平成20年平成19年度決算特別委員会(福祉部)

石井秀武委員

 民主党・県民連合議員団の石井秀武である。早速質問に入らせていただく。

 まず、地域がん診療拠点病院の現状と課題についてお伺いする。

 がん診療の地域間の診療レベルの格差をなくし、質の高いがん医療を推進するため、昨年1月には、県立がんセンターを初め10の医療機関が「がん診療連携拠点病院」に指定され、本年2月には新たに3医療機関が指定された結果、現在、県立がんセンターを含む10圏域、13の医療機関ががん診療連携拠点病院に指定されている。
 がん診療拠点病院には、我が国に多い肺がん、胃がん、肝がん、大腸がん及び乳がんの早期診断・治療の提供や、地域の医療機関からの紹介患者の受け入れ及び緩和医療の提供、地域の医療従事者に対する教育・研修の実施、また緩和ケアチームの設置、相談支援体制の整備などの機能が求められている。
 我が会派では、来年度予算編成に対する重要政策提言申し入れにおいても、一貫してがん対策を重要な課題として位置づけており、がん診療の連携が図られることにより、県全体のがん医療の質の向上が図られることを期待しているところである。
 そこで、がん診療連携拠点病院が指定されてほぼ2年が経過しようとしており、平成19年度主要施策の成果及び基金運用状況説明書にも「がん診療連携拠点病院の整備」がうたわれているが、どのように円滑な連携、体制整備を図ってきたのか、またどのような課題が出てきているのか、お伺いする。

細川健康福祉部長

がん診療連携拠点病院における全県での取り組みとして、この連携拠点病院の院長、県行政等で構成する「がん診療連携協議会」において、
一つ目として研修・教育、二つ目として情報・連携、三つ目としてがん登録、四つ目として緩和医療、この四つの部会をそのもとに設置した。
それぞれの部会活動を行うことにより、円滑な連携体制を図っているところである。
 まず、研修・教育部会及び緩和医療部会については、がん治療に携わる医療従事者の養成を行う研修会の開催などに取り組んでおり、今後はこの研修内容の充実を図ることが課題だというふうに認識している。
 続いて、情報・連携部会では、がん相談支援センターの相談事例等について全県的な情報交換を行っている。今後は、一部では既に県下でも検討が始まっているが、地域連携クリティカルパスの整備に向けた検討を行うことが課題であると認識している。
 また、がん登録部会においては、院内がん登録を推進するための研修を実施しているが、今後はこの収集したデータを集計したり、あるいは分析することが課題であると認識している。
 これらの課題を各部会で解決することにより、全県を対象として設置しているがん診療連携協議会を通じて、がん診療連携拠点病院間の円滑な連携体制の整備を図って、本県のがん医療の質の向上に努めてまいりたいというふうに考えている。

石井秀武委員

現状と課題を十分に把握していただき、今後の県の施策に反映していっていただくようお願いする。
 先日の新聞報道で、がん治療の中核となる全国351ヵ所のがん診療連携拠点病院を対象に、放射線療法や抗がん剤治療を専門とする医師や専門職の配置状況、基準の達成見直しなどを調査した結果、61%に当たる214病院から回答を得て、27%に当たる59病院が「非常に難しい」、「難しい」とし、達成が難しい理由で最も多かったのは、がん専門医らの不足ということであった。また、専任の医師や看護師でつくる緩和ケアチームは、現在でも4割に当たる82病院にはチームがないと書かれていた。
 それぞれの病院で何人の専門医が必要なのかの判断は簡単にはわからないことから、この報道をそのまま鵜呑みにすることはできないが、専門医を初め人材の確保は重要なポイントである。
 また、国は4月から指定要件を見直し、専任の放射線治療医がいることや、緩和ケア外来を設置していることなどを追加した。現在の拠点病院も来年度から新しい要件に基づいて更新審査を受けることになるが、当初の指定の際には国の指定がおくれ、県民に不安を与えたのは記憶に新しいところであり、新要件においては県民に不安を与えることがないよう取り組む必要がある。
 そこで、本県のがん診療連携拠点病院における放射線治療専門医の育成・確保など、更新審査に向けた取り組みはなされているのか、お伺いする。

