平成17年平成16年度決算特別委員会(病院局)

石井秀武委員

公営企業会計の決算書を見ると、病院事業費用の中で給食材料費として7億4,000万円支出されており、そのうち米の占める割合は7%であると聞いているが、使用している米の品種には各病院でかなりの格差があるように思う。病院給食にも地産地消を進め、県産のおいしいお米を食べていただき、患者の皆さんには早く元気になっていただきたいと考えるが、ここでは、この病院事業費用810億円のうち、人件費を除くと56%を占める材料費、特にそのうちの半分以上を占める薬品費について質問する。  この決算額からしても、購入する薬の内容が病院の支出面に大きな影響を及ぼすことがわかり、しかも、この薬品費のほとんどは、入院患者に対する薬剤投与にかかる経費であることが適切であると考える。すなわち医薬分業の推進である。医療の提供と薬剤投与の分業を進めることは、高齢化社会の進展に対応して、薬剤の過剰投与を抑え、多剤投与による重複、副作用の回避など、薬害防止にもつながり、より良質の医療を提供する観点からも非常に重要である。地域の医療ネットワークの重要な拠点となり、リーダー的役割を担う県立病院としては、他の病院を先導するためにも率先して進めていかなければならないと考える。  成人病センターや姫路循環器病センター、光風病院など特別な調剤が必要な病院、診療科の場合は専門的な希少薬品が多く、対応できる応需薬局も少ないとも聞いているが、地域における応需薬局の体制整備を働きかけるとともに、患者に対しても積極的に院外処方のメリットの周知を図り、徹底的に院外処方を推進していただきたい。そこで、県立病院における医薬分業の取り組みの現状と今後の方針について伺いたい。

岩本経営課長

医薬分業については、薬害の防止や薬剤の過剰投与を抑え、また多剤投与による重複、副作用の回避などが図られ、より良質な医療の提供につながるものと認識している。  このため平成10年3月に尼崎病院での実施を皮切りに、柏原、塚口、淡路、加古川病院において、また平成17年2月からは、こども病院の全診療科で実施したところである。しかしながら、成人病センターにおいては、特定の薬剤についてのみ、西宮病院においては希望者のみについての実施にとどまり、また、光風病院及び姫路循環器病センターにおいては実施していないところとなっている。  未実施の病院については、専門的な希少薬品が多く、対応できる応需薬品が少ないこと、患者が県下各地から来院しており、取り扱いを必要とする薬品について、地元薬剤師会と調整が困難なことなどから、患者サイドに立って考えたとき、現在のところ院外処方の実施が困難な状況にある。  今後、患者に対して積極的に院外処方のメリットの周知を図るなどにより、院外処方の実施率を高めるとともに、専門病院も含めその完全実施について検討してまいりたい。

石井秀武委員

昨年より取り組みが進んでいるようだが、さらなる取り組みに期待する。  次に、ジェネリック医薬品の取り扱いについて質問する。  先般、厚生労働省において、来年の医療制度改革に向けて、高齢化の進行で急膨張する医療費に何とか歯どめをかけようと、医療制度構造改革の試案がまとめられ、現役世代並みの収入がある高齢者には3割の自己負担を求めることが盛り込まれている。今後、高齢者においても患者負担の増加が予想される中、新薬の開発などによる負担増と相まって、患者の医療機関での受診抑止につながることが懸念される。  このような状況の中、少しでも患者の自己負担を軽減し、患者本位の病院として県民に対して安全・安心な医療を確保していくことが県立病院の責務と考える。  病院で処方される薬には、成分が同じでも価格の違うものがあり、高い方は最初に開発した製薬会社の先発品、安い方は他社が追随してつくったジェネリック――後発品――と呼ばれる薬である。ジェネリック医薬品は、新薬の特許が切れた後に同じ成分と効能で売り出されるもので、臨床試験などを省略して認可されるため、開発期間が短縮されてコストも安く、価格は新薬よりも3割から8割ぐらい安く、平均でもほぼ半額と聞いている。中身が同じであるならば安い方がよいと思うのが消費者の心理である。  厚生労働省では、平成14年の医療費改定で、医師が院外処方せんにジェネリック医薬品を処方した場合、診療報酬を加点し、また、薬剤師がジェネリック医薬品を調剤すれば調剤報酬も加点する仕組みとなった。さらに、メーカー各社が自由に決めていたジェネリック医薬品の名称を統一することを決め、都道府県に通知されており、名称の紛らわしさにより医師が処方せんを書くときに指定しづらいとされ、普及の進まない理由の一つとも言われていた課題解消に向けた動きも見られる。  大学病院などでは、一昨年から包括払いの制度が始まり、ジェネリック医薬品を選ぶ推進力となっており、最近ではテレビなどでもよくコマーシャルを目にするようにもなっている。医療先進国の欧米では、医療費抑制策の一つとしてジェネリック医薬品の使用を促進させる政策が各国でとられており、特許が切れれば、その約80%がジェネリック医薬品にかわると言われている。  病院は、いつも最良の薬を出すという患者からの信頼感が重要だが、それが新薬であってもジェネリック医薬品であっても、効果が同じで安全が証明されているのであれば、安価な方を選ぶべきではないかと考え、特に高血圧や糖尿病、アトピーなど長期にわたって投薬が必要な患者ほどその利用価値が高いとも考える。そこで、安心してかかれる県立病院におけるジェネリック医薬品の取り扱いについて伺いたい。

