第297回定例会(12月)代表質問2007年12月

おはようございます。民主党・県民連合の石井秀武でございます。

 さて、アメリカ民主党のバラク・オバマ氏が、第44代のアメリカ大統領に当選してから1ヵ月がたちました。

来年1月20日の新政権発足に向け、閣僚等の人選が進められ、また、経済対策も着々と打ち出されてきております。

一方、我が国においては、衆議院選挙が先送りとなり、新たな体制のもとでの本日の代表質問とはなりませんでしたが、この間も景気の悪化は着実に進行しております。

麻生総理は、追加の経済対策を打ち出しましたが、第2次補正予算案の今国会への提出は見送られることとなり、結局、実行される見通しのないまま年末を迎えることになりました。

実効ある経済対策の一日も早い実施を強く望むところであります。

 このような大変厳しい、また混迷した状況でありますが、井戸知事にあっては、県政運営において、県民の生活に対する不安が払拭される政策を実施されるよう期待いたしまして、民主党・県民連合議員団を代表して、以下9項目10点について質問をいたします。

1.県財政について

 最初の質問は、県財政についてであります。

 我が国の経済は、アメリカ発の金融危機などの影響により、危機的な状況に陥っております。

輸出関連を中心に企業業績が急激に悪化しております。そのような中、財務省は、昨年12月時点の経済見通しや企業業績をもとに見積もっていた本年度税収の見通しについて、現時点で6兆円超の減少になると見ております。

ことしに入り、原材料価格高騰の影響に加え、金融危機に端を発するアメリカ経済の減速などで企業業績が急速に悪化し、さらには円高が追い打ちをかけるなど、これらにより法人税収が大幅な減収となると見込まれることが主な要因となっております。

また、株安で企業が保有する株式の含み損も拡大しているとのことであり、法人税収はさらに厳しい状況が予想されます。

 なお、本年度10月末の国税収入の状況を見ると、法人税収の累計は前年同期の64.8%にとどまり、また、消費税収も、物価高などで個人消費が伸び悩み、前年同期比で若干の伸びは見られるものの、当初予算で想定した伸びを下回っております。

 先日の新聞報道では、大阪府でも、同じく、金融危機や景気低迷に伴う企業収益の悪化による影響などで、来年度の税収見込みが、本年度の税収より最大で1,000億円程度落ち込む見通しであるとありましたが、その記事を目にした兵庫県民の中には、本県は大丈夫なのだろうかと心配している方も多くいらっしゃると思います。

 そこで、本県財政においては、税収減少等による歳入不足について、どのような見通しをしておられるのでしょうか。昨年度は620億円という多額の歳入欠陥が発生し、事業の繰り延べ等緊急対策が実施されました。さきの決算特別委員会では、歳入の見積もりについても、その精度を高めるよう指摘したところでございますが、今年度の歳入についてはどのような状況となっているのか、お伺いいたします。

 また、現下の経済情勢を考えますと、一定の経済成長を見込むことは当面困難であり、景気が回復基調にあった平成20年1月に内閣府が試算した経済成長率をもとにして組み立てた新行革プランの財政フレームについては、相応の見直しを講ずる必要があるのではないでしょうか。このことは、新年度予算の編成作業にも大きくかかわってくる問題だと考えますが、財政フレームの見直しも含め、どのように認識し、対処しようとしているのか、あわせて当局のご所見をお伺いいたします。

 

2.ひょうご経済・雇用活性化プログラムの推進について

 次に、ひょうご経済・雇用活性化プログラムの推進について質問をいたします。

 本県では、震災以降、地域経済の低迷や厳しい雇用情勢を克服するため、緊急経済対策や中小企業へのセーフティーネット対策、5万人のしごと・雇用創出等に取り組み、さらに17年度からのひょうご経済・雇用再生加速プログラムでは、本県の強みである物づくり産業を起点に、地域経済の活性化に取り組んでまいりました。

 その間、本県経済は着実に拡大を続けて震災前の水準にまで回復し、有効求人倍率も0.9倍前後の水準を維持してきました。また、企業集積の促進、中小企業の円滑な資金調達への支援等も成果を上げております。そして、本年2月に、景気が拡大基調にあった時期をとらえ、平成22年度までに県内総生産の全国水準とのギャップの半分程度を回復することを目標とし、ひょうご経済・雇用活性化プログラムを策定いたしました。これにより、経営革新に挑戦する中小企業の振興や次世代産業の創出、雇用ニーズに対応した職業能力開発等による人材育成に取り組むこととしております。特に、Spring-8やX線自由電子レーザー、次世代スーパーコンピューターの整備など、整備されつつある科学技術基盤を生かした先端技術の誘致や振興に努めるとしました。

 しかし、その後、金融不安等により、世界的に景気が後退し、県下の経済・雇用状況に目を向けると、日銀神戸支店が発表した9月の短観では、企業の景況感を示す業況判断指数が県内の全産業でマイナスとなり、6月の前回調査から4ポイント低下しているという結果が出ております。雇用面では、10月の有効求人倍率が0.74と前月を下回っております。

 また、業種別で見ると、これまで好調であった製造業も大きなダメージを受けており、例えば、パナソニックは、来年1月下旬にかけて液晶テレビ用パネルの生産台数を当初計画比で約1割減らす方針を明らかにしました。世界的な景気減速を受け、需要動向に不透明感が出ているためとしております。姫路に建設中の新工場については、平成22年1月の稼働時期を変更するつもりはないとのことでありますが、初期の出荷量やフル稼働時期は市場動向を見ながら検討する方針だと言います。自動車産業についても各メーカーとも減産を発表しております。県内にも関連産業が多くあることから、その影響が懸念されるところであります。

 このように、経済・雇用情勢が悪化する中で、ひょうご経済・雇用活性化プログラムが想定する姿と現実との乖離が相当大きくなってきており、とりわけ、経済政策として、例えば、ツーリズムの振興等、外需依存型から内需主導型経済への誘導や、また雇用政策として、中小企業における人材確保策など重点を明記し、派遣労働者やアルバイトなど非正規雇用の絞り込みが進んでいる状況を踏まえた上で、ひょうご経済・雇用の活性化に向けて実効あるプログラムとするためにも、どのようにセーフティーネットを強化するのかなど、見直しを行う必要があるのではないかと考えますが、当局のご所見をお伺いいたします。

