平成20年平成19年度決算特別委員会(病院局)

石井秀武委員

神戸市西区選出の石井秀武である。今回は、県立がんセンターについて特化して質問をする。
実は、この県立がんセンター、私の事務所から徒歩10分圏内の大変好立地にあり、東播磨地域の地域がん診療連携拠点病院に指定されているが、立地上、神戸地域のみならず県下全域のニーズに十二分にこたえてもらっており、日ごろから感謝している。
なお、質問の中で、「成人病センター」と表現しているが、もちろん現県立がんセンターのことであり、一言つけ添え、質問に入らせていただく。
まず、機能純化による成果と課題についてお伺いする。
現在、国民の2人に1人が何らかのがんにかかり、3人に1人ががんで死亡する時代と言われており、がんと向き合い、がんとうまくつき合う必要があるとされている。
我が国のがん対策については、平成16年度から「第3次対がん10か年総合戦略」に基づき、各種の施策を推進し、全国どこでも質の高いがん医療を受けることができるよう、がん医療の均てん化を図ることを戦略目標として掲げられた。
そして、地域がん診療連携拠点病院の機能の充実強化や診療連携体制の確保などを推進するため、成人病センターが、平成19年1月に都道府県がん診療連携拠点病院及び東播磨地域の地域がん診療連携拠点病院に指定された。
成人病センターは、平成17年2月に策定した「県立病院の基本的方向」に基づき、がん医療への純化、高度化を図ってきており、平成19年4月、「がんセンター」に病院名称を変更され、さらにがん医療の機能強化が図られている。
今回が名称を変更してから初めての決算になるわけであるが、決算の概要を見る限り、前年度に比べ、患者数、病床利用率、収益性など、すべての面で改善されているように思われる。
そこで、機能をがん治療に純化されるに当たり、どのような機能強化を図られ、どのような成果と課題があったのか、ご所見をお伺いする。

中島企画課長

がんセンターであるが、委員ご指摘のとおり、平成19年度に成人病センターから名称を変更したところである。これについては、これまで、がん診療機能の高度化を図ってきたこと、さらには、提供する医療内容と名称が一致し、
県民にとってわかりやすいこと、さらには、優秀な医師の確保や職員の意識高揚につながるという観点から、名称を変更したものである。
また、診療機能については、「県立病院の基本的方向」に基づき、PET-CTの導入、あるいは抗がん剤治療や緩和医療の充実、さらには鏡視下手術の導入を行うなど、がん医療の専門病院としてさらなる高度化を図ってきたところである。
その結果、治療面においては、先ごろ全国がんセンター協議会が取りまとめた胃がん、肺がん、乳がん、大腸がん、子宮頸がん患者の5年生存率において、いずれのがんにおいても全国の中で高い結果を残すなどの成果を上げているところである。
また、経営面においても、平成19年度は、前年度に比べ、入院患者で1,282人の増加、病床利用率では0.7ポイントの向上、さらには外来患者数も3,296人の増加と、いずれも増加をしており、当期純損益においても5億3,800万円の改善をしたところである。
しかしながら、全県におけるがんの死亡率は依然として上昇しており、総合的ながん対策の推進が必要なため、がんセンターの一層の機能強化に加え、都道府県がん診療拠点病院として必要な取り組みの充実を図ってまいりたいと考えている。

石井秀武委員

常に今ある課題をしっかり認識していただき、さらにがん医療に純化した病院として、その機能を発揮されることを期待している。
次に、がん連携拠点病院の中核施設としての役割についてお尋ねする。
がん診療の均てん化を図るため、現在10圏域で13の医療機関が地域がん診療連携拠点病院に指定され、また、がんセンターは、都道府県がん診療連携拠点病院にも指定されている。
地域がん診療拠点病院には、専門的ながん医療に携わる医療従事者を配置し、我が国に多い肺がん、胃がん、肝がん、大腸がん及び乳がんの集学的治療や標準的治療等の実施、緩和医療の提供、クリティカル・パスの整備等、がんの診療機能や医療連携機能の強化拡充や、院内外の患者、家族、地域の医療機関等からの医療相談への対応、地域の医療従事者に対する教育・研修の実施などが求められている。
さらに、都道府県がん診療拠点病院でもあるがんセンターには、それらに加え、県の中心的ながん医療機能を担うため、地域がん診療連携拠点病院等の医師、薬剤師、看護師等を対象とした研修の実施、地域がん拠点病院等に対する情報提供、県内の医療機関の間でのがん診療に係る各種情報の共有を行うための都道府県がん診療連携協議会の設置・運営などが求められている。
先日、健康福祉部より、地域がん診療連携拠点病院の現状、課題は伺っているので、「兵庫県がん対策推進計画」における基本理念の一つである質の高い医療体制の確保に向けた地域がん診療連携拠点病院に対する研修や情報提供の実施状況と今後の取り組みについてお伺いする。

