平成21年度予算特別委員会(企画県民部②)

石井秀武委員

地方債の発行について、まず仕組債についてお伺いする。昨年の2月定例会の一般質問においても、仕組債について取り上げたが、本委員会でも引き続き質問をさせていただく。
 仕組債がどういうものかということは、昨日、我が会派の竹内委員外議員から丁寧に説明があったので、ここでは省略するが、昨年アメリカ発の金融経済危機が起こり、今後の経済情勢が不透明である中で、仕組債の持つリスクについて懸念を抱いている。昨日の答弁の中では、全会計起債実残高のうち、大部分は固定金利の起債で、仕組債の占める役割は1.9%とのことで安心はしているが、経済動向が不安定な時期でもあるので、質問をさせていただく。
 さて、県のホームページに掲載されている平成20年度県債発行方針を見ると、資金調達のガイドラインの一つとして、当面の金利負担の抑制を図るとされており、その具体的な発行方針としてデリバティブ組み込みローン等を実行すると記載されている。また、注意書きには、デリバティブ組み込みローン等については、企画管理部内に設置する資金管理検討会で慎重に検討して実施することとし、実施結果は資金管理委員会の評価対象とするとされているところであるが、そこで平成20年度における仕組債の発行実績について、発行額や利率、償還期間といった発行条件、また発行に至る資金管理検討会での検討経過をお伺いする。

大谷資金公債室長

今年度の発行額は50億円である。償還期間は10年で、当初借入利率は国債とほぼ同水準の1.535%であるが、今後、短期金利が上昇すると金利が変更される可能性がある。短期金利を代表するものとして、銀行間で取引される6ヵ月ものの金利というものがある。この短期金利が1.535%を超えて、さらに一定水準以上に上昇した場合には、先ほどの1.535から上昇した短期金利に切りかわるという仕組みである。
 具体的な水準を申し上げると、借入期間の前半5年間については、短期金利の水準が2.25%以上に上がったとき、後半5年間については短期金利が3.05%以上に上昇した場合に、それぞれ上昇した短期金利に切りかわるという仕組みである。
 この8月に開催した資金管理検討会では、その判定指標金利となる6ヵ月の金利が今後どうなるのかという将来推計に基づいて試算を行ったところである。この将来推計については、例えば1年後の6ヵ月金利、2年後の6ヵ月金利、10年後の6ヵ月金利というような、将来の金利を推計して、市場関係者向けに情報提供されているものである。フォワードレートと呼んでいるが、6ヵ月金利以外のものも提供されている。このフォワードレートの10年間の推移というのを基準とし、複数のケースを想定して試算を行った。
 ほかの提案案件とも比較をして検討した結果、ほかの案件よりも有利で、かつ固定金利の公募債と同水準、もしくは有利な調達となる可能性が高いというふうに判断して採用したものである。

石井秀武委員

 昨年の本会議で牧 部長から、仕組債発行のメリットとして、固定利率の公募債よりも金利負担の軽減が期待できると説明を受けた。仕組債には、当然金利負担増加のリスクがある。
 そこで、先ほどもあったが、この20年度に発行した仕組債の場合、どのような場合に金利負担が固定債を上回ることになるのか、例を挙げてご説明願う。

大谷資金公債室長

 検討日当日のフォワードレート――先ほど言った将来推計値で提供されたものであるが、これが示している満期日までの10年間で、6ヵ月の短期金利、これが最高で2.482%まで上昇するというふうに推計されていた。この場合であると、切りかえ基準である3.05%を下回っているので、フォワードレートが示す推計値どおりに金利が推移した場合には、10年間1.535%がずっと続くということであるので、固定の市場公募債より有利な条件ということになる。
 我々が試算した結果でいくと、仮にこの短期金利が3.3%程度まで上昇した場合の試算結果というのが、借入利率通算で1.8%程度になり、この場合で市場公募債並みの条件となる。金利上昇のスピードにもよるが、短期金利が3.3%を超えて上昇するような場合に、金利負担が市場公募債を上回る可能性がある。
 なお、参考に申し上げると、昨日時点の実際の6ヵ月金利が0.77%であり、8月時点で推計されていた金利を0.2%下回っている。今現在最も高い金利とされている40年国債の昨日のレートが1.98%ということであるので、現時点では判定指標である6ヵ月金利が3.3%を上回って推移するという懸念は少ないのではないかと考えている。