3.社会保障について

 質問の第3は、社会保障についてであります。

 アメリカに端を発した金融危機は、世界同時不況という異例の事態を招きました。国内にも金融危機の影響は及び、外需に支えられてきた我が国の経済は、構造転換を迫られております。我が国の20年来の課題とされる過度な外需依存型から内需主導型への経済構造の転換こそが、今こそ必要であります。

 しかしながら、国民生活を見ると、海外の混乱の影響が、国内の食料品など生活必需品の値上げにつながっており、その結果、低所得層の生活を圧迫し、中小企業や農林水産業の経営を悪化させ、格差拡大が一層進み、生活への不安が高まっております。加えて、賃金が伸びない中で、所得税の定率減税の全廃、毎年の年金保険料の引き上げ、さらに新たな高齢者医療の自己負担増など、国民の負担はますます高まってきております。

 政府は、定額給付金の全世帯支給や住宅ローン減税の延長などを柱とする追加の景気対策を打ち出しましたが、現実の法案は年明けの通常国会提出という様相になってきております。国民生活の安定のためには、熟慮した追加経済対策への取り組みが急がれます。特に、現在取りざたされている定額給付金については、個人消費回復への効果について、識者のみならず、多くの国民が疑問を呈しているところであります。将来が不安であれば消費ではなく貯蓄に回るだけであり、消費回復のための必要な政策は、何よりも社会保障の充実であり、将来にわたる生活の安心感を与えることにあると考えます。

 そのためにも、医療、福祉、教育、治安などの社会的なセーフティーネットを強化し、県民の安心感を高めることによって、貯蓄から消費に回す余力とインセンティブを向上させ、可処分所得の実質的な増大を図ることが急務であり、徹底した選択と集中の中で大胆な政策を実施し、資源配分の転換を図る必要があると考えます。

 そこで、来年度の予算編成に当たっては、行財政構造改革のさなかではありますが、県民の最大の懸案事項でもある経済対策の観点からも、とりわけ生命に直結する医療、福祉等にかかわる個人負担の軽減やサービス提供体制の整備など、県民の生活不安を解消するための施策を明確に打ち出していただきたいと期待しますが、医療、福祉等の社会保障の充実強化対策について、知事のご所見をお伺いいたします。

4.地方分権の推進について

 質問の第4は、地方分権の推進についてであります。

 活力ある地方を創出するためには、地方分権改革を推進し、地方がみずから考え、実行できる体制を整備することが重要であります。政府は、地方分権改革推進法に定める基本方針に則しつつ、本年5月に出された地方分権改革推進委員会の第1次勧告を最大限に尊重し、地方分権改革の推進に取り組んでいくこととしており、昨日も、国の出先機関の見直し案などをまとめた第2次勧告が麻生総理に提出されたところであります。

 地方分権の考え方については、政府としては道州制を前提として検討を進めていますが、井戸知事が提案されるように、地方分権の突破口として広域連合の設立をめざすという考え方や、また、地方分権国家の母体を、道州や都道府県ではなく、今よりも規模を拡大した基礎自治体とするという考え方など、さまざまな考え方が展開されていますが、いずれにいたしましても、新しい国の形を構築するため、本格的な議論を深めていかなければなりません。

 そこで、地方分権の推進について2点質問をいたします。

(1)

 まず第1点は、市町への権限移譲についてであります。

 地方分権改革推進委員会の第1次勧告では、都道府県から市町村への具体的な権限移譲として、359件が盛り込まれましたが、そもそも都道府県から市町村への権限移譲は、平成12年施行の地方分権一括法で、都道府県の権限に属する事務の一部を条例に基づいて市町村が処理できる事務処理特例制度が地方自治法に創設された制度であります。地方分権を推進する画期的な制度として全都道府県一斉に取り組みが始まりましたが、都道府県によって取り組みに温度差があるようです。

 各都道府県がどれぐらいの仕事を市町村に移しているのかを調べた内閣府の調査によると、関連する法律の数で一番多かったのは静岡県の86、次いで広島県の77であります。兵庫県は43と全国平均並みであります。分権委員会は、平成の合併で市町村の再編が進んだところほど権限移譲が多い傾向は明らかであるが、さらに都道府県が分権に積極的であるかどうかでも大きく違ってくると分析しているようですが、確かに、広島県では積極的に市町に権限移譲を受けるように働きかけております。また、移譲に伴って必要になる専門知識を持つ人材育成のために、市町職員対象の研修を実施したり、県職員の派遣制度を設けたりするなど、移譲を受けやすい環境整備に取り組んでいるとのことであります。

 広域的な実施が必要であるなど特別な理由のあるもの以外の事務事業については、積極的に市町への権限移譲を進めるべきではないかと考えますし、また、新行革プランにも示されているとおり、市町への権限移譲の進展によっては、県民局や地方機関組織について見直しを検討する必要もあります。

 そこで、本県の43という市町への権限移譲の取り組みをどのように評価されているのでしょうか。また、第1次勧告には、「市町村合併の進展等により、行政体制の整備が進んでいることを踏まえ、市に優先的に権限移譲を進める」などといった考えも記述されており、既に勧告に盛り込まれた事務を中心に権限移譲を円滑に進めるための具体的な検討を始めた府県もあるようですが、本県においては、どのように対応していこうとされるのか、当局のご所見をお伺いいたします。

(2)

 2点目は、現在、関西広域機構において検討をされている関西広域連合についてであります。

 関西広域連合については、地方分権改革の突破口を開くこと、関西における広域行政を展開すること、国と地方の二重行政を解消することの3点を設立のねらいとし、設立に向けての推進方策等が検討されていると承知いたしております。

