平成20年平成19年度決算特別委員会(財政状況について)

石井秀武委員

早速質問に入る。
 まず、県税収入の見積もりについてである。
 19年度の予算執行においては620億円もの歳入欠陥が発生し、その内訳等については何度も説明を受けたが、まだ少し理解ができていないのでお尋ねする。
 企業業績の悪化等で税収が伸びなかったというのは理解できたが、そもそも当初予算における歳入、とりわけ県税収入についてはどのように見積もっていたのか。予算書と決算書を比較してみると、特に法人二税についての差額が金額的には一番大きく、法人二税については平成17年度当初予算では対前年度当初予算比127.5%、18年度当初は対前年度当初予算比117.5%と大きな伸びを見込んでおり、19年度の当初予算編成においては、引き続き好調な企業業績を反映して、法人関係税で増加が見込まれるとして、地方財政計画の伸び率117.8%に対して、18年度当初予算比で124.6%と大変強気な金額を計上されていたが、まずこの伸び率124.6%という収入額は、どのような根拠から算出されたものなのか、わかりやすくご説明を願いたい。

西上税務課長

まず、19年度当初予算算定時における当時の経済情勢をご説明する。
 まず1点は、法人関係税について、過去3ヵ年間、対前年度で見ると2割以上、20%以上の伸び率を示していた。例えば、16年度は121.8%、17年度は120.0%、18年度は121.3%と非常に高い伸びを示していた。また、上場企業の19年3月期の業績については過去最高の見通しとなるなど、企業業績は引き続き好調と見込まれていたところである。もう1点は、ご紹介にあった地方財政計画の法人関係税の伸び率が、18年度当初で見ると117.8%、決算で見ると113.5%と非常に高い率であった。
 このような状況を踏まえ、本県としては具体的には18年度の決算見込み額をベースとして算定を行ったところである。
 特に、税収に大きな影響を与える県内の主要企業については申告額をそれぞれの企業業績見込みをもとに個別に算定をして積み上げている。また、その他の法人については、各業種ごとの景気動向等を踏まえ算定を行い、それぞれを最終的には足した。その結果、総額では2,408億円という見込みを立てたところである。
 この数字は、18年度当初予算比では確かに124.6%となるが、本県の18年度決算見込みとの比較では108.6%になる。したがって、決算見込みから見ると、国全体の伸び、全国の伸びからは下回る見込みをしたところであるので、当時はそれなりに慎重に数字としては見込んだものである。

石井秀武委員

今回、府県税の状況について、兵庫県と財政規模が類似している埼玉、千葉、神奈川、静岡、愛知、京都、大阪、広島の6府県と比較したが、税収総額について、決算額が当初予算よりも下回ったのは、本県のほかは埼玉、大阪、広島の3府県で、増減率で見ると、本県がマイナス3.9%でワースト1位である。特に、本県において予算額との差が大きい税目は、法人二税マイナス8.5%、不動産取得税マイナス10.2%、自動車取得税マイナス16.7%と、いずれも主要な税目で、これらの税目の増減率もそれぞれ類似府県の中でワースト1位となっている。各府県の税目ごとの決算状況を見ると、予算額との差額はプラス・マイナスさまざまで、税収の見積もりというのは簡単なものではないことはわかるが、それでも不可解なのは、主要な税目のいずれもが兵庫県が増減率ワースト1位となるのはなぜだということである。そこで、再度、19年度の税収の見積もりについて、どのように評価、分析されているのか、お尋ねする。

西上税務課長

ご指摘を受けた19年度税収見積もりであるが、先ほどもあったが特に法人関係税が200億から超える大幅な減収となったことであるので、法人関係税をいかに見積もっていくかがひとつ重要になるのではないかと考えている。
 当初予算との大きな乖離が生じた原因については、先ほど筒井委員にもご答弁した、経常収益にあらわれないが、税収に大きな影響を与える特別損失とか繰越欠損金、これらを十分に把握することに加えて、最近、県税収入に与える影響が大きい県内の主要法人に対してはアンケートを行っていると申し上げたが、これについて、本県の産業構造の変化に伴い、その主要な企業が若干変わってきている。そういうところについても見直しを今回しなければならないのではないかということである。
 20年度において、主要な企業の見直しを行ったところであり、315社を新たに選定している。この産業構造の変化というのは、例えば製造業のウエートというのは平成15年ぐらいには若干下回っていたが、最近は、化学、鉄鋼、電機のような分野で、そういうような企業のウエートが高まっているというような傾向。また、非製造業であればひところは建設が非常にウエートが高かったが、最近はサービスとか小売、卸売というような分野が高くなっている。こういう形での変化があるので、それに見合った見積もりの仕方をしなければならないのかということで、そういうような見直しも行ったところである。
 しかしながら、当初予算算定時においては、年間を通じて景気動向を十分把握するのはなかなか難しくなっている。19年度も年度に入ってから、原油の高騰もあったし、原材料等の高騰などもあった。これらの状況が、企業業績を急激に悪化させているというようなこともある。また、20年1月には、サブプライムローンの問題から株式市況が非常に低迷したこともあり、証券の業績が非常に悪化しているという状況もある。
 最近の経済状況で見ますと、アメリカの金融不安というのが全世界にたちどころに広がるというような状況もあるので、なかなか経済情勢を十分把握するのは難しくなってきているところであるが、アンケートの見直しとか選定企業の見直しなど、でき得る限りそれらの状況を把握するなど、的確な税収見積もりに努めていきたいと思っている。