石井秀武委員

 今、説明をお聞きしたが、ちょっと私も余りよく理解ができないが、県債の発行については、年度ごとの県債発行方針や年間発行計画、発行実績をホームページに掲示するなど、情報開示に取り組まれていることは評価するが、ふだんインターネットを利用しない人にも情報が届くように、また、仕組債に関しては金利変動のリスクなどについて、専門知識がなくても理解できるように、より一層の情報開示に努めることを要望しておく。
 次に、地方債発行金利の見通しについてお伺いする。
 昨年10月28日の読売新聞によると、金融不安の影響で、引受手となる機関投資家が見つからず、発行金利も上昇しているため、公募地方債の発行を見送る自治体が相次いでいる。世界的な金融危機が深刻化した10月に、19の自治体が公募地方債の発行を予定していたが、東京都、大阪府、愛知県など、6自治体が発行を延期したとのことである。これは10月発行の北海道の5年債200億円の利率が、前月を0.42ポイントも上回る1.7%をつけたことがきっかけであったようであるが、この金利上昇により、北海道は前月分より約8,000万円多く利払いしなければならなくなったとのことである。
 地方債は、国債に次いで安全な資産と言われており、特に社債や株式市況が低迷している場面では投資家が積極的に引き受けていたが、今回は金融機関が投資を手控える動きが増加しており、発行金利の上昇は、金融危機で欧米の金融機関が資金調達難に陥り、手元の現金を手厚くしておく必要に迫られていることなどが背景にあると見られている。
 発行金利の上昇については、金融市場の混乱が原因で市場が落ちつけば、金利上昇は一時的な現象に終わるとの楽観的な分析もあるようだが、その一方で今回の金融市場の混乱で、投資家が運用先を見きわめる姿勢がより慎重になるとの指摘もある。実際に東京都など、財政力に余力のある自治体では、格付会社から格付を取得して資金調達コストを抑えようとする動きが出てきているようで、このような動きが拡大すると、自治体の財政状況が地方債の発行金利へ強く影響するようになり、本県を初め、財政状況の悪い自治体は、不利な条件で発行せざるを得ない。
 また、これも2月25日の読売新聞からの引用であるが、都道府県の来年度一般会計当初予算案を見たとき、地方法人2税が全都道府県において減少し、都道府県トータルでは減収が前年度税収額の39.3%にも上り、各都道府県とも、その穴埋めや景気対策などへの財源として地方債の増発を迫られる格好となり、来年度の地方債の発行総額は、前年度比23.7%増しの7兆2,139億円に上っている。
 本県においても、一般会計、特別会計を合わせて3,114億円の地方債発行を計上しているところであり、今後、資金調達をめぐり、自治体間の競争激化、格差拡大が想定されるが、このあたり、当局としてはどのように分析されているのか、お聞かせ願う。

大谷資金公債室長

 昨年9月のリーマンショック以降、金融市場が混乱したことから、一部自治体が10月の市場公募債の発行を見合わせたところである。その後、兵庫県が11月債を入札方式で発行したところ、市場関係者向けの配信記事で、入札再開の試金石としての役割を果たしたとか、起債日程や手法を変更することなく、いつもどおりのやり方で起債するという一貫した姿勢を示した点を評価したいと、こういった市場関係者の方の声を紹介していただき、高い評価をいただいたところである。
 しかしながら、この金融市場の混乱以降、地方債全体のスプレッド、スプレッドと申しますのは発行金利と国債の差であるが、対国債の上乗せ金利というふうに理解をいただきたい。このスプレッドが上昇拡大をした上に、地方公共団体に対する投資家の銘柄選別が厳しくなってきている。委員ご指摘のとおりで、発行団体間のスプレッド格差が大きく拡大をしている。
 私ども兵庫県債の発行利率であるが、11月以降は国債に上乗せが0.3%ないし0.34%ということで、ほかの一般的な公募債発行団体とのスプレッドの格差が、今年度の上半期の2倍程度と広がっており、0.1%ないし0.15%に拡大をしている。一方で大阪府とか、大阪市が、さらに私ども兵庫県よりも0.05%程度高く、北海道はさらにここからまだ0.05%高い発行条件になっている。これは人ごとではなく、都道府県とか政令市の間でのスプレッドの格差としては、少し広がり過ぎているのではないかというふうに懸念をしている。
 委員ご指摘のとおり、地方債の大量発行を控えており、現在の発行条件をより有利なものとするため、発行方式について競争性と透明性の高い入札方式と、投資家との対話が重視される少数幹事方式、この長所を生かしながら、市場関係者との対話を重視した起債運営を行ってまいる。
 さらに、都道府県では初めてである行革推進条例を制定したこととか、平成30年度までの財政フレーム、財政指標の見通しを明らかにした行財政構造改革推進方策を議決し、具体的に改革を進めていることも市場に向けて積極的にPRしていきたいと思っている。