 本格的な広域行政の実現に向けた第一歩として、まずは組織を立ち上げ、実施可能な事務から取り組んでいくというアプローチは一定理解できますし、また、広域連合が担おうとしている防災対策等について、広域的に対応する方が望ましいという考え方にも賛同できます。また、我が会派の予算編成に対する申し入れにおいて、関西の復興・復権に向けて、首都圏の政府機能をバックアップする防災副首都の関西誘致ということを挙げましたが、私としては、関西広域連合は、その推進母体としての役割を担えるのではないかとも期待しているところであります。

 しかしながら、これまで指摘されてきた、例えば、国から市町まで合わせて4重行政となるのではといったリスクや、そもそも広域連合の先に何があるのか、すなわち、めざすべき分権社会の姿に対する各府県の考え方に本質的な相違があるのではないかという懸念はまだ払拭されないでいます。井戸知事が考える広域連合であれば、鳥取県や徳島県が参加することに何ら不都合がないのかもしれませんが、大阪府知事のように、広域連合の行く先に関西州を想定するのであれば、近畿2府4県以外の県については整理して考えなければならないのではないでしょうか。また、これまでから他府県との広域連携によって行われてきた事務事業について、どのような検証を行ってきたのでしょうか。そのほかにも、広域連合運営に係る意思決定の方法や責任の所在、議会のあり方など、整理すべき重要課題は少なくありません。

 これまでのところ、関西広域連合の設立に関しては、関西広域機構の分権改革推進本部の場において、関係する自治体の長同士の協議が中心となっております。自治体間で連携しようということですから、首長同士が協議するのは当然ですが、あわせて、議会同士の協議や各界の団体同士の協議、そして、それと同時に県内での議論ももっと深めていかなければならないと考えます。

 9月定例会の我が会派の代表質問に対し、井戸知事は、説明会や広報紙等あらゆる機会を通じて市町や県民に広く周知を図り、議論を喚起していくと答弁されましたが、これまでのところ、関西広域連合についての県民の認識度は低く、首長同士の協議に比べると、県内での議論は明らかに未熟であると言わざるを得ません。

 提唱者として関西広域連合を推進していくのであれば、広域連合の設立が県民生活や市町にどのような影響を与えるのか、また国や大阪府知事が考えている道州制とは何が違うのか、論点を整理した上で、県民や市町への適切な情報提供を行い、そして、意見、疑問などに幅広く答える場を設け、さらには、その場で地方分権のあるべき姿についても活発に意見を交わすといった取り組みを重ねていくことが重要であります。

 今後、結論ありきではなく、県民的議論を徹底して行い、県民の十分なコンセンサスを得た上で推進されることを期待しますが、参画と協働の県政を推進される井戸知事として、県民のコンセンサスの醸成に向けてどのように進めていくのか、改めてご所見をお伺いいたします。

5.虐待防止を中心とした要保護児童対策の推進について

 質問の第5は、虐待防止を中心とした要保護児童対策の推進についてであります。

 要保護児童対策については、近年、児童福祉法や児童虐待防止法が相次いで改正され、要保護児童対策地域協議会の設置を努力義務とするなど、市町相談体制の充実や県・市町の児童の安全確認の義務化、安全確認のための県の立入調査の強化など、児童虐待の防止に向けた取り組みが進んでおります。

 本県においても、平成13年に発生した尼崎市での虐待死亡事件を契機として、専門職員の増強、こども家庭センターへの児童虐待24時間ホットラインの設置など、児童虐待防止のための体制整備を進めてまいりました。しかしながら、平成19年度に県内のこども家庭センターに寄せられた児童虐待の相談件数は1,351件と、依然として高い水準にとどまっております。また、市町が受け付けた昨年度の相談件数は2,719件となり、県と市町を合わせた相談件数の合計は、初めて4,000件を超えたという結果も出ております。

 このような中、本年5月に伊丹市在住の5歳の女児が死亡し、10月17日に傷害致死容疑で母親が逮捕されました。本年2月に児童養護施設を退所し、家庭に戻ったばかりの事件でありました。施設退所後、母親による虐待を疑わせる通報等が連続して3件もあったにもかかわらず、この女児を救うことができなかったことは大変残念でなりません。

 我が会派では、これら児童虐待の問題について、これまでから強く関心を持っており、さきの決算特別委員会においても、岡 議員、また越智議員が当局の対応について質問し、問題点を指摘したところであり、また、先般も、この事案を担当した川西こども家庭センターに出向き、直接事情を伺うなど、我々なりに問題点を調査、分析しております。

 今回の事案について見れば、センターの対応として、母子の話だけで状況を判断し、近隣住民らから十分話を聞かなかったことなどが問題として指摘されており、センターにおいては、どのように対応すれば防止することができたのか、いま一度、当事者としての検証が必要でありますが、ここで指摘したいことは、県全体にかかわる根本的な問題として、これまで整備してきた児童虐待防止の体制が十分に機能を発揮しているのかどうかということであります。

 例えば、県と市町、学校、警察など関係者との連絡調整や連携に課題はないのか、県の体制としては、専門の知識と能力を有する職員が適切に配置されているのか、また、現在四つのこども家庭センターで神戸市を除く県下全域を所管しておりますが、このような体制で県民のニーズにこたえられるのか、また、職員数については、法的要件は満たしているそうですが、現状で十分と言えるのかといった点について、県としてどのように認識しているのか。

 また、児童福祉法の改正により、平成18年4月から中核市でも児童相談所を設置することが可能になりました。住民に身近な行政はできる限り基礎自治体が行うという地方分権の観点からも、設置者は市であることが望ましいと考えますが、現在のところ、西宮市、姫路市ともに設置はされておりません。また、来年4月には尼崎市も中核市となるわけですが、そこで、この3市に対しては、児童相談所の設置について、積極的に指導、助言を行い、必要があれば支援にも応じていただきたいと考えますが、あわせてご所見をお伺いいたします。

6.地域活性化を見据えたツーリズムの推進について

 質問の第6は、地域活性化を見据えたツーリズムの推進についてであります。

 我が国の人口は、2050年には1億人程度まで減少すると見込まれ、経済の縮小が危惧されておりますが、このような状況の中で、観光産業への期待が高まっております。2005年における国内の旅行消費額は23.9兆円、直接の雇用創出効果は224万人と言われており、また、この消費がもたらす生産波及効果は54.1兆円にも上り、459万人もの雇用創出効果があると推計されております。これは、我が国の国内総生産額の5.6%、総就業者数の6.9%に相当するものであります。