岩本経営課長

県立病院におけるジェネリック医薬品の取り扱いについては、薬価とその値引き率との関係から見て、必ずしも経営改善につながらないが、その使用により医療費総額の抑制や患者負担の軽減につながるなどのメリットもあることから、体の吸収速度を示す溶出試験などで、その安全性が確認されたものについて採用を行ってきたところである。  しかしながら、ジェネリック医薬品の中には臨床試験などの情報がないことによる品質への不安や、医療機関への安定供給体制が不十分なものもあり、また高度専門・特殊医療を行っている県立病院においては、その提供する医療内容から代替するジェネリック医薬品がないものも多く、結果としてジェネリック医薬品の使用割合が低くならざるを得ないという事情もある。  なお、平成16年度のジェネリック医薬品の使用状況は、金額で2億7,000万円と前年に比べ1,000万円上回っており、薬品費全体に占める割合は2.4%となっている。  このような中、ジェネリック医薬品は患者の負担の軽減につながること、包括払い制度を導入した際には経営的にも有利になることから、ジェネリック医薬品の採用の拡大を図ってまいりたい

石井秀武委員

昨年度の使用状況は2.4%ということである。このようなことに数値目標を立てることは無理があると思われるが、患者の立場を十分考慮した中で、効果が同じで安全性が証明されているものであれば、費用の安いジェネリック医薬品を積極的に取り扱うように、さらなる取り組みを期待する。  次に、成人病センター及びこども病院の基本的方向等について質問する。  近年の疾病構造の変化を初め、医療を取り巻く環境の変化、県内における医療提供体制の状況、さらには、各病院の現状を踏まえ、警察、消防等と並ぶ医療という県民の安全・安心ネットワークの重要な拠点として、県の医療政策の実現に向けた医療内容の向上と運営の強化を図るため、本年2月に県立病院の基本的方向が策定された。  私の住む神戸市西区の近隣には成人病センターとこども病院の2つの専門病院がある。成人病センターは、国民の死亡原因の6割以上を占める生活習慣病の中で、死亡原因が第1位であり、医学の進歩にもかかわらず年々死亡数が増加しているがんに対する診断、治療等の医療を担う病院として県民からも大いに期待されている。また、こども病院は、少子化時代にあって、安心して出産、子育てができる診療機能を担う小児専門病院として重要な役割を果たしていくものと考える。  そこで、これら2つの専門病院について、これまでの取り組みにおける課題と、その課題解消に向け基本的方向を定めた考え方について伺いたい。

船木病院局企画課長

病院事業においては、本年2月に病院事業の進むべき方向や各県立病院が提供すべき医療内容を明らかにする県立病院の基本的方向を策定した。  成人病センターについては、医療技術の進歩に伴う治療の高度化、多様化への適切な対応が課題であることから、糖尿病や白内障等のがん以外の疾患に対する医療を他の医療機関へ移管するとともに、がんの専門病院としてがん医療に純化、高度化を図ることとし、今後、取り組みを進めてまいりたい。  また、こども病院については、小児の重篤な救急患者や感染症患者等への対応のより一層の充実、母児同室化とハイリスク妊婦用の集中治療室の確保という課題があったことから、平成19年度の供用開始をめざし、救急専用のICUと感染症病床を有する小児救急医療センターの整備に着手した。また、既に本年5月から母児同室化を実施するとともに、6月には新たに整備した母体・胎児集中治療室において治療を開始したところであり、今後とも小児疾患に対する高度専門・特殊医療の充実に努めてまいりたい。

