平成25年度予算特別委員会(企画県民②)

石井秀武委員

1 兵庫県立大学における統合の成果について

兵庫県立大学は、本年4月に公立大学法人への移行を控え、議会としては最後の機会になると思いますので、卒業生の一人として、率直に感じていることを踏まえながら、質問させていただきます。

現在の兵庫県立大学は、言うまでもなく、平成16年に神戸商科大学、姫路工業大学、兵庫県立看護大学の3大学の統合により設立され、公立大学としては全国的にも有数の規模を誇る大学であります。

その間、応用情報科学、会計、経営、緑環境景観マネジメントなどの研究科やさらにはシミュレーション学研究科など、様々な研究科が設立され、研究面においては特色化が際立ってきているように感じています。

その一方で、来年度から設置が予定されている、生命理学研究科ピコバイオロジー専攻などに代表されるように、理工系の色合いが強くなってきており、商大卒業者の私には、一抹の寂しさを感じる面もあります。

統合により、履修選択肢の多様化や事務局体制の一元化による効率化など、一定の効果がある一方で、6学部12研究科の7つのキャンパスが、広範囲にわたって点在しているため、現実問題として兵庫県立大学としての統一性を図っていくないしは打ち出していくことについては、難しい面があるように思います。

各学部・研究科がそれぞれの個性化・特色化を図ることにより、兵庫県立大学全体としての特色を創り出していくことには、異を唱えるものではありませんが、公立大学法人への移行にあたっては、もう一度原点に帰るべき面もあるではないかと思っています。

平たく言えば、いろんな分野に手を出すのではなく、本来の商経学部や工学部、看護学部といった、旧3大学が中心に据えていた分野に特化していくべきではないかということです。

卒業後の進路を考えたとき、大部分の学生は「就職」するわけで、大学は、社会で成長していけるよう力をつけていく、いわば基礎力を養成する場であると私は考えています。

そのような意味でも、県内外を問わず活躍する卒業生の存在は、県立大学の大きな強みではないかと思っています。その一人である私でさえ、最近は別の大学のように感じてしまう現状を今一度、踏まえていただければと思う次第であります。

そこで、来年度から公立大学法人へ移行することとなっていますが、経営面や運営面といった大学側からの効率化だけではなく、学生の立場に立ち、学生が県立大学で学びたいと魅力を感じてもらえるよう、あれも、これもと何をしているのかわからない大学ではなく、原点に帰り、大学の柱となる部分についてしっかりと見据えいくべきと考えるが、これまでの県立大学の統合の成果についてどのように認識されているのか、当局のご所見をお伺いします。

企画県民部長(荒木一聡)

 県立大学が統合して10年がたとうとしている。ご紹介いただいたような理科系、工学系の学科改編もあるが、商経学部の方の関係においても、英語で履修できる国際キャリアコースの設置など、少し数が少ないかも分からないが、その取り組みにはいろんなさまざまな取り組みを図ってきた。
 現在、大学評価委員会において、第3期中期計画、これは平成22年度から24年度のものであるが、これの評価、さらには統合の成果について検証させていただいている。
 定量的に見てみると、大学への志願倍率や偏差値、就職率の推移や外部資金の獲得状況の指標は、統合前とほぼ同水準である。その同水準を評価するのか、いや、まだ努力が足らないか、これはさまざまな点があろうかと思う。
 一方、統合したことにより総合性の確保ができている、地域性が強まったという意見もあるが、今、石井委員おっしゃったように、卒業生の皆さんからは、旧3大学のブランドイメージが薄れている、地域との関係が若干希薄じゃないかといったようなご意見がある。さらに改善が求められる取り組みとして、今もお話があったが、まずは学生のニーズが十分把握できているのか、さらに卒業生の進路の動向が把握できているのかといった課題。さらには、もう少しやはり基礎学力を高める必要があるんじゃないか。これは教育面での指摘である。
 研究面においては、研究資源の重点的配分を行うような全庁的な体制の整備がまだできていないんじゃないか。それから、研究費の効果的な配分を行う仕組みづくりが、まだ課題があるのではないか。
 さらに、社会貢献の分野においては、産学官連携の全県的展開が必要だ。西播磨、播磨には強いんだけれども、やはりもう少し阪神間だとか神戸といったようなところも展開が必要ではないかといったようなご意見をいただいている。
 統合後10年がたち、基礎固めができたとすれば、委員言われるように、これからは発展をしていかなければならない。旧3大学の伝統と強みを生かして、研究面、教育面、社会貢献のいずれの分野においても、個性・特色化する取り組みが必要である。
 そうした中で、伝統と結びついたキャンパスの名称、学部・学科の再編について検討を進めていく。
 学生、研究者、県民にとって、学生にとっては入りたい大学、それから研究者も入りたい大学、それから県民にとっては訪ねてみたい、そこでの研究シーズを活用したい、人的シーズを活用したいということが求められているものと思う。
 独立行政法人化の目的もそこにあるので、石井委員を初め、島山委員を初め、先輩の皆様に応えられるような大学について、私ども事務局としても支援していきたいというふうに考えているので、引き続きのご指導をよろしくお願い申し上げる。

石井秀武委員

2 県立大学附属中学校について
(1)開学以来の成果と課題について

兵庫県立大学附属中学は、中学校段階からの計画的・継続的な教育指導を通して、生徒の個性の伸長を図り、優れた才能を見いだし、これまで以上に今日の社会に求められる人材を育成することが必要であるとの認識の下で、平成19年4月に中高一貫校として開設され、毎年40名の選抜された生徒が入学しています。