 この10月には、国土交通省の外局として観光庁が設置されるなど、国においても、観光立国の実現は21世紀の我が国経済社会の発展のために不可欠な国家課題として位置づけ、訪日外国人旅行者1,000万人、観光旅行消費額30兆円を目標とする各般の施策が進められているところであります。

 本県においても、ひょうごツーリズムビジョンを平成14年度に策定し、さまざまな行動プログラムに取り組んでいるところであり、いよいよ来年4月から「あいたい兵庫デスティネーションキャンペーン」が実施されます。現在、プレキャンペーンが展開されておりますが、このキャンペーンの成功により、県民が本県の魅力を再発見するとともに、来訪者が本県の魅力を満喫し、交流人口が拡大するよう期待するところであります。

 また、海外との交流については、ことしはブラジル移民100周年を記念する日伯交流年であり、さまざまな行事が両国で開催されましたが、このような姉妹・友好関係を活用したプロモーション活動も極めて効果的だと考えます。現在、県下32市町が海外16ヵ国、63の都市等と姉妹・友好提携を結んでおりますが、各市町がデスティネーションキャンペーンの経験や資源を生かす意味でも、県と市町が一体となったプロモーション活動を実施することがより効果的ではないでしょうか。

 いずれにいたしましても、ツーリズムの振興は、地域経済活性化に不可欠な課題であることから、今後、国内外のツーリズムをより一層積極的に推進すべきと考えますが、ひょうごツーリズムビジョン後期行動プログラムの中間年に当たり、ツーリズム推進の現状と課題をどのように総括し、その実現に向け、特にどのような点に重点的、戦略的に取り組んでいかれるのか、当局のご所見をお伺いいたします。

7.農水産物の流通改革について

 質問の第7は、農水産物の流通改革についてであります。

 食の安全・安心を損なう事件が相次いで起こり、食に対する消費者の不信はかつてなく高まっております。その結果として、行政としてもこれまでの食品安全対策を大きく見直さなければならなくなり、そこで、食の安全と安心を確保するための手法として、農場から食卓までの履歴が追跡できるトレーサビリティシステムを社会的インフラとして整備しようとする動きが生まれてまいりました。

 しかしながら、安全性については、科学的な手法で証明することが可能であるものの、安心については、情報の信頼性によって確保されるものであることから、食品の生産、流通にかかわるすべての関係者のコンプライアンスを必要としております。

 現在、IT技術を活用したシステムが研究されておりますが、流通経路が複雑化すれば、いかなるシステムを開発しても、現実として、情報の信頼性、すなわち安心を確保することは難しいのではないかと考えます。安心というものが確実に伝わるための流通の合理化や簡素化を進める必要があるのではないでしょうか。

 また、流通のコストについてであります。農水産物価格の低迷に加え、肥料、燃料等生産資材の高騰により、農業、水産業の経営状況はますます悪化しておりますが、流通コストを縮減することができれば、生産コストのアップを価格に転嫁しても、相殺されて消費者に負担をかけずに済むことになります。

 流通の合理化、簡素化といえば、農業であれば、まず、産地や道の駅での直売所が思い当たりますが、すべての消費者が日常的に産地まで買い物に行くことはできませんので、産地直売所の展開とともに、都市部に暮らす多くの消費者のもとへ生産物をいかに効率的に届けることができるのか、また、逆に消費者の多様なニーズをいかに的確に生産者に伝えるか、生産者や農協の取り組みが重要だと考えます。

 私の知っている農家でも、宅配便等を利用して直接消費者へ販売している方もいらっしゃいますが、このような流通形態は、県全体の生産量からすると、ごく一部でしょうから、例えば、集落営農を推進するのであれば、その中に販売専門のスタッフを養成して、集落単位で生産から販売までを手がけるなどといったことや、また、例えば、但馬や西播磨の生産者や農協が阪神間に直売所を出店するといったことなど、さまざまなアイデアが考えられるのではないかと思います。

 また、水産物は、水揚げが天候に左右され、多品種で大きさや品質が多様であること、鮮度保持が必要なことなどの特性があることから、流通経路には、漁港の競りに見られる産地市場と、東京の築地市場に代表される消費地市場が存在しております。各漁港から多種多様な鮮魚を集約し、多数の小売店に分配するこのシステムは、鮮魚の多くがいわゆる魚屋さんで売られていた時代には有効に機能しておりましたが、現在では小売の大半を大型量販店が占めるようになり、消費地市場を経由しない直接取引も増加していると聞いております。

 このように、食の安全・安心の確保や、また同時に農業・水産業経営の安定化が求められる中で、生産物の流通についても積極的な改革が必要ではないかと考えますが、そこで、県としては、このことについて施策としてどのように取り組んでいこうとされるのか、現状認識も含めて、当局の所見をお伺いいたします。

 

8.建設業の構造改革と従事者の雇用確保について

 質問の第8は、建設業の構造改革と従事者の雇用確保についてであります。

 平成18年の事業所・企業統計調査によりますと、県内には約1万9,000の建設業の事業所があり、約14万人の方が従事されておりますが、今後、国、県の投資事業の見直しにより、公共事業量が抑制され、さらには、景気後退により住宅着工や民間企業の設備投資等も減少が見込まれる中、業者間の競争はより激しさを増すものと推測されます。

 このような中、県は、入札制度の運用見直しによって県内の事業者の受注拡大を図るほか、国の機関や近畿府県、建設業団体等で構成する近畿地方建設産業再生協議会を通じて、企業間連携や新技術・新工法の導入等を支援しております。また、この秋には、建設業を初め、県内中小企業が直面している極めて厳しい状況に対応するための制度融資の拡充を行ったほか、国土交通省においても、先月から建設企業の資金調達の円滑化に向けた支援が開始されたところであります。