黒田病院事業管理者

都道府県がん診療拠点病院でもあるがんセンターは、一つには、地域がん診療連携拠点病院等に対するがん診療の質の向上、二つには、がん診療の連携協力体制の構築に関する中心的な役割を担う、この二つの役割が課せられているところである。
具体的には、がんセンター及びがんセンターを除く12の地域がん診療拠点病院や医師会等の医療関係団体等で構成する兵庫県がん診療連携協議会を設置し、この協議会が中心となり、一つ目のがん診療の質の向上の面においては、外来化学療法や放射線治療、胃がんの標準治療、緩和ケア推進等に関するセミナーを行い、県内のがん診療水準の充実強化を図ってきたほか、がん医療における質の高い看護師の養成を目的としたがん看護実務研修等を実施してきたところである。
また、二つ目の情報提供や相談支援などの地域連携体制の構築については、同協議会での情報提供を行うほか、がん登録や相談支援事業に関するセミナーを開催し、その推進を図っている。
今後は、肺がんなどの疾患別の治療に関する研修の充実を行うほか、抗がん剤治療等の専門医の養成や、がん放射線療法看護師の技術向上を図るための研修の実施とともに、ホームページ等による情報提供の充実を図ってまいりたいと考えている。
このような取り組みを通じて、県内のがん医療機関の連携の推進を図るともに、都道府県がん診療拠点病院としてふさわしい役割に応じた質の高いがん医療の確保を図って、「兵庫県がん対策推進計画」の確実な実現に寄与してまいりたいと、このように考えている。

石井秀武委員

次に、3年前の決算特別委員会のときの質問に関連して、その後のフォロー状況を確認するため、以下2問質問させていただく。
まず、腫瘍内科の運営状況と効果についてお尋ねする。
がん治療というと、日本ではどうしても外科医中心、つまり手術が中心というところがまだまだあるが、米国では抗がん剤の専門家であり、すべてのがんを横断的に診てがん治療をコーディネートする腫瘍内科医が、がん医療の中心を担い、その質の向上に貢献していると聞いている。
日本においても、近年のがん薬物療法の進歩の結果、薬物療法を中心に、臓器横断的に各種悪性腫瘍の診療を行う抗悪性腫瘍薬に精通した腫瘍内科医の必要性が高まっていることから、私は、平成16年度決算特別委員会において、腫瘍内科の設置など成人病センターの診療機能の充実について質問をさせていただいた。
そして、当時の後藤病院事業管理者に、「抗がん剤治療に精通した専門医を確保して腫瘍内科を院内標榜した。今後、診療各課との連携を深め、副作用にも配慮した効果的ながん治療が行えるよう一層充実していく」とのご答弁をいただいたのを覚えている。
日本では、腫瘍内科を設置している病院は全国的にもまだ少ないのが現状であるが、がんセンターでは、がんの予防及び専門的な治療を行うという設置目的を実践すべく、平成17年から先進的に腫瘍内科を設置し、運営されており、がん治療の質の向上に貢献されることを期待しているところである。
そこで、現在がんセンターに設置された腫瘍内科は、どのように運営され、どのような効果を出しているのか、お尋ねする。

太田病院事業副管理者

今ご指摘のあったがんセンターの腫瘍内科については、近年のがんに対する化学療法の進歩を背景として、抗がん剤を中心に臓器横断的に悪性腫瘍の治療を行うという必要性が高まる中で、17年4月に院内標榜として設置した。
その具体的な治療方法であるが、現在は、専門家2名の腫瘍内科医師が、消化器、呼吸器、乳腺などの悪性腫瘍に対しては、関連の外科であるとか、内科、放射線科と連携をして、高度で専門的な集学的治療を行っている。
それから、骨軟部肉腫というような手術が困難な悪性腫瘍に対しては、基本的には、腫瘍内科が抗がん剤中心の治療を行っている。
それから、がんの治療については、患者さんの生活の質(QOL)というのが非常に配慮するということが重要であるので、外来の化学療法に積極的に取り組んでおり、平成19年度には、外来化学療法室を18床から25床に拡充し、先ほど言った腫瘍内科医師が、安全かつ効果的な治療を行うために適切な管理運営を行っている。
こうした取り組みにより、抗がん剤治療の件数は年々増加をした。また、腫瘍内科が中心となって悪性腫瘍に対する新しい薬剤の開発治験等にも積極的に取り組むなど、がん治療の質の向上に対して一定の成果を上げていると考えている。