石井秀武委員

よろしくお願いする。
 約3,000億円を借り入れするわけであるから、金利が0.1ポイント上昇しただけで年間3億円も利払いが増加するわけで、一方では今回、手数料の新設等で4,000万円もの負担を県民にお願いするわけであるから、地方債の発行については、引き続き慎重に運営していっていただきたいと思っているので、よろしくお願いする。
 次に、住宅再建共済制度についてお伺いする。
 まず、制度の課題についてである。住宅再建共済制度については、これまでの本会議や特別委員会での質疑において、加入率低迷の背景に、制度に対する認知度の低さや、特にマンションでの加入率が悪いことなどがあると説明されてきた。そして、これを重点課題として広報活動の強化やマンション共用部分再建共済制度の創設等、各般の取り組みを積極的に実施されてきた。ホームページに掲載されている財団の平成19年度の年次報告書を拝見したが、共済制度の普及・啓発に関する事業として、実に多くの取り組みがなされていることを改めて認識した次第である。
 しかしながら、結果としては加入率は7.2%と、目標の50%はおろか、当面の目標としている15%の半分にも届かないという、大変残念な状況にある。加入が進まない大きな要因として、阪神・淡路大震災や平成16年の台風被害から年月が経過し、県民の危機意識が薄れつつあることがあるのではないかとも考えられるが、それ以外にもいろいろと分析されていることと思う。
 そこで当局として、加入が進まない理由として、具体的にどのようなことがあると認識されているのか。

足達復興支援課長

 加入が進まない理由としては、やはり共済制度の認知度がまだまだ低いこと、共済制度は、震災の教訓である助け合いの大切さを制度として形にしたものであるという趣旨が理解されていないこと、都市部に多いマンションや借家の加入率が低いこと、当分大きな地震は起こらないと思っているなど、自然災害に備える意識が薄れてきているということなどが、主なものであると認識している。

石井秀武委員

 それでは、次に目標達成に向けた取り組みについてお聞きする。
 まず、財団の人材についてである。昨日、公社等経営評価委員会についての質問をしたが、その公社等経営評価委員会の第1回会議の資料を拝見すると、行財政改革の一環として、当該財団の職員について、現在の県派遣職員9名のうち3名を県OB職員に置きかえるとある。
 また、先日の本会議においては、我が会派の宮本議員の質問に対し、知事は、各県民局に加入促進員を配置すると答弁されたが、この加入促進員の配置は、1月補正で造成した緊急雇用就業機会創出基金を財源とするもので、事業内容としては地域の団体や企業、マンション等を訪問し、制度の普及・啓発と加入促進活動とされている。
 加入率を向上させるには、多くの人々に協力を仰ぎ、人海戦術によって取り組んでいくことも確かに有効ではあるが、先ほどの課題認識からすると、幅広い経験や高いノウハウを持った人材によって、より効果的な戦術を練り上げることも不可欠であるように思う。
 とりわけ、財団本部のスタッフについては、保険会社のOBなど、民間出身者を採用することも当然考えられたことと思うが、そこで新年度からの新たな取り組みに向けて、新たに配置しようとしている県OB職員及び加入促進員については、どのような人材を予定しているのか、お伺いする。

足達復興支援課長

 共済制度の加入率の目標を達成するためには、加入促進活動を一層推進する必要があり、とりわけ加入促進を推進する人材を確保することが重要であると考えている。
 まず、財団への県派遣職員にかわる3名の県OB職員については、対人折衝にたけ、粘り強く、共済制度に熱心に取り組む姿勢を持った人や各種団体などとの人的ネットワークを有する人を求めている。
 次に、フェニックス加入促進員については、国の緊急雇用就業機会創出基金事業を活用した事業であるので、実施要領上、事業の対象は失業者となっていることから、公募を行うこととして、現在、県のホームページやハローワークで求人を実施しているところである。
 採用に当たり、住宅再建共済制度に興味を持ち、熱心に取り組む姿勢と意欲を有し、類似事業経験者、地域とのかかわりやネットワークのある人を、面接により選考したいと考えているところである。