 しかしながら、新行革プランに基づく投資事業費の抑制等を踏まえ、建設需要の今後の見通しを考えますと、現在の建設業者は明らかに過剰であり、昨年6月に国土交通省の建設産業政策研究会が取りまとめた報告書「建設産業政策2007」においても、建設業は、産業構造の転換が必要で、業者の再編・淘汰は不可避とされ、再編への促進策の一つとして、川上・川下市場や農業等の分野への進出支援といったことが示されております。現行制度でも業種転換のための資金は用意されておりますが、既往債務が大きく、新たな融資を受けることが難しい業者もあるようで、支援策の拡充が望まれます。

 また、我が会派として特に主張したいのは、建設業従事者に対する新たな雇用確保に向けた取り組みの必要性であります。失業者を生まないように、積極的な雇用施策を講ずる必要があると考えます。既に、岩手県では、建設業者の新規分野への経費助成や企業再編に取り組む企業への専門家による指導、助言を行うなど、部局を超えた総合的な対策が始まっていると聞きます。

 そこで、本県においても、地域経済の活性化、雇用確保という観点から、既存の建設業者の業種転換など、建設業の構造改革を進めるとともに、その地域に企業誘致等により新たな産業と雇用を創出し、建設業で余剰となる労働力を円滑に移動させていくという産業・雇用対策を総合的に進めていく必要があると考えますが、当局のご所見をお伺いいたします。

9.予防原則を取り入れた教育施策について

 最後の質問は、予防原則を取り入れた教育施策についてであります。

 今、全国的に課題となっている学力問題、児童生徒を取り巻く教育環境の問題等の中で、本県の教育施策をいかに進めるべきか、その課題解決に向けたヒントを得るため、PISAの調査による学力世界一と言われるフィンランドの教育がどのようになされてきたのか、この8月に現地調査に行ってまいりました。フィンランドの学校では、大人への成長過程において個々人の学力の比較は無意味という考えのもと、16歳までは他人と比較するためのテストはないし、長期的な能力別指導や順位づけも否定されております。そして、少人数編成のクラスの導入や低学力の生徒への徹底的な支援などを実施し、一人一人を大切にし、一人たりとも落ちこぼれをつくらないよう努力しております。また、子供の成長にはコミュニケーションが大切であり、もしそれが不十分であれば、人間としての人格も学力も発達しないといった考え方があり、授業時間のうち、知識の詰め込みではなく、いわゆる個を大切にしたゆとり教育が実施されております。

 我々が訪問したヴィヒティ市内の基礎学校におきましても、決して高レベルの教育をしようということではなく、「孤立を防ぐ」、「落ちこぼれを防ぐ」などといった「未然に防ぐ」ということを教育方針としておりました。自治体にとって、非行少年が増加することによって、その対応として予算や人員が必要になることから、これらを未然に防ぐことによって、将来負担を減らそうという考え方があるようです。これらの考え方の背景には、個人の存在が、社会の構成員としていかに大事であるかという北欧型福祉国家の理念があり、この考え方をすぐさま我が国、本県に当てはめることは難しいかもしれませんが、参考にして取り入れる部分は大いにあると考えます。

 本県における児童生徒の問題行動等の状況を見ますと、先ごろ文部科学省が行った調査では、県内の国公私立小・中・高校などで昨年度に認知されたいじめ件数は1,983件、暴力行為は3,400件ということで、いずれも相当な数であります。また、本県における少年非行の情勢について見ますと、実際に罪を犯した非行少年は、平成15年以降は減少傾向にあるものの、飲酒、喫煙などの行為で補導された不良行為少年は年々増加しており、平成13年に約1万6,000人であったものが平成19年では4万人を超えており、決して看過できない状況にあります。

 そこで、学校での問題行動や少年非行は、家庭や社会の環境も大きく影響しているものと思いますが、子供への教育投資を最重点化し、子供たち一人一人の能力や適性に応じたきめ細かな指導を充実させることによって、将来的に孤立や落ちこぼれを防ぎ、問題行動や非行を抑止することができるのではないかと考えます。そして、結果として将来に起こるかもしれない非行、犯罪などへの対応として必要な負担を減らすことにもつながるのではないでしょうか。

 本県では、これまでから生きる力をはぐくむ教育の推進や個性や能力を伸ばす教育の推進について力を注いできましたが、今後とも、対症療法的な施策ではなく、このような取り組みをより発展させていくことが重要であります。現在、環境行政においては、「予防原則」という概念、つまり、環境保全などに関する政策の決定に当たっては、具体的な環境への影響が発生しておらず、また、その原因と思われる行為や物質との因果関係を科学的に証明できない場合でも予防的に規制していくという考え方が取り入れられつつあります。

 この考え方をすぐさま人に当てはめるのはいささか乱暴かもしれませんが、教育行政においても、このような考え方を導入し、実行していくべきと考えます。そのために当初、費用がかかるとしても、将来的には子供たちが健全に成長し、将来の社会的コストの削減につながるものだとすれば、県民の理解を得ることは十分に可能であると思います。

 そこで、現在策定作業中の県教育振興基本計画において、予防原則の考え方に基づき、前述した問題行動等を予防するためにも、個性や能力の伸長と基礎学力の向上を図るきめ細かな指導を充実するための施策について、必要な予算措置も含め、明確に位置づけられることを期待しますが、このことについて当局のご所見をお伺いいたします。

 さて、当局におかれましては、これから新年度予算の編成作業が佳境を迎えます。井戸知事にあっては、現任期最後の予算編成となるわけですが、2009年度予算は、新行革プランに基づく最初の予算であり、兵庫の将来を決める実質的、本格的な予算と位置づけられております。そのため、今まで以上に施策の選択と集中を徹底し、限られた予算を生活者の視点に立った県民本位、現場主義の施策に配分することにより、厳しい環境の中でも県民だれもが将来の兵庫に夢と希望を持つことができるよう明確な目標、指針を示すことが必要であります。予算編成においては、我が会派から申し入れた事項も十分に尊重していただいたものとなることを強く期待しております。

 来年はうし年であります。牛は、古来より穏和で力強く、農耕に有効な豊穣をもたらす家畜としてあがめられてまいりました。牛のごとく辛抱強く努力すれば夢がかなう、そのような年となることを祈念しつつ、質問を終わらせていただきます。ご清聴ありがとうございました。

