームの予防は、健康寿命の延伸を目指す上で重要な課題であると認識している。
 県では、健康ひょうご21県民運動を展開する中で、地域における健康体操の普及を進めるほか、健康財団のポータルサイトにも健康情報や健康体操の動画を掲載し、ロコモティプシンドローム予防の実践に向けた啓発を行っている。
 これに加えて、働き盛り世代には、健康づくりチャレンジ企業に対する健康教室の開催や運動施設整備に対する補助、健康づくり推進サポート企業による運動の専門家派遣等により、運動習慣の定着を推進してきた。
 こうした取組により、平成27年の県民意識調査では、週2回以上継続的に運動している人が、平成18年度の39.3%から41.2%と若干増加した。特に70歳以上では約半数以上になったものの、30歳代から50歳代の働き盛り世代は2割から3割程度にとどまっており、ほかの世代に比べて運動不足が依然目立つ結果となっている。
 平成29年度は、企業等に対して健康づくりを内容とする講座を県下各地域で開催するとともに、健康づくりチャレンジ企業に対して運動施設や機器整備の補助メニューを拡充するなど、運動習慣の確立に向けた取組を強化する。
 今後とも、ロコモティプシンドローム予防に向けた働き盛り世代の運動習慣の定着に積極的に取り組んでいきたいと考えているので、よろしくお願いする。

石井秀武委員

2 残薬問題対策について

医師から処方された薬を大量に飲み残してしまう「残薬」は、患者の健康に悪影響を与えるとともに、医療費も無駄になります。飲み忘れや、自己判断での服用の中止など理由はいろいろ考えられます。処方どおりに服用せずに症状が回復しなければ、医師はその薬は効果がないものと判断し、より強い薬を出し、その結果、患者の健康を害する危険があります。日本薬剤師会の2007年の調査では、75歳以上の残薬の薬剤費は全国で475億円と推計されています。

残薬の確認は、薬剤服用歴管理指導料として、従来から保険調剤報酬の対象業務とされています。加えて、今年度から、「かかりつけ薬剤師・薬局」には、かかりつけ薬剤師指導料が保険調剤報酬で創設され、患者が自分の担当の薬局薬剤師を選択できるようになりました。さらには、健康サポート薬局の届出も始まっています。これらの制度が定着すれば、複数の医療機関からの処方せんをかかりつけ薬局で、一元的に管理することでき、調剤の重複防止に繋がると大いに期待しています。

厚生労働省の発表によると、昨年度末現在の全国の薬局の数は、5万8千軒を超えており、依然として、コンビニエンスストアの店舗数(日本フランチャイズチェーン協会加入の大手8社の店舗数の合計数(28年12月現在54,501軒))を上回っています。このように非常に身近な存在である薬局が、「かかりつけ薬剤師・薬局」として十分に機能を発揮するよう、例えば、在宅患者の服薬状況に応じた処方の変更等の医師への提言や、訪問による服薬指導などが推進されるよう取り組んでいただきたい。

そこで、残薬問題についての県の現状認識と、今後の薬局薬剤師を活用した残薬問題に対する取組方針をお伺いします。

薬務課長(稲田忠明)

 医療費が増大する中、残薬問題は重要な課題であるが、平成27年3月の国の規制改革会議で示されたとおり、医療機関ごとに門前の薬局で薬をもらう現在の医薬分業体制では残薬解消などは期待できないと認識している。
 このため、厚生労働省が平成27年10月に策定した患者のための薬局ビジョンで示されているかかりつけ薬剤師・薬局の定着促進が、必要不可欠と考えている。
 県ではこれまで、残薬削減に向けて薬局管理者等に対して毎年開催される保険講習会等で残薬確認の徹底を要請するほか、在宅患者の残薬発生状況に応じた処方の変更等をかかりつけ医に提言できる訪問薬剤師の育成のために、兵庫県薬剤師会が実施している研修会の開催を支援するなど、かかりつけ薬剤師となり得る人材の育成に努めている。
 また、残薬の再利用につなげるために、患者が残薬を入れ、薬局に持ち込むための節薬バッグや、残薬発生を防止するためのお薬カレンダーなどのグッズの作成も助成しているところである。
 来年度は、従来の取組等に加えて、兵庫県薬剤師会と連携して、定期的に服薬情報を確認するため、複数回に分けて薬を渡す分割調剤とか、服薬期間中の電話等による服薬確認等、患者が医薬分業のメリットを実感できる薬局ごとの取組を進めることとしている。
 これにより、患者が、かかりつけ薬剤師・薬局を選択するよう意識づけを行い、かかりつけ薬剤師・薬局の定着を図ることで、残薬の発生の防止と有効利用につなげていきたいと考えている。今後ともご指導賜わるよう、よろしくお願いする。