石井秀武委員

成人病センターの診療機能の充実について質問する。  成人病センターが担うがん医療については、今後ますます住民ニーズが高まることが予想され、診療機能の充実と県立粒子線医療センターとの連携強化などにより、さらなる治療効果を上げていく必要があると考える。  また、このようなニーズに的確に対応していくためには、現在実施している糖尿病等の内分泌・代謝性疾患などがん以外の疾患に対する治療は、早急に他の病院に移管すべきである。さらに、粒子線治療に関する相談や適応判定も他の病院との役割分担を進め、スリム化を図っていく必要があり、このことは粒子線医療センターのさらなる活用にもつながるものと考える。  日本では、これまで外科手術中心にがん治療が考えられてきたため、薬物治療を専門とする医師が不足していると聞いている。白血病等の血液のがんを治療する血液内科は、この成人病センターにも診療科が設置されており、多くの成果を上げている。また、他の病院にも多く存在するが、固形がんに対する治療を行う腫瘍内科を診療科として立ち上げていくところは余り存在していない。  がんの病態は、患者個々にさまざまであり、抗がん剤の効果と副作用について高度な知識を持ち、一人一人に合わせた治療を行う高い技術を持った医師が多く必要であると聞いている。中には治療してもらえる医師を求めて東京まで足を運ぶ患者もいて、これでは体力的にも経済的にもかなりの負担となる。厚生労働省においても抗がん剤治療を専門とする腫瘍内科医の認定と育成に着手したが、欧米に比べると20年以上もおくれているとも言われている。  そこで、腫瘍内科の設置など成人病センターの診療機能の充実について、どのように取り組まれるのか伺いたい。

後藤病院事業管理者

成人病センターについては、既にそのがん治療の実績は全国的に高く評価されているが、県立病院の基本的方向に沿い、新加古川病院の整備等にあわせ、がん以外の疾患に対する医療を成人病センターから新加古川病院へ移管するなど、がん医療に純化し、がん専門病院としてその診療機能のさらなる充実を図ることとしている。  このため平成16年度には精度の高いがん診断が実施できるPET検査装置を導入したほか、委員ご指摘の抗がん剤治療については、平成17年4月に抗がん剤治療に精通した専門医を確保して腫瘍内科を院内標榜した。今後、診療各科との連携を深め、副作用にも配慮した効果的ながん治療が行えるよう一層充実していく。  さらに、がん医療の専門病院として患者のQOLにも配慮した先進的な医療を提供する観点から、回復することなく、がん組織だけを切除する鏡視下手術機能を充実することとしている。  今後とも成人病センターについては、加古川病院、粒子線医療センター等との適切な役割分担と連携のもと、がん医療の全県拠点病院として診療機能の一層の充実を図ってまいりたい。

石井秀武委員

今後ますます患者の治療に対する要求が高度化、多様化する中で、診療科目としての抗がん剤治療を専門とする腫瘍内科の必要性は高まると思う。設置並びにその中身の充実に向けた取り組みを引き続きお願いしたい。  最後に、こども病院の児童精神科について質問する。  近年、虐待などで心に傷を負った子供のほか、自閉症や注意欠陥多動性障害などの子供に対するケアの必要性が高まっている。県が把握しているところでは、精神科への入院が必要な15歳以下の子供は約40人いるとされており、しかも県内には専用の入院病床がないため、一般小児科や成人対象の病院、県外の病院に入院しているケースが多いと聞いている。児童精神科は、採算性が低いため民間での取り組みが期待できないとも聞くことから、こういった診療部門こそ県立病院が役割を担うべきと考える。  現在、児童精神科外来は、県立こども病院等に設置されているが、被虐待や不登校、引きこもりなど子供たちの心の問題について社会的関心が高まりつつある中、統合失調症、気分障害、摂食障害など入院治療を必要とする子供など、その需要はますますふえることが予想される。  そこで小児専門病院として、こども病院における児童精神科外来の機能強化と専門スタッフの配置による児童精神科病棟の整備などについてご所見を伺いたい。

中島病院局長

近年、児童生徒による事件が頻発していることもあり、児童の心の問題について、社会的関心が急速に高まっており、その対応が迫られている。  児童精神医療の対象疾患の主なものは、統合失調症、神経症性障害、摂食障害、気分障害、多動性障害、広汎性発達障害が当たると言われており、このうち気分障害、多動性障害、広汎性発達障害については、通院治療で対応が可能とされている。残りの統合失調症など3つの疾患は、入院治療が必要とされており、この中で行動制限を必要としない患者については、県立淡路病院、神戸大学附属病院、兵庫医科大学病院、公立豊岡病院等、既設の医療機関において対応できている。  しかし、自傷・他害行為を防止するため、行動制限を必要とする患者に対する医療機関が、現在、県内にはない状況にあり、その整備が求められている。このため県立病院において児童精神病棟を整備することとしており、一つには、児童期、思春期、成人期を通じた入院医療の一貫性の確保、二つには、思春期医療のノウハウの活用、三つ目として、精神科医師による当直体制の確保等の観点から、児童精神病棟の設置にふさわしい県立病院の選定を進めている。  なお、こども病院の精神医療については、引き続き小児専門病院としての総合的な機能を生かすとともに、入院医療機関との緊密な連携により、一層良質な医療を提供してまいりたい。

石井秀武委員

対象が児童ということを十二分に考慮していただき、県立病院で児童精神病棟をできるだけ早く整備していただきたいと思っている。これで質問を終わる。