答弁

兵庫県知事 井戸敏三知事(井戸敏三)

民主党・県民連合を代表しての石井秀武議員のご質問にお答えいたします。

 

まず、県財政の状況についてです。

 

今年度の本県の財政状況は、普通交付税は、当初予算見込額を60億円上回る額を確保しましたが、県税収入については、現下の金融不安が企業業績の悪化や株価の低迷などの経済状況に影響を与え、法人関係税が約150億円程度減収する見込みであります。さらに、個人県民税配当割などが前年度を大幅に割り込むなど、厳しい状況であると考えています。

 しかし、今年度の財政収支見通しとしては、一方で、税の減収に伴い、県税交付金や還付金が減少するなどの歳出減も見込まれることや、地方交付税の算定における法人関係税の収入見込みの減少に伴う減収補てん債の発行枠が200億円を上回ると見込まれることなどから、当初予算の枠組みを大きく移動することはないものと考えています。
いずれにしましても、現下の厳しい状況でありますので、万全を期してまいります。

 また、来年度の財政環境も、県税収入の大幅な減収が避けられないなど、さらに厳しい状況になると見込まれます。このため、来年度予算の編成に当たりましては、的確な地方財政計画の策定や地方財政対策がとられるよう国に強く要請しております。
あわせまして、新行革プランに基づく組織再編や定員の削減、事務事業、投資事業の見直し、自主財源の活用など、行財政全般にわたりゼロベースからの見直しを行い、選択と集中の一層の徹底を図ってまいります。

 現在、国において第2次経済対策を中心として、補正予算と21年度の当初予算編成作業中であります。地方財政対策も年末に向けて検討されています。しかし、今年度約5兆円でありました地方財政全体の財源不足額は大幅に増加すると見込まれます。
これに適切な地方財源対策、特に地方交付税の増額充実が図られることを期待しています。

 県税収入の減は地方交付税の増で4分の3が補てんされるとしても、大変厳しい21年度予算編成作業となります。さらに、現下の経済・雇用対策が特別対策として追加されてくることも考えられます。
現時点で21年度収支の見通しを的確にすることは困難でありますが、財政フレームの基本目標は堅持しつつ、当面、健全化判断比率の推移も見きわめながら、予算編成作業を踏まえて、必要があれば、財政フレームの見直しについても検討してまいります。

 

続いて、ひょうご経済・雇用活性化プログラムの推進についてです。

平成20年2月に策定しましたひょうご経済・雇用活性化プログラムは、兵庫経済の一層の飛躍を図るため、平成20年から22年度における経済・雇用政策の基本方向を示したものです。その基本は、本県と国との成長ギャップをこの3年間で2分の1取り戻そうとするものであります。
その推進に当たっては、その後の経済・雇用情勢の変化に的確に対応するため、ひょうご経済・雇用活性化推進会議の検証・提言を受けることにしています。
 現在、同会議では、昨今の資源高や金融不安、経済危機を受けて、まず、緊急経済・雇用対策を中心に、そして中長期的な視点でのプログラムの充実方策の2点から検討が行われています。緊急経済・雇用対策については、急激な情勢変化の影響を最小限にとどめ、県民生活の安定を確保するため、
まず第1に中小企業の金融対策、第2に雇用安定化対策、第3に需要拡大対策が検討されており、間もなく提言されます。
また、中長期的な視点でのプログラムの充実方策については、施策の重点として、第1にブランド戦略などの付加価値の高いビジネスモデルを構築していくこと、第2に先端技術研究開発を促進していくこと、第3に県内への投資の促進を図ること、第4に多様な産業人材の確保に取り組むことが検討されています。

 当面は、この厳しい経済危機を打開するため、県としてでき得る緊急対策、特に中小企業の資金繰り対策など、セーフティーネット対策を積極的に行っていく必要があると考えています。
既に経営円滑化資金の貸し付けについては、市町や商工団体の協力を得て積極的な対応をしております。中期的には、プログラムの重点的かつ戦略的な推進により、兵庫経済の力を高めてまいります。

 

続いて、社会保障の充実についてのお尋ねがありました。

 

阪神・淡路大震災から13年が経過し、復旧・復興のステージを乗り越えてきた今、今後の少子・高齢社会や人口減少社会の到来を見据え、新行革プランの枠組みのもと、県民一人一人の生活の充実と地域の活性化を目標としつつ、県政運営を図っていかなければなりません。

 ご指摘のように、現下の日本の課題は、将来の生活に安心感、安定感が持てる制度をつくり上げることであろうと考えます。これへの制度的な対応は国の対策にまたざるを得ないといたしましても、県民の生命に直結する分野である医療、福祉等の分野については、市町と協働しながら、生活保護、医療保険、介護保険、障害者自立支援などの全国的な制度をベースに着実に推進していかねばなりません。
県独自の施策としても、福祉医療制度、多子世帯の保育料の軽減など先導的な取り組みを行っておりますが、これらにつきましても、時代にふさわしい見直しを行っていくこととしています。

 

また、今年度においても、社会問題化している医師不足等に対応するため、国の第1次補正に応じて、医師派遣緊急促進事業や救急医療機関支援事業などの緊急実施、後期研修修了医師の来年度採用に向けた地域医師県採用制度の創設など、厳しい財政状況のもとでも、県民の安全安心の確保対策に取り組んでいます。

 今後も、ご指摘のように、新行革プランを推進する中で県民生活の安心安全を図るため、国の経済・雇用の緊急対策に的確にこたえていくとともに、県としても、必要な医療・福祉等の施策を進めてまいります。

 なお、基本的には、年金、医療、介護などの社会保障に対する国民の期待に的確にこたえられる制度的な保障の確立が期待されます。このための安定的な財源確保も必要であります。消費税や地方消費税の充実などについても、今後十分な検討を期待したいと考えております。

 

地方分権の推進についてのお尋ねがありました。

 

市町への権限移譲についてです。

 

住民本位の分権型社会への転換を図っていくためには、住民に最も身近な自治体であります市町が大きな役割を担うことが期待されます。県内市町では、既に人口1万人未満の市町はございません。また、姫路市、西宮市に次いで、来年4月には尼崎市が中核市に移行します。このように、基礎的な地域経営を担う体制がおおむね整備されたのではないかと考えています。