石井秀武委員

抗がん剤治療件数が増加し、新規薬剤の開発治験にも取り組まれるなど、腫瘍内科の成果は出てきているようで安心した。引き続き、よろしくお願いする。
続いて、医薬分業についてお尋ねする。
薬の購入が病院の支出面に与える影響は大きいものがある。医薬分業を推進すれば、病院側は経営的にメリットがあり、患者さんにとっても薬剤の過剰投与が抑えられ、多剤投与による重複、副作用が回避されるなど薬害防止にもつながり、より良質の医療を提供するという観点からも重要であると考える。
地域の医療ネットワークの重要な拠点となり、リーダー的役割を担う県立病院としては、他の病院を先導するためにも率先して進めていくべきであると考える。
がんセンターの医薬分業については、平成16年度決算特別委員会において、「地域における応需薬局の体制整備を働きかけるとともに、患者に対しても積極的に院外処方のメリットの周知を図り、徹底的に院外処方を推進していただきたい」と意見を述べさせていただいた。
そのときのご答弁は、「成人病センターにおいては、特定の薬剤についてのみの実施にとどまっている。専門的な希少薬品が多く、対応できる応需薬局が少ないこと、患者が県下各地から来院しており、取り扱いを必要とする薬品について、地域薬剤師会と調整が困難なことなどから、患者サイドに立って考えたとき、現在のところ院外処方の実施が困難な状況にある。
今後、患者に対して積極的に院外処方のメリットの周知を図るなどにより、院外処方の実施率を高めるとともに、専門病院も含め、その完全実施について検討してまいりたい」ということであった。
それから3年経過したが、現在がんセンターにおいては、まだ医薬分業を実施されていない状況である。医薬分業についてどのような検討状況、検討結果なのかお伺いする。

井上経営課長

がんセンターの医薬分業であるが、医薬分業については、薬剤の適正使用を推進して副作用を回避する、他の医療機関との重複投薬の防止など、良質な医療の提供につながることが期待されており、推進していくべきものと考えている。
その実施については、平成10年の尼崎病院を初めとして、柏原病院、塚口病院、淡路病院、加古川病院、こども病院の各病院において、また平成18年7月から西宮病院でも開始し、現在7病院で実施しているところであるが、がんセンターについては、まだ未実施となっている。
がんセンターについては、地元薬剤師会等と調整を重ねているが、依然専門的で高額な希少薬品が多くて、備蓄など十分な対応ができる保険薬局が依然少ないこと、二つ目には、保険薬局で迅速な対応ができなかった場合、患者サービスの低下を招く可能性があること、さらには、自分のがん疾患について病院外部で知られることにまだ抵抗感がある場合が想定されること、などの理由で実施には至っていない。
今後とも、これらの問題点を整理しながら、薬価差益などの経営収支面も考慮しつつ、医薬分業の実施について引き続き検討していきたいと考えている。

石井秀武委員

相変わらず問題が多いようで、医薬分業の導入が難しいのは理解できるが、良質な医療の提供、経営面の改善にもつながるので、引き続きご検討をよろしくお願いする。
次に、療養環境の整備についてお尋ねする。
患者さんの立場で見てみると、病院のイメージを左右するものとして、医療の質と療養環境の整備の2点が挙げられると思う。
がんセンターは20もの診療科を設置しており、平成18年度の診療実績は、全身麻酔手術件数が2,021例で、消化器、呼吸器、婦人科、皮膚科、乳腺科、整形外科、泌尿器科、脳神経外科などの領域で全国有数の手術数となっている。血液内科の症例も多く、骨髄移植の推進財団の国際認定施設にもなっている。
また、平成17年度から腫瘍内科、緩和医療科を設置しているほか、検査・治療部門も充実し、PET-CTを含む各種放射線診断、治療設備などが整備されている。
最近の医療等を取り扱った情報雑誌の各種ランキングを見ても、がんセンターは常に上位に評価されており、医療の質に関しては申し分ないように感じる。
しかし、療養環境の整備という点ではどうか。私は、がんセンターはいささか暗いのではないかという印象を持っている。より快適な療養環境を提供することは、治療効果を向上させることにもつながるのではないか。
当然、患者さんにとって一番大事なのは、確実な診断、よい治療をしてもらって、できるだけ早く社会復帰をするということであろうが、病院は患者さんにとって1日のほとんどを過ごす生活の場であり、豊かさや快適さを感じさせる質の高い生活空間を確保することが求められる。
特に、がんセンターの患者さんは、がんという死亡要因1位の病気にかかっており、患者の心にゆとりと潤いを与え、くつろげる空間をふやす療養環境の整備が必要であると考えるが、ご所見をお伺いする。

