平成17年度予算特別委員会(県民政策部)

石井秀武委員

速質問に入らせていただく。
 まず、パブリック・コメント手続の効用について、本県におけるパブリック・コメント手続の実施状況についてお尋ねする。  本県では、県民の参画と協働を県行政推進の基調としている。そこで、まず、県民の参画と協働の一翼を担うと考えられるパブリック・コメント手続について、先ほどの山本委員のご質問とは違った観点から質問をさせていただく。  阪神・淡路大震災から私たちは多くのことを学んだが、今後の県政は、県民の参画と協働なくしてはあり得ないということは、震災の体験から得た最も貴重な教訓の一つである。この教訓を踏まえ、本県では平成14年に「県民の参画と協働の推進に関する条例」を制定した。この条例は、21世紀の成熟社会において、本県県政の歩むべき方向を示した県政史上画期的な条例であり、次世代に継承すべき震災の教訓を具現化したものである。  また、今定例会に条例案を上程されるに至った被災者住宅再建共済制度についても、同様に震災を体験した私たちの世代が子供たちの世代、そのまた次の世代に引き継ぐ財産であり、自治体による初めての共助の仕組みとしてマスコミに何度も取り上げられ、知事もその都度アピールされるなど、県民の関心も高まっているものだと思われる。  県では、これらの条例案の作成に際して、パブリック・コメント手続を実施された。特に、県民の参画と協働の推進に関する条例案の作成に際して行われたパブリック・コメント手続は、それ自身、県民の参画と協働のありようを占う重要な手続であったと思う。そこで、これらのパブリック・コメント手続において、それぞれ何人の方から何件の意見が提出されたのか、また、今年度に入ってから実施されたパブリック・コメント手続において、1件当たりの意見提出者数は平均で何人であるのか、お尋ねする。

木村地域協働局長

今後の意見募集のあり方等についての質問であるが、平成14年度に制定以来、これまで約3年間運用してきたパブリック・コメント制度であるが、1案件当たりの意見提出件数は現状では必ずしも多くなく、成熟社会における参画協働の仕組みとして、県民への周知や理解が必ずしも十分ではないと考えている。  この制度では、県民と政策形成プロセスを共有するための重要なチャンネルとして、提出された意見などを考慮して計画等を定めるものであり、この計画の賛否を問うものではない。たとえ特定の意見が多数寄せられたからといっても、また、提出意見の中で特定の意見が多数を占めたからといっても、そのことをもって計画等の可否を判断すべきではないものとしている。  また、提出意見については、一つ一つについてその趣旨を十分に勘案し、案件を所管する審議会等における専門的な視点からの審議も踏まえてその扱いを決定しており、その中で、意見反映の有無について、その理由とあわせて発表することを通じて説明責任を果たしている。  今後は、ご指摘の点も含めて、制度の趣旨をさらに広くPRするとともに、参画協働条例に基づく検証の中で広報の方法や各種フォーラムなどを併用した意見募集のあり方などについて検討を加え、県議会はもちろん、県民や関係各位のご意見、国、他府県の状況も参考にしながら、より成熟した制度として育ててまいりたいと考えている。

石井秀武委員

パブリック・コメント手続の目的である県政への県民の積極的な参画を促進するとともに、県政運営における公正の確保や透明性、説明責任の向上を図り、県民とともに歩む県政を推進するという原点に立ち返り、幅広く県民から意見が寄せられるような工夫を重ねていただくよう要望しておく。  次に、将来の道州制に向けての検討についてお尋ねする。  今年度に入ってからも、養父市、丹波市、南あわじ市が誕生するなど、本県においても市町合併が相次ぎ、2006年3月末には県内の市町数は29市14町になる見込みであるとの新聞報道もなされるなど、県内においては基礎自治体である市町の姿がほぼでき上がってきたように思われる。このように市町合併が進展し、基礎自治体が成長するに伴い、県の役割も大きく変わっていくものと考える。一部では、市町を補完する仕事が減り、県の空洞化の時代が現実味を帯びてくるとも言われている。  一方、現在の都道府県の区域は、基本的に1888年・明治21年以来117年も続いている区域であるが、この間の交通網、通信網の飛躍的な発達により、人々の生活行動範囲が当時とは比べものにならないぐらいに広がった。また、高度成長期を経て成熟社会が到来した現在、地域を取り巻く問題は複雑化し、中央省庁による画一的な政策では地域の多様化に対応できなくなるとともに、府県域を超えての広域的な事務処理が必要とされる案件がふえてきている。  そのため、経済界を中心に道州制の導入を求める声をよく耳にするものであり、先日の関西財界セミナーでは、道州制実現の第一歩として関西の複数府県にまたがる広域行政の枠組み「関西広域連合」を早期に実現することで一致したとのことである。県としても、こうした流れを踏まえ、将来における道州制も視野に入れながら、府県を超える広域自治体について検討すべき時期に来ていると考える。  そこで、現在各方面で行われている道州制など府県を超える広域自治体の検討状況について、本県としてどのように評価しているのか、そして今後どのように検討していくのか、ご所見をお尋ねする。