 このような中で、県から市町への権限移譲につきましては、平成13年度に策定した県から市町への権限移譲等推進計画などによりまして、これまで屋外広告物法による是正指導等に関する事務等ご指摘の43の法律に基づく事務のほか、環境の保全と創造に関する条例に基づく届出の受理等に関する事務など、条例に基づく事務等を含めて688事務を移譲するなど、全国的に見ても積極的に進めてきたと考えています。

 移譲に当たりましては、市町の自主性を尊重して推進することを基本に、受理、審査、許可、立入検査等の一連の事務をできる限り包括的に移譲しています。あわせて、交付金による財源措置や建築士等の専門職員の派遣等の人的支援を行いながら行ってきました。
また、今回、1次勧告に盛り込まれました359事務の移譲につきましては、既にその概要等を市町に提示し、検討を進めております。専門的な人材の確保に不安がある等の意見もあります。今後、市町から提起された課題を分析し、市町における必要な人材育成など対応策を検討してまいります。
また、移譲項目や対象市町、確実な財源措置などのあり方について、国に対しても強く提案していきます。

 ともあれ、市町と協議しながら、県と市町の役割を整理し、的確かつ円滑な権限移譲を進めることにより、県と市町の新しい関係の構築をめざしてまいります。

 

続いて、関西広域連合についてです。

 

関西広域連合は、広域行政課題に対処する責任ある地域主体となり、また、地方支分部局を初めとする国の事務の受け皿となり得ることから、地方分権の考え方を地域みずからが具体化できる有効な仕組みでありますので、まさしく分権改革の突破口になると考えています。

 広域連合が道州制への一歩となるのか否かは、その実績により評価すべきであると考えます。ご指摘のように、広域連合は道州制とは異なり、構成自治体や扱う事務を個別に選択できる柔軟な制度であります。鳥取県や徳島県を含めた関西広域機構の構成団体が参加することもできます。
これまでの連携の実績を生かした広域行政が可能となるよう検討を進めてまいります。
 しかしながら、関西広域連合の設立には、ご指摘のとおり、住民の十分な理解が不可欠であります。そのために、広域防災への対応やドクターヘリの共同運航などの広域医療連携など、住民生活の質的向上につながる事業内容とすることが必要です。また、これまでも県や関西広域機構のホームページ、新聞等によるPRに努めてきましたが、
今後は、関係団体の広報媒体の活用なども含めまして、さらなる周知に努めるとともに、県民に対しまして、さまざまな機会を用いて意見を求め、参画と協働の理念に基づき、拙速とならないよう十分な共通理解を得て、全国初の複数府県による広域連合の設立をめざしてまいりますので、よろしくご指導をいただきたいと存じます。

 

続いて、建設業の構造改革と従事者の雇用確保についてです。

 

本県における建設産業は、総生産の約10%、従事者の約6%を占めるなど、地域経済・雇用を支える重要な産業です。災害対応の担い手としても大きな役割を果たしてきました。

 このような中、公共投資の抑制やダンピング受注の増加等、建設業を取り巻く経営環境は厳しさを増しています。

 このため、総合評価落札方式や技術・社会貢献評価制度を拡充するなどにより、技術力、施工力、経営力にすぐれた建設業者が成長できる環境を整備していくとともに、建設業従事者の雇用確保にもつながるように、小規模事業の確保に加え、10月には、最低制限価格のさらなる見直し、単品スライド条項の適用拡大、市場価格を設計単価に即座に反映させる品目の拡充などに取り組んでまいりました。
また、11月には、国の実施時期とあわせて地域建設業経営強化融資制度についても導入しています。また、国土交通省の建設産業政策2007における川上──設計・企画業務、川下──維持管理市場などの関連産業を中心とした企業立地の促進により、雇用の創出を図ってまいります。
あわせて、県制度融資の新分野進出のための第二創業貸付の活用等により、業種転換を促進していくことが必要であると考えられます。
 農業従事者の高齢化や後継者不足、遊休農地の増大等に対応した企業の農業参入への支援等による農業分野への労働力移転、また、不足する介護・福祉人材、新規企業立地に伴う労働力需要等に対応するオペレーター養成など、新たな職業訓練プログラムの提供などによりまして、建設業を含めた他分野からの労働力移転を図ることが課題となりつつあります。
建設業協会、商工会議所、JAなど関係機関とともに検討を進めてまいります。
 これらの対策に加えまして、国や商工会議所等幅広い団体が行っている相談、融資・保証制度などの支援策を建設業の皆さんが活用しやすいように、建設業協会などの各種団体、そして市町とも連携して、支援内容や窓口等の情報提供にも引き続き努めてまいります。

 あわせて、この厳しい経済状況を打開するためには、需要につながる緊急の公共事業の実施が必要ではないか、このように考えています。過日の政府主催の知事会議でも、中川財務大臣にこのことを提言しました。例えば、防災や環境対策、橋梁やトンネルの大規模補修、高校の耐震化補修・補強など必ず必要となる事業を前倒しして実施することが、当面の有効需要の増加に結びつくと考えられます。
厳しい財政状況であるだけに、有効需要を生み出す必要な対策を国において的確に行われることを期待したいと思います。

 最後に、来年度予算編成に当たりましては、県議会からのこれまでのご提言を踏まえて十分に検討してまいりますので、よろしくお願いをいたします。

 以上、私からの答弁とさせていただきます。

副知事(齋藤富雄)
 

私から虐待防止、ツーリズムの推進に係るご質問についてお答えをいたします。

 

まず、虐待防止を中心といたしました要保護児童対策の推進についてお答えをいたします。

 今回、母子の指導中にもかかわりませず、児童虐待死亡事件が発生いたしましたことは、大変残念なことであり、現在、児童虐待事例検証委員会を設置して、さまざまな角度から検証を行っているところであり、その提言を踏まえまして、二度とこのような事案が生じないよう、今後、所要の対応を図ってまいりたいと考えております。