鷲見疾病対策課長

専門医の確保等については、がん診療連携拠点病院の新たな指定要件を具備するだけではなく、「兵庫県がん対策推進計画」に掲げている「質の高いがん医療体制の確保」を図る観点からも、重要な課題であると認識している。
 このため、本県においては、がん診療連携拠点病院長及び兵庫県等で構成される「がん診療連携協議会」主催の化学療法や放射線治療、緩和ケア等の研修を通じて、臨床現場でのレベルアップを図るとともに、神戸大学、兵庫医科大学、兵庫県立大学及び神戸市看護大学において、放射線腫瘍専門医やがん薬物療法専門医の養成等を行う「がんプロフェッショナル養成プラン」を推進しているところである。
 これらのことを通じて、専門的な知識・技能を有する医師等を育成するとともに、新指定要件を各拠点病院に周知し、必要に応じて個別に病院の指導を行うなど、更新に向けての取り組みを行っているところである。

石井秀武委員

引き続きよろしくお願いしたい。
 この10月は、ご案内のとおり乳がん月間であるが、乳がんは女性のかかるがんのうち第2位ということで、日本では女性の30人に1人が乳がんになるとも言われているが、最近では20から23人に1人というデータもあるようである。
 先日の新聞によると、県立がんセンターの治療5年後の生存率は、胃がん74.9%、肺がん38.5%、乳がん92.5%などとなっており、特に乳がんは早期に発見し、治療を行えば治せる確率が高く、早期発見・早期治療の必要性を改めて認識したところである。
 早期発見・早期治療を推進するには、乳がん検診の受診率の向上を図ることが必要である。県内すべての市町において、マンモグラフィ検診など何らかの方法で乳がん検診を実施しているところであるが、厚生労働省の「地域保健・老人保健事業報告」の平成15年から18年の乳がん検診受診率の推移を見ると、兵庫県は全国平均を大きく下回っている。市町がん検診の対象には、企業等に従事している者が対象外となっており、県全体の真の数値はわからないが、乳がん検診受診率向上に向けた対策の強化が必要と考える。
 特に本年度からは特定健診に移行されたが、基本健康診査は全国平均と同じ受診率であることから、特定健診とがん検診のセット検診はがん検診受診率向上に有効であり、一層の推進を求めるものである。また、乳がんになりやすい方の傾向も分析されているようなので、そのようなことについても県民に広く広報していだきたいと思っている。
 また、マンモグラフィによる乳がん検診は、国が2000年に通達を出して以降、本格的に普及し始めたばかりで、医師や技師の知識、技術に開きがあることから、早期発見にはマンモグラフィ検診に従事する医師、技師の資質向上等も重要となる。
 そこで、乳がん検診受診率向上やマンモグラフィに従事する医師、技師の資質の向上に向けどのような対策を講じてこられたのか、また今後広報も含めてどのように取り組まれるのか、お伺いする。

鷲見疾病対策課長

マンモグラフィによる乳がん検診については、乳がん死亡率を減らす観点から有効であることは科学的に確認されていることから、マンモグラフィによる検診を進めることが必要と考えている。
 このため、受診率向上については、「女性がん検診普及啓発講演会」の開催、これは平成17年から19年度にかけて県下23ヵ所で開催しており、延べ約850人に参加いただいている。また、国保調整交付金による市町取り組み支援等を実施し、またマンモグラフィ検診の質の確保を図るため、読影医師及び撮影技師の講習会の開催、これは平成17年度から19年度にかけて読影医師245名、撮影技師100名の受講をいただいている。こういった対策を講じてきたところである。
 今後は、これらの取り組みに加えて、がん検診の受診率が低い市町へ「がん検診受診率向上計画の策定」を促し、取り組みを強化すること、また保険者の特定健診とあわせたセット検診の実施促進を図り、さらにはピンクリボン運動や県医師会、市町がん対策推進員を通じた広報の充実も、ご指摘の点も含めて図ることにより受診率の向上に努めてまいりたいと考えている。