井筒県民政策部長

道州制については、戦後も数回議論がある。今ちょうど28次の地方制度調査会、ことしの秋にも報告が出ることになっているし、既に自民党でも道州制の導入基本法案が提案されている、あるいはそれぞれ政党でも議論がなされているし、先ほどご指摘いただいた関西広域連合という構想もある。さらに、最近の特徴として、特に府県レベルで、北海道の道州制特区を初めとして北東北3県合併、あるいは中国、四国、こういうところで道州制への移行の研究がなされているところである。  しかし、どうもいわばムード先行というか、2,000を切る市町村合併が一段落した、その次は府県合併、あるいは道州制だということがどうも先行しているのではないか。なぜ府県制ではだめなのか、そして道州制というのは府県合併なのか、あるいは国の地方支部部局の権限を地方におろすということなのか、さらには、単一国家制のもとでの道州制なのか、あるいは連邦制までも入れるのか、こういうことでいわば百家争鳴の感があるのではないかと思っている。  県としては、道州制を含めて今後府県のあり方を考えるときに、基本としては、国、地方を通じて統治機構全体を見直していく、その中で国の役割は外交、防衛、通貨、本来国が果たすべき役割に限定をして、内政面はもう原則的に地方にゆだねる、こういうことで進めていくべきではないか。その際、効率性あるいは経済合理性ということもさることながら、地方分権の推進あるいは地方自治の拡充、いわば私としては、憲法改正の論議ともあわせて幅広く検討していく必要があるのではないかと思っている。  こういう考え方に立って、本県としては広域的な課題として防災、環境、基幹的インフラ、こういうことがあるので、府県域を超える事務処理の体制のあり方など、これを具体的に検証する中で、道州制の是非を含めて今後のあり方を検討、研究していきたいと思っている。

石井秀武委員

将来の県そのもののあり方について検討していくことであるので、引き続きよろしくお願いする。  次に、関西復権プロジェクトについてお尋ねする。  まず、大阪湾ベイエリアの開発整備についてお尋ねする。  第277回定例会の一般質問において、私は、国の危機管理の観点から関西復権プロジェクトの推進について質問をした。その後1年3ヵ月が経過したが、各種景気指標を見ても関西圏の経済の低迷は顕著で、東京圏への一極集中が進んでいる。また、先月の中部国際空港の開港により、関西の一層の地盤沈下が懸念される状況になってきている。  さきの質問に対する井戸知事のご答弁では、「関西の復権について重要なことは、ベイエリア全体で1,000ヘクタールにも上る未利用地の活用ではないか。これらの地域は、交通アクセスなど高度な社会資本が既に整備され、経済社会的にも大きな集積を持っている地域に隣接しているだけに、エンタープライズゾーンなどのゾーン政策を導入して、関西復権の拠点地帯とすべきではないか」とのことであった。  このベイエリアについては、関西復権を訴える関西政・財・官の一体的な取り組みの結果、平成4年12月に、世界都市にふさわしい機能と住民の良好な居住環境等を備えた地域として、大阪湾臨海地域の総合的、一体的な開発整備を推進するための法律「大阪湾臨海地域開発整備法」、いわゆるベイエリア法が制定されている。  この法律に基づき、本県においても尼崎臨海西部地区、淡路島国際公園都市地区など八つの開発地区の整備が進められているが、この広大ではあるものの公有地、民有地が混在し、方々に建物も建っていたりするこのベイエリア全体を、果たしてどのようなコンセプトでまとめ上げようとされておるのか、ご所見をお伺いする。

畑ビジョン担当課長

大阪湾ベイエリアの開発整備については、世界都市関西にふさわしい機能と良好な居住環境等を備えた地域の形成をめざし、その拠点となる開発地区と道路等の公共施設を一体的に整備し、開発地区の有機的連携による相乗効果を圏域全体に波及させることにより、諸機能の集積や企業立地の促進等を推進してきたところである。  しかし、厳しい社会経済情勢のもと、なお多くの未利用地も残っているため、ベイエリア法に基づく開発整備とあわせて、都市再生特別措置法や地域再生・構造改革特区制度、産業集積条例の企業立地支援制度等の新たな制度を活用して、地域の創意工夫により、地域の特性や実情に応じた地域づくりを積極的に展開している。こうしたことにより、尼崎21世紀の森づくりや尼崎臨海西部地区への松下プラズマディスプレイ工場の立地、神戸医療産業都市構想の推進など、未利用地の活用に向けた動きが芽生えつつある。  また、神戸港と大阪港がスーパー中枢港湾に指定され、来年2月には神戸空港が開港することから、これらを契機として、このような本県での動きを関西全体へと広げていくことが必要である。関係府県・市や経済界とも広域的な連携を図りながら、ベイエリアを関西復権の拠点地帯として整備する取り組みを進めてまいりたいと考えている。