石井秀武委員

先ほどのご答弁にもあったが、現下の経済情勢は、アメリカ経済の影響等を受け、ますます見通しが厳しい局面にあるが、経済情勢がどうであろうとも、本県の財政を立て直さなければいけないことには変わりがなく、少なくともこの行革期間中は綱渡りの財政運営が強いられるわけで、税収の見積もりの精度を高める努力をさらに努めていただきたいと思っているので、よろしくお願いしたい。
 次の質問は、歳入欠陥に係る県民への説明についてである。
 歳入欠陥への対策として、一部の事業では実施の取りやめや繰り延べが行われたようであるが、先日の委員会の資料では、行政経費として47億円、投資的経費として66億円が収支不足対策として示されているが、まずはこの繰り延べ等の内容についてご説明を願いたい。

太田財政課長

先ほどのご質問にもあったが、19年度年度途中で大幅な歳入欠陥に陥るおそれが生じた。歳入面の対策とあわせて、年度後半に予定していた事業の繰り延べ等を行わざるを得なかった状況である。
 その内容は、まず行政経費47億円については、走る県民教室など下半期の計画事業量の2分の1程度を取りやめた。このほか、施策立案のための調査費の執行等を中止した。また、事務的経費について30%の節減を行ったところである。
 一方で、投資的経費66億円であるが、県単枠事業について、維持管理費等を除く当初配当保留分を全額執行保留するとともに、その他の投資単独事業についても、県施設の省エネ改修等の未執行分等の執行を保留したところである。
 さらに、19年度において予定していた工業技術センター、ものづくり大学校の県単独分、あわじ花さじきレストラン棟の施設整備、これらの設計を翌年度以降に繰り延べた。さらに、備品、修繕費についても20%の節減を行ったところである。

石井秀武委員

近年は、公会計についても決算が重要視されており、私も決算委員として心して審査に臨んでいるわけであるが、一般の県民や事業者にとっては、やはり予算というのは大きな意味を持っている。例えば、この道路が今年度中に整備されるということが示されただけで、日常生活に安心感を抱いたり、こういう支援制度ができるなら、それを活用して新たな事業に取り組もうと希望を持ったりするものである。
 ところが、予定していた事業を中止や繰り延べにするというのは、これら県民の期待を裏切ることであり、県民生活に大きな影響を与えるものである。この歳入欠陥による事業の繰り延べ等は、効果的には投資事業で言えば66億円で、投資事業全体から見ればわずかなものであるかもしれないが、当時は県単独事業を中心に、多くの事務事業で執行保留がかけられ、それにかかわる多くの県民が大変困惑したのは事実である。
 歳入欠陥の要因は、県税の減収や国が起債を許可しなかったことなど、外的要因によるもののような説明も受けたが、このような説明が果たして県民生活の現場ですんなりと受け入れられたのであろうか。昨年度の歳入欠陥とは関係ないが、例えば平成20年度の神戸県民局管内の県民交流広場事業にしても、補助金枠が圧縮され、地域の要望すべてに対応することはできないとの説明がなされ、申請を予定していた団体の方々を失望させたこともあった。結果的にはすべての申請が採択され、感謝しているが、現場では無用の混乱が生じてしまったのではないか。我々議員のもとにも、このような県民の方からの声が寄せられるなど、当局として現場でのこのような声をどのように認識されているのか。また、説明によって県民の理解を得ることができたと考えているのか、ご所見を伺いたい。