石井秀武委員

 特に加入促進員については、先ほどもあったが、失業者を採用し雇用するということになるわけであるが、雇用される側にとっては、これは次の就職先が決まるまでのつなぎであり、就職先が決まった段階で促進員を辞職することになる。また、その後、後任を採用するとしても、採用即戦力というわけにはいかない、そう思うので、加入促進活動も、そのようなことを見込んで計画しなければならないと思う。
 私が言うまでもないが、どうかよろしくお願いをする。
 次に、評価システムについてお伺いする。
 予算についてであるが、平成19年度の決算資料等を見ると、平成19年度の1年間で加入戸数は1万3,613戸増加しているが、事業費はというと、県から財団への事業委託料が9,437万円であり、この事業費がすべて加入促進事業に充当されたわけではないが、かなり乱暴であるが、単純に割り算をすると、1戸当たり新規加入に対して約7,000円かけたということになる。また、21年度の事業について記者発表資料を見ると、予算が6,679万6,000円であり、加入促進員の配置を行うとされているが、先ほどの公社等経営評価委員会の資料を見ると、県からの委託費とは別に、基金充当として3,400万円が計上されているので、事業予算としては合計1億100万円ということになると思う。
 この1億100万円が高いか安いかということについては、私個人の主観で言うことはできないが、かといって、幾らかけてもよいというものではない。そこで、制度自体や目標設定も含めて、費用対効果を客観的に評価する仕組みを整え、業務のサイクルの中に組み込んでいく必要があるのではないかと思う。
 今回、公社等経営評価委員会の調査対象として、この財団法人兵庫県住宅再建共済基金も挙げられているところであるが、当該財団の主管部局として、評価システムの整備についてどのように考えているのか、ご所見をお伺いする。

足達復興支援課長

 財団に学識者、経済団体、会計士などで構成し、財団とは独立した機関として、寄附行為の変更や財団運営に関する重要な事項などを審議し、助言するために、兵庫県住宅再建共済制度運営協議会を設置している。その運営協議会は、費用対効果を直接的に評価するものではないが、当該協議会がその役割を果たすものと考えているところである。
 例えば、平成18年9月から実施している複数年一括支払い割引制度の導入、平成19年10月から実施したマンション管理組合加入制度の導入は、当該運営協議会からの提案によるものである。
 今後とも、県民に信頼される安心の制度として加入促進に取り組むことはもとより、引き続き運営協議会の意見を聞きながら、費用対効果にも留意しながら取り組む所存である。

石井秀武委員

 この制度は、多くの県民の掛金を原資に被災者の住宅再建を支援しようという相互扶助の仕組みである。年額5,000円という掛金も、被害想定や加入率をもとに設定されたものと思うが、加入率が予定していた率に届かなければ、いざ災害が発生したときに、この制度が破綻することも大いに考えられる。そのようなことがないよう、実効ある取り組みを要望しておく。
 それでは、今後の展開についてお伺いする。
 平成19年6月議会において、知事は大半の都道府県が共済制度の全国展開を求めており、全国知事会の勉強会を通じて、都道府県の合意形成を働きかけている。知事会と連携し、制度創設に向け検討を進め、国に働きかけていきたいと、共済制度についての質問に対し答弁されているが、現在のところ、都道府県の合意形成、また国への働きかけについては、どのような状況にあるのか。
 また、現在、関西広域連合設立に向けた検討が進められており、広域連合の事務の一つとして、広域防災が挙げられ、具体的な事業として、各府県の相互応援実施要綱の作成や合同防災訓練の実施が計画されている。
 共済制度を全国展開するのであれば、その足がかりとして、まずは関西で、関西広域連合で取り組むといったことも考えられると思うが、関西広域連合についての各府県間による協議の場において、この共済制度の実施について検討されたことがあるのか、また予定があるのか、あわせてお尋ねする。

小畠企画県民部参事

 住宅再建共済制度の全国展開については、本県の国の予算編成に対する提案はもとより、本県の積極的な働きかけにより、全国知事会及び近畿ブロック知事会の国に対する提案にも、それぞれ盛り込まれている。
 また、昨年9月に全国知事会の災害対策特別委員会専門部会に設置された被災者生活再建支援基金に関する検討会、この検討テーマの一つに当共済制度が位置づけられている。その中で、本県から、この共済制度の有用性や、そして基本的な枠組みなどについて説明を行ったところであるが、今後、さらに議論を重ね、やはり知事会を通じて、国に全国制度創設に向けた検討を働きかけていく所存である。
 現在、本県としては、他府県、あるいは関西地域との共同実施ということではなく、全国制度化ということを基本に議論を進めていきたいと、このように考えている。したがって、関西広域連合についての協議の場においては、共済制度の実施について、これまで議論したことはない。また、現在のところ、その予定には上がってない状況である。

石井秀武委員

 今ご答弁いただいたわけであるが、住宅再建共済制度は、本来的には国がオールジャパンで実施すべき制度であると思うが、当面はこの事業制度を維持するとした場合、例えば、私が先ほど言ったように、関西広域連合の関係府県が共同で取り組むことによって、リスク分散という意味からも制度自身が安定してくるのではないかと思うので、また何かの機会にぜひ検討していただければと思っている。
 以上で、私の質問を終わる。