石井秀武委員

3 ひょうご孫ギフトプロジェクトについて

本県では、平成28年9月から、「ふるさとひょうご寄附金」に5万円以上の寄附をした方の孫や子どもに、県内企業が作った子育てギフトを贈るとともに、その寄附金で県内の私立保育所等に、県産木材の玩具を贈る「ひょうご孫ギフトプロジェクト」を行っています。

その実績を見ると、2月までの半年間に39人から2,344,000円の寄附があり、内訳は、県外からは5人、350,000円と少なく、県内からは34人1,994,000円と約9割を占め、これらは本来税として入ってくるべきものです。そして、寄附金の約1割が返礼品の購入に充てられます。

そもそもふるさと寄附金の本質は、経済的な見返りを求めない寄附金であり、過度な返礼品は制度の趣旨に合わないというのが県の考え方で、私もそのように考えています。

「ふるさとひょうご寄附金」は、応援メニューとして、平成29年度からは16プロジェクトを設けていますが、そのほとんどが、児童養護施設等で育つ子どもの応援や県立学校の環境充実のように、県が行う事業を財政的に後押しするものです。

しかしながら、「ひょうご孫ギフトプロジェクト」は、寄附をした人の孫や子どもを対象に、子育てグッズではありますが、税を使ってギフトを贈るという内容であり、どのような効果が期待できるのか。一部の自治体が、多くの寄附金欲しさに返礼品を贈呈し、それを目当てにふるさと納税を行う寄附者が増えていることが問題視されていますが、これと変わらないのではないでしょうか。

さらに、県下900の保育園等に玩具を贈るとのことですが、返礼品代やPR経費等を考えると、各施設へ届ける玩具は微々たるものです。また、県として実施すべき事業か疑問です。

そこで、「ひょうご孫ギフトプロジェクト」は、来年度も実施する方向ですが、事業効果をどのように考えているのか。また、今後とも事業を継続していく意義について、ご所見をお伺いします。

こども局長(入江武信)

 ひょうご孫ギフトプロジェクトについては、昨年9月から実施しており、これまで、各種広報媒体や民間ウェブサイトを活用し、県内外へPRするとともに、県内の全ての私立保育所や幼稚園等を通じて案内チラシを各家庭に配布するなど、積極的な広報を展開してきた。
 さらに、新聞やテレビ・ラジオなど各種メディアで取り上げられてきた。こういった取組により、現行の15プロジェクトで見ても、件数で上位に位置し、広報が行き渡りつつあると考えている。
 この事業については、子供の手肌に触れるベビー用品を贈ることにより、兵庫県においては、子育てに優しく、温かい社会づくりが進められているといった子育て機運の醸成に一定の効果を上げていると認識している。
 なお、返礼品については、他のふるさとひょうご寄附金事業との均衡に配慮し、換金性の制限される乳幼児が喜ぶグッズに限定したことから、返礼品目当ての寄附集めではなく、寄附者やその親戚、地域の孫や子供を支援する事業となっていると考えている。
 寄附者の共感と賛同の声もあることから、対象全施設へ玩具を届けることができるよう、平成29年度も、あらゆる機会を通じて広報に努め、ひょうごの温かい子育て機運の醸成に一層注力したいと考えているので、よろしくお願いする。

石井秀武委員

 局長とこれについて議論するつもりはない。恐らく、いろいろな思いがあって答弁されたと思うが、私が指摘させていただいたことは、質問の中でしっかり言わせていただいたので、繰り返し申し上げないが、来年度の事業効果をしっかりと見極めた上でこの事業についてどうするかということも検証していただきたいと思っているので、よろしくお願い申し上げ、質問を終わる。
 どうもありがとうございました。