平成29年度予算特別委員会(病院局)

石井秀武委員

1 神戸陽子線センター(仮称)について

ポートアイランドにおいて整備が進められてきた新たな粒子線治療施設、「神戸陽子線センター(仮称)」の開設が今年12月と、いよいよ近づいてきている。平成27年10月に着工した建設工事は着実に進んでおり、当初計画どおり、今年8月の竣工が見込まれている。

県内では、地方公共団体初の粒子線治療施設である「県立粒子線医療センター」が、平成13年にたつの市に開設され、これまでに7,000例以上の治療を行っている。今回開設される神戸陽子線センター(仮称)は、その附属施設として、豊富なノウハウを活かし、小児から成人まで、あらゆる年代の患者に治療を提供する予定とお聞きしている。

粒子線治療は、がん細胞にピンポイントで照射するものであり、周辺の正常な細胞へのダメージが少ないことから、身体への負担が少ない治療法と言われる。

特に、発育・発達障害や二次がん等、生活を脅かす副作用リスクが高い小児がん患者にとっては、極めて有効な治療法であり、昨年4月からは「小児腫瘍に対する陽子線治療(粒子線治療の一種)」が保険適用となった。また、小児腫瘍への治療を特徴とする本格的な施設としては西日本初ということもあり、神戸陽子線センターへの期待はかなり高いと思われる。

そこで、隣接する県立こども病院との連携も含め、がんに苦しむ幼い患者及びその家族の期待にどう応えていくのか、当局の所見を伺う。

病院局長(八木聰)

 神戸陽子線センター(仮称)においては、小児から成人まで、あらゆる年代の患者に治療を行うこととしているが、その最大の特徴は、県立こども病院と一体となった小児がん患者への陽子線治療の提供である。
 そもそもこども病院は、平成25年2月に、全国に15施設しかない小児がん拠点病院の一つに指定されており、経験豊かな小児腫瘍内科医や小児麻酔医などによる小児がん治療に関し、全国トップクラスの実績を有している。
 神戸陽子線センターは、この豊富な実績を持つこども病院と隣接するというメリットを生かし、小児腫瘍内科医など専門人材との緊密な連携による治療はもとより、免疫力が低下した小児がん患者の感染症を防止するため、両施設を渡り廊下で直結し、安全な動線を確保するなど施設面での配慮も行い、幼い患者に対する安全かつ適切な治療の提供を行うこととしている。
 また現在、県立粒子線医療センターにおいて、こども病院の診療スタッフによる連携・協力のもとで小児がん患者への陽子線治療の先行実施に取り組んでいる。これまでに11件の治療を行っており、神戸陽子線センターでの今後の治療のベースとなる粒子線医療センターとこども病院の連携強化や、小児がん患者に対する粒子線治療のノウハウの蓄積等を図っているところである。
 今後も、十分に連携を図りながら、開設に向けた準備を進め、小児がん患者やその家族の期待に応えられる治療を提供していきたい。

石井秀武委員

2 県立こども病院の跡地利用について

神戸陽子線センターとともに小児がん患者の治療を行う県立こども病院は、去年5月にポートアイランドへ移転しているが、今回は、須磨区のこども病院跡地について質問したい。

旧こども病院の跡地利用については、平成27年4月に、医療の提供等を行う事業者の公募を実施したが、同年9月には、「条件を満たす提案が得られなかった。」「今後、跡地の周知や、募集条件の見直し等を検討した上で、再度公募を実施する予定」と公表されており、その再公募は、現時点でまだ行われていない。

医療の提供等、前回公募時の要件は、地域の要望を踏まえ決定されたものと認識しており、今後行われる再公募の際の要件も、地域の意向を十分に踏まえたものとしなければならないが、一方で、医療関係事業者と限定すると、圏域内のベッド数(許可病床数)の制約があり、また、診療報酬改定等、医療独自の、経営見通しが立てづらいという要素があることから、事業者を跡地に呼び込むことのハードルが高くなると思われる。

新行革プランでは、「移転跡地については、資源の有効活用を図るため、基本的には売却する。」と明記されており、跡地管理の問題上、出来る限り早期に売却を図る必要があると考える。

そこで、「医療の提供」等前回の公募要件に反映される地域の意見・要望と、早期の跡地売却を両立させていくため、今後どのような再公募を行おうとしているのか、当局の所見を伺う。

病院局企画課長(小田博則)

 県立こども病院の跡地利用についてであるが、昨年度行った公募の後、継続的に医療関係者等へのPR、また進出の働きかけを行ってきているが、何分、敷地が約3万1,000平米という広大な状況であり、1事業者が単独で使いこなすのは非常に困難等の理由から、現時点で具体的な計画を示す事業者は現れていない状況にある。
 委員ご指摘のとおり、医療機能を要件にすると誘致のハードルが高くなるという面もあるが、現在も医療は地域の皆様方が非常に強く求めている機能であることから、今後の再公募においても、引き続き必須とする方向で考えている。
 医療以外の要件については、まずは、地域の意見、要望が集約されている前回の公募要件などをベースにするとともに、新たな地域のニーズや事業者の利用しやすい条件等も考慮していくこととしている。
 具体的には、医療機能や前回公募時には望ましいとしていた介護・福祉以外の機能、例えば商業施設等についても、跡地の用途地域の制限に反しない範囲で積極的に認めていくなど、柔軟な対応を行うことで、事業者からの提案を促し、早期の売却につなげていきたいと考えている。