 県におきましては、これまで二度にわたります児童虐待防止プログラムの策定に基づきまして、さまざまな児童虐待防止対策を講じてきたところでございますが、このうち、学校、医療、警察など関係機関との連携につきましては、全市町に設置されました要保護児童対策地域協議会におきまして、要保護児童のケース検討を行い、適切な見守りなどの処遇に結びつけているところでもございます。
 また、県こども家庭センターでは、質量両面にわたり専門性の向上に取り組んでまいりました。具体には、一つには、平成14年度から児童福祉司の専門職採用を行い、これまで27名を採用いたしました。二つには、保健師や児童福祉専門員の配置、三つには、児童福祉司など専門職5人体制を基本とした児童虐待対応専門チームの設置、四つには、弁護士や小児・精神科医師などが的確に助言する児童虐待対応専門アドバイザーの設置などに取り組んできたところでございます。

 また、阪神地域では、虐待相談の困難事例が多かったことから、18年度に川西こども家庭センターを設置し、組織の体制強化を図ったところでもありますが、今後とも必要な対応を図ってまいりたいと考えているところでございます。

 また、要保護児童対策は、身近な市町での迅速な対応が必要であることから、中核市等での児童相談所の設置も働きかけているところでもございます。

 

次に、地域活性化を見据えたツーリズムの推進についてお答えをいたします。

 

ひょうごツーリズムビジョン後期行動プログラムの推進に当たりましては、知事を本部長といたします観光ツーリズム推進本部を設置いたしまして、全庁挙げて計画的、戦略的なツーリズム振興を進めているところでもございます。

 その中で、観光体験や観光地づくり等を進めてまいりました結果、本県のツーリズム人口は、16年度の1億2,400万人から19年度には1億3,200万人となりました。また、国際ツーリズム人口は、他府県や市町との連携による知事のトッププロモーションや広報宣伝、下見招聘旅行等を積極的に実施しました結果、メーンターゲットでありました東アジアからの来訪者増加もあり、19年には73万人となり、目標の60万人を大幅に超えたところでもございます。

 このような取り組みを通じまして、課題でありました観光資源の発掘や観光ルートの開発、ホスピタリティの向上、連携体制の構築、全国や海外向けの本県の魅力の周知が図られつつあると考えているところでもございます。

 今後は、あいたい兵庫デスティネーションキャンペーンを確実に成功させ、その成果を将来につなげていくために、県下市町、関係団体、旅行業者とも連携しつつ、さらなる地域活性化と全国への情報発信を行ってまいります。

 また、国際ツーリスト誘致につきましても、近隣の府県とも連携して、海外プロモーションをより一層推進するとともに、国際会議の誘致や国際交流の強化・拡大を通じた誘客の仕掛けづくりにも取り組んでいきたいと考えているところでもございます。

 今後とも、物見遊山やレジャーといった狭い意味での観光のみならず、ビジネスなども含めました交流の拡大という意味でのツーリズム振興を積極的に推進してまいりたいと考えているところでもございます。

副知事(五百蔵俊彦)
 

私から農水産物の流通改革についてご答弁申し上げます。

 

農水産物の流通については、新鮮な食品を安定的に消費者に届けることを基本に、昨今の食に対する消費者の不安の高まりや生産者の経営力向上等の観点から、卸売市場流通を基本に、消費者や実需者の多様なニーズに対応できる直売や量販店との直接取引など、流通の多元化が必要であると認識しています。

 このうち、卸売市場流通は、なお全流通量の約6割を占めており、大量・多品目の迅速な集荷・分荷と公正な価格形成等の機能を有する重要なシステムでございます。このため、県では、卸売市場における品質管理の向上や流通の効率化を進めており、例えば、鮮度保持のための低温卸売場の整備や地場食品の品ぞろえの充実と流通経費の削減を目的とするひょうご卸売市場協働ネットワークの拡大を進めているところでございます。

 また、流通の多様化や簡素化に向けては、農産物直売所の整備や県漁連による県産鮮魚の移動販売車の導入、大手量販店との地場食品の直接取引、民間事業者と共同したインターネット販売サイトの設立などを支援しています。

 今後とも、こうした取り組みのさらなる推進を図ってまいりますが、食の安全・安心確保に向け、流通関係者のコンプライアンス徹底に向けた研修会を開催するとともに、本年4月からは、JAS法の改正により、新たに業者間の取引にも監視を強化するなど流通の透明性の確保に努め、生産者と消費者双方の多様なニーズにこたえ得る流通の仕組みづくりを支援し、農水産業の経営の安定化に努めてまいりたいと考えております。

教育長(吉本知之)

予防原則を取り入れた教育施策についてお答えいたします。

 いじめや暴力行為など子供たちの問題行動につきましては、依然として相当な件数で推移をしており、憂慮すべき状況にあります。こうした問題行動に対しましては、日ごろの学校生活において教師が子供と人間的なふれあいを通じて心のきずなを深めるなど、早期発見・早期対応に努めますとともに、さまざまな教育活動を通じて、他者を思いやる心や命の大切さを実感すること、社会の一員としての自己有用感を高めることなど、一人一人の子供たちに豊かな心をはぐくむことにより、問題行動を起こさないような環境づくりに取り組むことが重要であると考えております。

 また、議員ご指摘の、子供たちの豊かな心をはぐくみ、確かな学力を身につけさせ、生きる力をはぐくむことは重要な課題と認識をいたしております。
今回策定する教育基本計画に盛り込むこととしておりまして、その主な内容といたしましては、本県が先進的に取り組んできた特色ある教育の一層の推進を図ることとし、問題行動の未然防止や適切な対応を図るための子供の悩み等を積極的に受けとめる教育相談体制の構築、環境体験事業や自然学校、トライやる・ウィークなど、子供たちの発達段階に応じた体験活動の充実、小中学校における新学習システムを活用した個々の児童生徒の個性や適性に応じたきめ細かな指導の充実など、できる限り具体的な施策を盛り込んでいきたいと考えております。

 基本計画の推進に当たりましては、厳しい財政状況のもとではありますが、事業の選択と集中を図りながら、必要な予算の確保にも努め、着実な施策の実現を図ってまいりたいと考えております。