牧企画県民部長

歳入欠陥に係る県民への説明についてお答えする。
 先ほど財政課長からも答弁したとおり、昨年度は年度途中に大幅な歳入欠陥に陥るおそれが生じたことから、歳入歳出両面にわたり追加の収支不足対策を実施したところである。
 歳出面においては、事務的経費の節減強化にとどまらず、予定していた事業の中止、あるいは繰り延べにより対応したところである。
 ご指摘のとおり、事業の中止あるいは繰り延べにより、県民生活に支障が生じることは最小限に抑える必要があるということから、例えば投資事業については、維持修繕費については減額しないこととした。また、コストの縮減、入札残の活用により、地元市町を初め、地域の住民の方々への影響を最小限に抑えるように努めたところである。
 また、下半期計画事業量の2分の1程度を取りやめた走る県民教室についても、各県民局の方から、申請団体に対して執行保留、予算上の制約により、すべての要望におこたえすることは必ずしもできないという状況、抽せんを導入することになったこうした状況を十分説明して、理解を得るよう努めるとともに、抽せんについても公開で行って、公平性を確保したところである。
 いずれにしても、年度途中における歳入欠陥への対応として、事業中止、繰り延べを含む緊急対策を行わざるを得なかったということについては、県議会初め県民の皆様に申しわけないことであったと考えている。
 今後も税収を初めとして、収支を的確に見積もることはもとより、県財政の状況について県議会を初め、県民の皆さんに丁寧に説明することにより、一層の説明責任を果たしていきたいと考えている。

石井秀武委員

よろしくお願いする。関係する県民への説明責任を担っているのは、それぞれの事業の現場を預かる事務長であり、また職員である。財政当局として現場の苦労を十分認識していっていただきたい。
 次に、将来負担比率についてお伺いする。
 今回、自治体健全化法により、初めて将来負担比率という指標が示された。判断基準の400%を下回り、一定の健全性は確保したかのような感もあるが、本当にそうなのか。そもそも基準の400%という数字に健全性を担保するという根拠たるものがあるのか。私は財政の専門家ではないので、詳しいことは承知していないが、率直な感想としてそう感じた。
 そして、もう一つここでも震災関連を除くという表現が用いられている点である。この表記についてはいささか違和感を覚えており、将来負担比率の判断基準において、自然災害によるものは別扱いにするという規定でもあるのだろうか。また、震災関連県債実残高約9,400億円の中には、単なる純粋な復旧事業と、いわゆる創造的復興の部分があると承知しているが、その割合はどれくらいなのか。
 そこで、まず震災関連の県債実残高約9,400億円のうち、復旧事業分としては幾らなのか、また復旧事業分のみを除いた場合、将来負担比率は幾らなのか、ご答弁を願いたい。

古川財政企画参事

震災関連県債については、発行総額約1兆3,000億円のうち、公共施設災害復旧事業債といった災害復旧に係る起債の発行額は約2,000億円発行したところである。この震災復旧に係る県債の平成19年度における残高は約540億円となっているところである。
 この復旧事業に係る県債実残高を控除した場合の平成19年度の将来負担比率は355.4%となり、震災関連事業債を含めた将来負担比率361.7%からは、6.3ポイントの減となるところである。
 なお、この355.4%のうち県債の実残高の占める割合は252.7%となっているところである。

石井秀武委員

大変高い数字である。どうしても震災の影響分を表記するのであれば、純粋な復旧事業分のみを区分して表記すべきではないかというのが私の質問の趣旨であり、こういった表記では、うがった見方をすれば、負債を小さく見せようとしているのではないかと疑われるのではないかとも思うし、純粋な復旧事業分のみを区分して表記する方が、県民に対してわかりやすい説明になるのではないか。受け手の立場から再考していただければと思い質問をさせていただいた。
 次に、将来負担比率に関する質問の2点目は、土地開発公社の先行取得用地についてである。
 今回示された将来負担比率の中で、土地開発公社の債務について、兵庫県が保証契約をしている当該保証額88億円が算入されているが、まず、この保証契約に係る土地の概要についてご説明を願いたい。

藤木用地課長

県は、公共事業の円滑な推進及び乱開発を防止し、地域の秩序ある整備を図るための必要な土地について、土地開発公社を活用して先行取得を行っているところである。そのため、県は土地開発公社が先行取得に要する資金調達を円滑に行えるよう、平成3年度から議会の議決を経た上で債務保証を行っている。その結果、平成19年度末時点の土地開発公社の借入金に対して県が債務保証している土地は1,096ヘクタール、債務保証残額は1,061億円である。
 その内訳の主なものとしては、道路、河川、公園、学校等の公共事業用地が113ヘクタール、419億円、乱開発防止を目的とした先行取得用地が983ヘクタール、420億円となっている。
 なお、88億円については、公社の自身の債務から県が債務保証している土地、あるいは自主事業用地等を引いた残りが差し引きした残となっており、主なものとしては、その残の発生は、公社の自主事業用地が簿価価格に比べて時価が下がっているという感覚から出たものである。