石井秀武委員

3 新県立病院改革プランについて
(1)プラン策定にあたっての考え方とビジョンについて

県立病院が果たすべき役割を継続的に担うことができるよう、この3月に新県立病院改革プランが策定される。

今回のプランの対象年度は、平成29年度から32年度となるが、この期間中には、全国共通の事象である高齢化のさらなる進行、現在平成31年度10月に予定されている消費税増税、平成30年度の保健医療計画の改定に加え、本県独自の要素として、先ほど質問した神戸陽子線センター(仮称)の開設、柏原病院の統合再編整備が控えている。病院施設の新設、再整備となると、収支面で、尼崎総合医療センターの開設時ほどには影響は出ないかもしれないが、人件費や移転等の経費の増に加え、患者調整による減収等が予想される。

そこで、このような条件を見据え、現在どのような考え方で、プランを策定されているのか伺いたい。あわせて、このプランの先にどのような県立病院としてのビジョンをお持ちなのか、伺う。

病院事業管理者(西村隆一郎)

 今後の県立病院のあり方について、現在、少子高齢化の進展による医療需要の大幅な変動や昨年10月に策定された兵庫県地域医療構想や国の医療制度改革に的確に対応し、安定的に政策医療を提供できるよう県立病院のかじ取りを行うことが求められている。
 そのような中、国が定めた公立病院改革ガイドラインを参考としながら、広域自治体立病院としての役割を踏まえた県立病院事業全体の基本的方向を定めた上で、本年度、地域医療構想の中での県立病院の役割や目指すべき方向性、それを実施するための具体的取組、長期の収支計画などについて協議を行い、新県立病院改革プラン案を取りまとめたところである。
 今後、当該プランを県立病院運営の中長期的な羅針盤として、医療の高度化と安心できる医療提供体制の構築を図っていきたい。

石井秀武委員

3 新県立病院改革プランについて
(1)プラン策定にあたっての考え方とビジョンについて

県立病院が果たすべき役割を継続的に担うことができるよう、この3月に新県立病院改革プランが策定される。

今回のプランの対象年度は、平成29年度から32年度となるが、この期間中には、全国共通の事象である高齢化のさらなる進行、現在平成31年度10月に予定されている消費税増税、平成30年度の保健医療計画の改定に加え、本県独自の要素として、先ほど質問した神戸陽子線センター(仮称)の開設、柏原病院の統合再編整備が控えている。病院施設の新設、再整備となると、収支面で、尼崎総合医療センターの開設時ほどには影響は出ないかもしれないが、人件費や移転等の経費の増に加え、患者調整による減収等が予想される。

そこで、このような条件を見据え、現在どのような考え方で、プランを策定されているのか伺いたい。あわせて、このプランの先にどのような県立病院としてのビジョンをお持ちなのか、伺う。

病院局管理課長(秋山徹志)

 県立病院の医師確保の取組として、これまでから系列大学への働きかけの強化に加え、指導医資格の取得支援や麻酔科医総合研修システム、救急科研修プログラムなどの本県独自の取組を行ってきたところである。
 また、初任給調整手当の支給額や地域手当の支給率の引き上げ、救急外来業務等の特殊勤務手当の創設などによる処遇改善のほか、医療秘書の配置拡充や院内保育所の充実を図ることにより、魅力ある環境整備を進めてきたところである。
 これらのさまざまな取組を行うことにより、正規医師については、平成20年度の535名から平成29年度には758名に、若手の専攻医については、150名から299名になる見込みとなるなど、着実に増加傾向にある。しかしながら、引き続き、地域偏在や診療科偏在への対応や平成30年度から開始される新専門医制度への対応が必要であると認識している。
 これらへの対応として、今年度策定を進めている新県立病院改革プランにおいては、継続した専攻医の確保に向け、大学等との連携による若手医師に魅力ある研修フィールドの提供、はりま姫路総合医療センター(仮称)を中心とした中・西播磨地域における医師確保のための修学資金制度の拡充など、新たな取組を進めることとしている。
 今後も、県民に良質な医療を安定的に提供できるよう、引き続き、さまざまな取組を着実に進めることにより、県立病院の体制整備に努めていきたい。

石井秀武委員

 医師確保については、さまざまな対策を講じていただきながら、病院関係者、またその利用者にとってハード・ソフト、両面で魅力ある環境整備に努めていただき、優秀な医師確保をしていただくようお願いする。
 そして、県民から信頼される、安心できる県立病院づくりにしっかりと努めていただき、病院局の皆様方がその先頭になってまとめていただくことを期待申し上げ質問を終わる。
 どうもありがとうございました。