県立大附属中学は基本理念として、①附属高校との中高一貫教育、②兵庫県立大学との連携や播磨科学公園都市の教育研究環境の活用、③科学技術における学術研究の後継者の育成、④国際感覚豊かな創造性溢れる人材の育成の4点が挙げられています。

特に、公立大学法人移行後は、公立大学法人が附属中学・高等学校の設置者になることはできず、引き続き、県のままとなることから、特に県立大との連携については、学校名のとおり「県立大学附属」としてこれまでと同様に緊密な連携を図りながら学校運営を行っていただく必要があることはいうまでもありません。

そこで、県立大学附属中学校は、公立の中高一貫校として開設以降、丸6年が経過し、この春初めての卒業生38名を送り出すこととなっていますが、学校の基本理念に照らし合わせて、これまでの6年間の学校運営から見えてきた成果や課題について、どのように評価しているのか、お伺いいたします。

大学室長(永良新)

 県立大学附属中学校であるが、平成19年4月の開校以来6年が経過し、開校後の第1期生が中高一貫教育を修了することから、附属中高一貫教育のあり方検討会を設置し、これまでの一貫教育の成果や課題を検証することとした。
 委員会では、少人数授業によるきめ細やかな指導により、数学や英語能力の向上が図られている、また、大学と連携したプロジェクト学習や、大学教員による特別講演により向上心や目的意識の醸成が図られている等、自然科学や英語に対する生徒の学習意欲の高さが評価されている。
 一方で、1学年1クラスであることから、クラス替えがなく、人間関係が固定しやすい。生徒数が少ないため、生徒の興味、関心に応じた部活動を展開することができない等の課題も指摘されている。
 こうした成果や課題を踏まえ、平成26年度から複数学級制を導入することとした。平成25年4月に、県立大学が公立大学法人に移行することにより、現行法上は大学が附属学校を直接管理運営できないこととなるが、県立大学を所管する知事部局が附属学校を所管することにより、引き続き大学との緊密な連携のもとに、科学技術における学術研究の後継者育成や国際感覚豊かな創造性あふれる人材の育成に努めていきたいと考えている。

石井秀武委員

(2)複数学級制の導入について

県立大学附属中学では、先ほどの質問でも触れましたように、これまで1学級40名の募集となっていましたが、先般、平成26年4月より、2学級70名の募集とし、複数学級制の導入が発表されました。

これまでの1学年1クラス編制では、きめ細やかな指導が実施できる反面、人間関係の固定化や学校行事や部活動をはじめ、多くの面で不都合もあったとは思いますが、複数学級制の導入により、学校がこれまで以上に活気づいてくれればと期待しているところであります。

私立の中学・高等学校では、少子化により学校間の競争が激しくなる中、早い段階から生徒を囲い込み、6年間の一貫教育で進学実績を伸ばしたいという思惑が見え隠れする中、最近では、高校からの募集を廃止若しくは縮小し、中学の定員をその分増やす私学が大都市圏を中心に相次いでいます。

県内では、西宮市の甲陽学院が平成21年春からの高校の生徒募集を停止し、完全中高一貫校となりました。また、須磨学園も平成23年度より中学の定員を40名増やし、その分、高校の定員を減らす予定となっています。

さらに近隣では、高砂にある私の母校、白陵中学・高等学校では、昨年度より中学の募集を35名増やし3クラス編制から5クラス編制とし、高校は若干名の募集に留め、中高一貫教育の実施を強化しています。

県立大学附属中学を、県立の一貫校としてより体制を強化・充実していくことは播磨地域の児童・生徒を中心にとって魅力あることですが、先ほどの基本理念を達成していくには生徒の質の確保も重要な要素の一つであると考えます。

そこで、平成26年度の複数学級制の導入に伴い、これまでどおり、優秀な生徒が確保されるよう、志願者数の増加に向けた取組や選抜方法の工夫など、どのように取り組んでいこうとされているのか、ご所見をお伺いします。

管理局長(片山安孝)

 県立大学附属中学校は、科学技術における学術研究の後継者や国際感覚豊かな創造性あふれる人材を育成するため、県立の中高一貫校として特色ある教育に取り組んできた。私も委員と同じ、高砂市にある中高一貫校の出身であり、そのメリットについては一定理解しているが、県立大学の付属中学はさらに進み、県立大学との連携教育も行ってきているところである。
 開校以来、毎年5倍前後の志願者倍率になるなど、播磨地域を中心に多くの志願者を集めている。
 入学者の選考に当たっては、こうした科学技術の後継者や国際社会に貢献する人材として育成するにふさわしい生徒を確保するため、小学校からの調査書だけでなく、面接、作文、適性検査により、人物重視の姿勢で総合的に選考することとしているが、このことについては引き続き研究していきたいと思っている。
 また、複数学級制の導入後も、引き続き優秀な生徒を確保できるよう、これまで取り組んできた中高一貫教育、さらに大学教員による特別講演や大学施設を利用したプロジェクト学習等の県立大学との連携教育の成果を広くPRし、附属中学校設置の目的が達成できるように努めていく所存である。

石井秀武委員

 優秀な生徒の確保はもとより、生徒が6年間、学校で学ぶ過程においては、親の経済状況にも大きく左右されることもあるので、中学の学費が無償であるとはいえ、特に通学費がかさむということなので、生徒がしっかりと卒業まで学べる環境を県としてもフォローしていただきたいと思っているので、その辺ご要望を申し上げ質問を終わる。どうかよろしくお願いする。