石井秀武委員

早期発見・早期治療によって多くの方が助かっているわけだから、残された家族等を悲しませることのないよう、広報活動はもとより、まずは受診してもらう。そのためにも検診・受診しやすい環境整備に努めていただきたいと思っているので、どうかよろしくお願いしたい。
 次に、民生委員・児童委員について、まず委員の確保についてお尋ねする。
 民生委員・児童委員は、知事の推薦によって厚生労働大臣から委嘱され、担当地区において住民の立場に立った相談・援助を行い、福祉事務所等の業務に協力するほか、地域住民の実態把握や、地域で自立した生活が送れるよう必要な援助、情報提供を行っている。
 また、児童等への福祉相談、援助活動への期待の高まりを背景に、平成6年から児童問題を専門に扱う主任児童委員が創設されるなど、地域の奉仕者であり、地域において重要な役割を担う方であると認識しており、その奉仕の精神にあふれた活動には敬意を表するところである。
 そこで、今回は民生・児童委員の確保についてお尋ねする。
 本県の選任要件では、新任・再任とも75歳未満まで可能としていることから、かなり高齢の方も選任されているのが現状である。それでも民生委員・児童委員が定数を割っている地区があり、本年8月1日現在、県所管の民生委員・児童委員の定数は5,967人であるが、選任されている方は5,913人となっており、充足率は99.1%で、54人の欠員が出ている状況である。県の所管外ではあるが、例えば神戸市は充足率96.9%で、80人の欠員が出ている。特に都市部やニュータウン、マンションといったところで欠員が目立っており、一方でこれらの振興住宅街でも高齢化は進展しており、福祉のニーズは高まっている。
 地域社会全体の課題に対応していくためには、早期の定数充足が求められるところであるが、定数割れの現状となっている民生委員をどう確保するのか、ご所見をお尋ねする。

北村社会援護課長

民生委員・児童委員の確保・選任に当たっては、人格・見識ともに高く、社会福祉への理解と熱意に加え、知識と技術があり、地域の実情にも詳しい方が求められている。
 委員ご指摘のとおり、尼崎市、宝塚市、三田市、川西市などの大都市部を中心に、8月現在で54名の欠員となっている。これは、昨年12月に民生委員・児童委員の一斉改選を行った際、宅地開発や集合住宅の整備等による世帯の増加や、活動の円滑化のための担当区域の見直しなどにより、定数を全体で63名増加させたところであるが、これが現時点においてもこの増加分を埋め切れていないという状況である。
 都市化や高齢化の進展、対応すべきケースの増加、複雑化など、民生委員・児童委員の活動を必要とする地域福祉のニーズが高まっている中で、特にこれらの都市部においては、民生委員・児童委員にふさわしい人材の確保が課題となっている。
 このため、市町や地域自治会等においても粘り強く人材の確保、発掘に取り組んでいただいているところであり、この間も欠員は補充されているところである。県としても、引き続き委員候補者の推薦を行う市町への指導、助言を強めていきたいと思っている。

石井秀武委員

よろしくお願いする。
 次に、委員の質の向上についてお尋ねする。
 民生委員・児童委員には、民生委員法にもあるように、社会的な支援が必要と考えられる人に対し、相談・援助を行う「社会奉仕の精神」、私生活に立ち入ることが多いため、知り得た秘密はかたく守り、人種、信条、性別などによる差別をしない「基本的人権の尊重」、その地位を政治的目的に利用しない「職務上の地位の政治的中立」が求められている。
 ご案内のとおり、先ほどもあったが、3年ごとに改選を行っているが、昨年12月の一斉改選では、3分の1以上が新任者となったこと、すなわち3分の1の経験者が定年等何らかの理由で抜けたこと、また私の聞くところでは、中には十分な役割を果たせていない人もいるようであるが、社会がますます複雑・多様化する中、民生委員・児童委員の役割は大きくなっており、民生委員・児童委員のその質の維持・向上を図る必要があると考える。
 現在、新任研修を初め各種研修を実施されていると聞いているが、研修の実施状況はどうなっているのか。また、過去には県民に誤解を与えるような報道もあったが、その後の研修のあり方と今後の民生委員・児童委員の質の維持・向上にどのように取り組んでいかれるのか、お尋ねする。