中島企画課長

今日の医療においては、患者の立場に立った施設整備あるいは病院運営が求められる時代となってきており、患者の豊かさ、あるいは快適さへのニーズの高まり、これに対応する必要があると考えているところである。
こうした観点から、がんセンターにおいては、院内に患者サービス向上委員会というものを設置し、よりよい患者サービスに努めているところである。
療養環境の整備については、具体的には昨年度から、要望の多いトイレであるとか、病室内の洗面台の改修に取り組んでいる。さらには、今年度は、わかりにくくなっていた院内各部門の配置状況について、ブロックごとに分け、色の表示を行うとか、番号づけを行うとともに、看板表示を統一するなど、院内サインの全面改修も行ったところである。
また、2階の屋上については、季節感あるいは潤い感のあるオアシス空間として、「五感で癒される庭」と名づけた屋上庭園を設置するなど、院内生活のストレスをできるだけ解消するという施設も設けているところである。
さらには、寄贈いただいたピアノを活用して、朝夕の一定時間ではあるが、自動演奏による音楽を流している。さらには、ボランティアの協力を得て、季節に応じた院内コンサートを実施するなど、ソフト面での取り組みにも留意を図っているところである。
以上のような取り組みを進めているが、患者ニーズにこたえ、よりよい療養環境をつくるために、さらに努力をしてまいりたいと考えている。

石井秀武委員

最後の質問になったが、単年度黒字に向けた今後の取り組みについてお尋ねする。
がんセンターの平成19年度の決算状況と平成18年度の決算状況を比較すると、入院患者数は1,282人増加し、外来患者数も3,296人増加している。また、病床利用率も0.7ポイント上昇し、先ほどの小西委員からの質問のご答弁にもあったが、純利益は約5,000万円の赤字ではあるが、約5億3,800万円も改善されている。
これは、最初の質問に対する答弁にもあったが、がん連携拠点病院の中核施設の役割を担い、機能純化に伴い、がんセンターが積極的な経営改善に努められた結果であると認識している。
県立病院全体が多額の赤字を抱える中、健闘をしていると評価するところではあるが、単年度黒字まであと一歩という状況であり、もうひと踏ん張り経営努力を願いたいと思っている。
そこで、病院局として、どのような点を努力すれば、がんセンターは単年度黒字に転換できると考えておられるのか、ご所見をお伺いする。

西岡大学課長

がんセンターにおける平成19年度の経営改善の取り組みとしては、7対1看護基準の取得、地域医療連携の取り組みの紹介率の増、外科医や麻酔科医などの確保による手術件数の増などにより、前年度より5億3,800万円の収支改善を図ったものの、依然として当期純損益5,000万円の赤字である。
本県がんセンターの経営状況を、全国の都道府県立がん専門病院10病院あるが、それと比較すると、医業収支比率は上位3番目に位置しており、医業収支比率が最も高い新潟県立がんセンターと比較すると、病床利用率は大体90%で同等である、それと職員給与比率も55%で大体同等であるが、入院単価が、本県の場合が大体4万円に対して新潟県の場合が4万3,000円、それから、平均在院日数が、本県が20.9日に対し新潟県が14.6日ということになっており、この辺が課題ではないかと考えているところである。
こうしたことから、がんセンターにおいては、本年度4月から、外来化学療法用ベッドの増床、18床から25床ということで、入院患者の外来通院化や後送病院の確保による退院支援体制の強化を進め、平均在院日数の短縮による診療単価の向上をめざしている。
他方、病床利用率が低下し得ないよう地域医療連携の取り組みを強化して新規患者の増大に努め、平均在院日数の短縮化と病床利用率のバランスを図りつつ、経営改善を進めることをしている。
これらの取り組みにより、本県のがん医療の診療連携拠点病院としての役割を果たしながら、単年度黒字化を達成してまいりたいと、このように考えている次第である。

石井秀武委員

ぜひよろしくお願いする。
医療の面でも高く評価され、さらに経営内容がよいとなれば、先ほどの療養環境の整備に対しても胸を張って要望をし、きちんと整備していくことによって、さらに患者ニーズにこたえられるのではないかと思っている。
厳しい財政状況ではあるが、先ほどの答弁にあったような努力をしていただき、名実ともにがんセンターが県立病院の模範になるよう、しっかり取り組んでいただくことを期待して質問を終わる。