石井秀武委員

本当に魅力のある土地であれば、既に民間活力が入ってきており、ベイエリア法が制定され10年以上経過した今の現状を見るにつけ、そこには民の参入を阻害する何らかの制限や規制があるのではないか、そのあたりも十分に踏まえた上で、大阪湾ベイエリアの開発整備が関西復権の拠点地帯となると考えられるのであれば、中途半端な計画に終わらないように、しっかりとしたコンセプトを作成して取り組まれることを強く要望しておく。  次に、国家危機管理都市としての副首都誘致についてお尋ねする。  我が国では、国土面積のわずか3.5%の東京圏、すなわち埼玉、千葉、東京、神奈川に全人口の26.7%が集中している。また、資本金10億円以上の企業の本社機能の58%、外国法人の91%が東京圏に集中するなど、政治、経済、金融、文化、情報通信等が東京圏を中心に機能している。  そのため、発生が迫っているとされる首都直下型地震について、政府の中央防災会議の専門委員会が先日取りまとめた被害想定では、最悪の場合、建物の倒壊や企業の生産停止などによる経済損失は112兆円にも上るとのことである。さらに恐ろしいのは、経済的損失のみならず、我が国の行政機能が麻痺し、大震災の復旧はおろか、国中がパニックに陥る可能性があるとのことである。  こうした事態を避けるため、本年1月27日の衆議院予算委員会において、民主党の議員が、図式化した資料により、東京が世界のメガシティーの中で危険度ワースト1であることを示し、「都心の2キロ四方の中に皇居や議事堂などの機能が集中している。ここが被害を受けたら日本の司令塔がなくなり、復興はできない」として、「首都は東京でいいが、アメリカの連邦緊急事態管理庁のような機能を備えた副首都をつくってはどうか」と提案していた。それに対して小泉首相は「危機管理的都市があった方がいいと思っている」と応じていた。  また、去る1月20日には、首都機能移転について検討してきた衆参両院の与野党議員で構成する「国会等の移転に関する政党間両院協議会」と移転候補地となっている福島、岐阜、三重、奈良の4県知事が、首都直下型地震やテロへの危機管理のため、また、阪神・淡路大震災や新潟中越地震などを踏まえ、国会や首都機能のバックアップ機能の中枢を首都機能全体の移転より優先させることで合意したとの報道もあった。  日本国内で国の危機管理を補完するような都市の建設が将来的にも想定されるのであれば、阪神・淡路大震災という未曾有の被害を受けた本県にあっては、ポスト10年の取り組みとして、関西復権につながる危機管理的要素を持つ副首都誘致に向けて検討に着手すべき時期に来ていると思うが、ご所見をお尋ねする。

内田政策室長

阪神・淡路大震災の教訓から、大規模災害を初め緊急事態に対応する危機管理体制の確立は極めて重要であり、国の責務として危機管理機能が充実されることは大変有意義だと考えている。  ご指摘のような危機管理機能を有する副首都については、東京一極集中の危険や問題点を踏まえたものであり、首都機能移転計画においても、昨年末の「国会等の移転に関する政党間両院協議会」座長取りまとめにおいて、危機管理機能の中枢の優先移転を調査・検討することが合意されていることから、今後国において検討が進められるものと考えている。  本県は、震災後いち早く、いわば日本版のFEMAというべき専門的な支援組織と体制を国あるいは近畿広域圏に早急に整備することを提案したこともあるが、今、本県においては、広域防災センターや災害対策センターを初めとする危機管理体制に加えて、神戸東部新都心には災害関係の国際的機関が集積し、さきの国連防災世界会議における仮称「国際復興推進機構」の設立提案など、災害復興を支援する機能が集積しつつある。  こうした機能は、ご提案の副首都にも密接に関連することから、今後、国における検討の成り行きを見ながら、関西全体の復権に向けた取り組みとして研究課題にしていきたいと考えている。

石井秀武委員

最後に、本県における副首都候補地の適地について、さきの一般質問でも取り上げたように、1.500ヘクタール前後の平地が確保できること、2.国有地や公有地が大部分であること、3.高層建築、地下設備などを想定し、埋立地でないこと、4.新規の開発や自然破壊を行わないこと、5.既存の交通アクセスが完備していること、6.既存の大都市から容易にアクセスできること、7.危機管理と災害対策の観点から、東京から一定程度離れていることなどが条件として挙げられる。  県内には、既に播磨科学公園都市やひょうご情報公園都市周辺地域など、こうした条件に一部適した候補地が存在し、さらに現在、将来的な運用が取りざたされている伊丹空港もその候補地に含められると考えられる。また、この地を拠点とすることによって、周辺の都市構想、例えば宝塚新都市、神戸三田国際都市構想などに大きく寄与するものであると考える。  本県内に副首都としての近未来都市が出現すれば、1.国家の危機管理体制が整うこと、2.国家的情報基盤の整備により21世紀に対応し得る体制が整うこと、3.周辺地域を含め、計画的に良好な居住環境を整備できること、4.県下の税収が大幅に上がることなどなど、多岐にわたり大きな効果が期待できるのではないかと考える。さらに、さきの項目で触れた道州制の州都としての機能も果たすものになると確信している。
 長々と述べたが、候補地等は今後検討していく課題であり、今回は参考までに言いおく程度としておく。昨今の関西地域の地盤沈下は目を覆うものがある。改めて関西復権の切り札として副首都誘致に向けての企画、検討に着手することを強く要望し、質問を終わる。