北村社会援護課長

民生委員・児童委員が住民の立場でさまざまな相談に応じ、必要な援助を行うという地域での責務を果たしていくためには、選任に当たっての選考とともに、委嘱後の資質の向上も不可欠と考えており、各種研修を県の民生委員児童委員連合会と連携して実施しているところである。
 委嘱後のすべての新任者を対象にした新任研修や、再任の委員を対象にした中堅研修、あるいは事例研修を中心とした研修総会、また主任児童委員研修など、体系的な研修に参加をいただいているほか、市町においても独自の研修や定例会を開催し、情報交換あるいは具体的なケース検討なども行っている。
 今後とも、児童虐待あるいは高齢者の見守り、災害時の要援護活動など複雑・多様化する地域の福祉課題に対し、民生委員・児童委員が的確に対応できるよう、各種の研修を実施していきたいと考えている。
 なお、遠方での研修については、他地域の先進事例を学び、相互の経験交流を通じて研さんを深めていくということも資質向上には重要と考えている。県としては、県民に誤解が生じないよう、これらの研修の趣旨、目的に照らして、プログラム内容が適切、かつ効果的に実施されるよう指導しているところである。

石井秀武委員

民生・児童委員は地域の奉仕者であり、地域社会を支えるまさにかなめであり、奉仕の精神あふれる強い使命感を持った人員の確保はもとより、複雑・多様化する社会に即応できる委員の質の維持・向上に引き続き関心を持ちながら取り組んでいただきたいと思っているので、どうかよろしくお願いしたい。
 最後の質問は、グリーンピア三木の運営状況についてである。
 グリーンピア三木については、国から県へ施設譲渡の話があった際に、近隣に多くの類似施設がある中、あえて県が取得することに疑念を持ち、平成17年度予算特別委員会でも質問させていただいたのを記憶している。
 平成17年に県は国から購入し、それを民間へ10年間の貸し付けを行っている。私の地元、神戸市西区に隣接しており、利用もさせていただいているが、民間運営となってから3年目を迎え、自然に囲まれ、スポーツ施設に宿泊施設、天然温泉などが備わった健康増進施設として多くの県民等に利用されており、今後も自然に囲まれた健康増進施設として広く県民に開放された施設にしていっていただきたいと考えている。
 そこで、平成17年12月に、県がグリーンピア三木を取得して以降、利用状況を含めた運営状況をどのように評価しているのか、お尋ねする。

久保福祉参事兼企画少子局長

施設の利用者数であるが、団体利用の減少等により、平成16年度約37万人、平成17年度約33万人と減少してきていたところであるが、譲渡を受けてからの利用であるが、平成18年度約34万人、平成19年度は37万人と持ち直してきているところである。
 グリーンピア三木の運営についてであるが、平成17年12月に県が当該施設を取得後、民間企業に貸し付けを行い、民間企業においてさまざまな工夫を凝らした運営が行われているところである。
 具体的には、一つとして花火大会や料理フェアなどのイベントの積極的な開催、二つ目としてセグウェイ、ユーロバンジートランポリン等の新アトラクションの導入、三つ目としては温泉とレストラン、遊戯施設等を組み合わせたパック商品の販売、4点目としてぶどう園、いちご園、牧場等の地元観光資源を活用した宿泊プランの販売、5点目として入場料の無料化、あるいは駐車場のキャッシュバック制度、これは2,000円以上の消費をした場合には駐車場が無料になるという制度である。こういった導入など、いろいろな取り組みがなされてきたところである。
 平成18年度以降の利用者の増加については、これら民間運営による魅力ある施設づくりが評価されたものと考えており、一定の成果があったものと認識をいたしているところである。

石井秀武委員

民間運営ということで、しっかり運営がされているようであるが、さらなる県民の健康増進に寄与する施設として、今後も広く県民に利用されることを期待している。
 一方、新行革の後半には貸付期間が終了となるので、運営の継続・終了といった問題が生じ、運営が継続された場合、建物が古くなることから、大規模修繕等の問題も発生するのではないかと思われるが、そのことが県の重荷にならないようにすること。10年間預けっぱなしというのではなく、グリーンピア三木の現状を常にチェックしておくべきであると思われるし、昨今の経済情勢等も勘案しながら、多額の税金を投入して購入した施設の運営を任せている民間会社の経営内容等もしっかり把握しておくべきであるのではないかということを申し添えて、質問を終わる。どうもありがとうございます。