石井秀武委員

先般の行革委員会の質疑においても、公社による土地の先行取得は、先ほども乱開発を防いできたとの答弁もあったが、高度経済成長期やバブル期のころの開発圧力と、現在また今後のそれとは大きく様子が異なっていると思う。現に、地価についても相当下落しているのではないかと思うが、先行取得用地に係る開発圧力の現状についてどのように認識しているのか。地価の動向、いわゆる時価評価も含めてご説明願いたい。

田中地域担当課長

本県では、活発な高速道路網の整備と相まって、その周辺地域ではゴルフ場開発などの全国まれに見る強い開発圧力にさらされ、良好な地域環境の保全のため、乱開発を防止する対策が求められてきた。
 このため、山陽自動車道、近畿自動車道敦賀線周辺地域及び淡路地域の特定用地の先行取得要綱に基づき、無秩序な開発を防止し、将来の計画的な地域整備に備えるため、地元市町の要請も踏まえ、中長期的な視点に立ち先行取得用地の取得を行ってきた。
 しかし、最近の社会経済情勢や土地需給状況はバブル期と異なり、林地開発許可の状況を見てみると、ゴルフ場や住宅用地の造成などが大きく減少し、許可面積は最盛期の1割以下で推移している。また、地価調査の林地基準値平均価格は、平成4年以降下落を続けており、開発圧力は低下していると考えられる。
 先行取得用地は県民の要請、あるいは地域発展の動向等を的確にとらえながら活用すべき貴重な財産であることから、適切な利活用について慎重に検討していきたいと考えている。

石井秀武委員

新行革プランでは、先行取得用地を県が環境林として取得することとしており、決してこのことに反対するものではないが、現時点において具体的な用途が定まらない土地については民間への売却も選択肢としてあり得るのではないか。乱開発を防ぐということを考えるのであれば、例えば保安林に指定した上で売却するといった手法も考えられるのではないかと思う。そのような土地では、恐らく売価は簿価には到底及ばず、差損金が発生することにもなろうが、このことも前提として検討してはどうかと思っている。
 そこで、このアイデアについて実行困難であるという法令上の制約等はあるのか、また逆に、どのような状況、条件であれば、民間へ売却しようということになるのか、ご所見をお伺いしたい。

太田財政課長

先行取得用地についてであるが、先ほどから質疑の中で何度も出ているように、乱開発の抑制、良好な地域環境の形成ということが目的である。そのために、これまでは公共主導の地域整備構想の検討、あるいは里山林等の保有・管理を行ってきたところである。
 今後もこれらの土地について、長期的な視点を踏まえ、適切な利活用を検討することとしているが、現時点では直ちに利活用が見込めないので、環境林として県が取得して適切な管理を行うこととしたところである。
 したがって、そのような基本的な考え方に沿うものであれば、ご提案のような形も含めて、特に制約はないとは考えるが、利活用の一つの手法として民間売却というのは考えられるのではないかと思っている。

石井秀武委員

あとは要望になるが、先ほど民間売却ということも触れていただいた。今後、新行革プランを推進する中で、ぜひ前向きに検討していただきたいと思う。仮に、民間に売却するにしても、環境林として県が取得するにしても、先行取得用地に係る情報は適切に開示する必要があるのではないか、このことは行革委員会で我が会派の竹内議員も申し上げたところであるが、健全化判断比率の議会報告の際においても、県が保証した債務の内容、すなわち先行取得した土地の情報が資料として明示されなければ、単純に保証額は先ほどの88億と言われても、それで報告したことにはならないのではないかと思っている。
 将来負担比率を初め、健全化判断比率については、算出方法が専門的で、一般的にはわかりにくいものであり、今回の報告は監査委員による審査を経たものとのことであるが、限られた時間や人員での審査となれば、その審査もおのずと限界があるだろうし、我々議員や県民が比率の計算過程まで理解することは困難であっても、例えば土地開発公社に係る将来負担比率について言えば、最低でも県が保証契約している先行取得用地の情報などについては適切に開示すべきであり、将来負担額の大きい兵庫みどり公社が持つ森林資産の情報についてもそうであるが、今後は健全化判断比率報告の際の附属資料として示していただくことを強く要望し、質問を終わる。どうもありがとうございました。