平成21年度予算特別委員会(企画県民部①)

石井秀武委員

まず、県有地信託事業についてお伺いする。昭和61年5月の地方自治法改正により、公有地の信託が可能になったことから、本県においては民間のノウハウを生かし、県有地の有効活用を図るため、加西市青野町に保有していた約150ヘクタールの用地について、現在の三菱UFJ信託銀行の前身の東洋信託銀行及び住友信託銀行と、平成27年を期限とする土地信託契約を締結し、県有地信託事業を始めた。
 その後、両銀行が85億円を投じ、ゴルフ場やテニス場、宿泊施設を建設し、平成3年に青野運動公苑としてオープンしている。その青野運動公苑において、平成19年1月に、信託銀行側から一方的に借入金返済にみずから用立てた約78億8,000万円の支払いを求める訴訟が提起された。そして、去る2月26日、神戸地方裁判所において、三菱UFJ信託銀行及び住友信託銀行を原告、兵庫県を被告とする青野運動公苑土地信託事業にかかる立替金請求事件の判決言い渡しがあった。
 判決は、原告の請求は棄却、兵庫県勝訴となったが、まず、多くの県民が利用している施設の関係者同士が争った今回の訴訟の経緯についてお伺いする。

田中地域担当課長

青野運動公苑は、昭和62年に県と土地信託契約を締結した旧東洋信託銀行及び住友信託銀行が、県の託した土地に、契約に基づき資金を調達して施設を完成させ、平成3年のオープン以降、信託銀行の責任におき、管理・運営が行われているものである。
 こうした中、信託銀行は、施設の管理・運営に当たり、資金の借りかえが自行も含めできないことを理由に、建設等に係る債務返済資金と運転資金78億7,900万円を立てかえ返済し、これにつき旧信託法の補償請求権に基づき、平成18年4月20日付で県に支払いを請求してきた。
 県としては、信託契約により、信託銀行には資金調達義務があることなどから、県に対する請求は認められないという考え方で協議を重ねていたが、平成19年1月25日に、信託銀行は一方的に訴訟を提起してきた。
 訴訟において、県は信託契約に照らし、信託銀行には資金調達義務があること、県の負担は信託財産、すなわち土地の範囲内であること、信託銀行の善管注意義務違反、忠実義務違反の結果生じた損失であること、こうしたことから信託銀行の請求は認められないことを主張し、9回の口頭弁論と1回の証人尋問を経て、本年2月26日に神戸地方裁判所から信託銀行の請求を棄却する、県は新たな財政支出を伴う形で信託事務費用や信託残債務を負担することがない旨の判決を得た。

石井秀武委員

次に、今後の対応についてお伺いする。
 裁判は、新たな財政支出をして信託事務の費用や残債務を負担する必要はないとの判決であり、県としては最良の結果であったと思う。
 公有地信託をめぐり、自治体に信託財産以上の損失を負わせないとした判決は全国初であり、自治体の信託事業をめぐって各地で失敗が表面化し、損失をだれが負担するかが問題になっている中、意義ある判断が示されたと考えている。しかし、大阪市では複合娯楽施設フェスティバルゲートが破綻し、平成16年に民事調停で残債務360億円を信託銀行と同市が半分ずつ負担することが決まるという事例もあり、恐らく控訴されることが推察される中、まだまだ油断はできないものと考えている。
 一方、このような状況の中、青野運動公苑にある県民スポーツ・レクリエーション施設は、今なお多くの県民の方々が利用されているが、民間ゴルフ場の利用料金も安価になりつつあることを考慮すると、その経営面も危惧されるところである。青野運動公苑がさらに県民に幅広く利用されることが本来の目的であり、今後の対応については幾つかの選択肢が考えられると思うが、県民のことを第一義に考え、適切な判断をしていただきたいと考えている。
 そこで両銀行との信託契約期間は、平成27年11月末までとなっており、まだ6年弱あるわけであるが、当土地信託事業をどうしていくのか、今後の方針をお尋ねする。

塚本政策担当部長

県有地信託事業の今後の対応についてであるが、青野運動公苑は平成20年度も約7万4,000人の利用が見込まれている。平成3年の開設以来、スポーツ・レクリエーション施設として、トータルとして約150万人もの県民に親しまれている。中でも、今日、ゴルフは国体種目になるなど、広く一般に普及したということで、青野運動公苑は青少年から高齢者まで幅広い年齢層に利用され、生涯スポーツの場ともなっていると言えようかと思う。
 今回の判決を踏まえた信託銀行の対応ということとしては、判決を不服として控訴するのか否かということ、そして信託契約の解除を申し出るのか、あるいは期間満了まで事業を継続するのかなど、さまざまな動きが予想されるところである。
 この場合、考えられるケースとしては、県の負担は信託財産、すなわち土地の範囲内であるが、県が応分の負担をしてでも協議の上、財産権の引き渡しを受けるというケース、あるいは協議をする中で、信託銀行が適切な事業者に譲渡するといったようなケースなど、いろいろな場合が想定されようかと思う。
 いずれにしても、本件土地信託事業については、その運営状況とか、あるいは信託銀行の対応等々を見きわめながら、青野運動公苑が県民に親しまれてきたスポーツレクリエーション施設であるということを十分に踏まえて、適切に判断していきたいと考えている。

石井秀武委員

契約満了後には、土地もその施設も県に戻るわけであるから、その後は県が主体となって利活用に当たられると思うので、先を見据えた対応を今からしっかりとやっていっていただきたいと思っているので、どうかよろしくお願いする。
 次に、振り込め詐欺についてお伺いする。
 警視庁のまとめによると、全国の昨年1年間の振り込め詐欺事件は2万481件、被害総額約276億円となっており、平成19年の1万7,930件、約251億円から大きく増加している。そのような中、本件においても昨年は814件、約6億6,000万円の振り込め詐欺被害が発生しており、振り込め詐欺は、今や県民生活を脅かす重大な社会問題にまで発展している。
 また、投機的な取引に消費者を誘い込み、金銭をだまし取る事犯や粗悪な商品を訪問販売等の方法により高額で売りつける悪質商法事犯も、依然として後を絶たない状況である。最近では、地上デジタル放送受信対策センターの職員を装い、地上デジタル放送の受信工事や機材を販売する事件も発生していると聞いている。
 このような事犯を根絶し、被害をなくすためには、犯人の検挙はもちろんであるが、それとともに、被害に遭わないための対策が急務であると考える。兵庫県に被害が多いのは、阪神間の人は気のよい人が多いという印象があり、詐欺グループにねらわれやすいのではとの分析もあるが、いずれにしても、振り込め詐欺という犯罪は知っていても、実際の手口に対する認識度が低いためにだまされてしまう人が多いのではないかと推察するところである。まずは県民が十分に認識し、だまされないように注意することが重要である。
 県においては、これまでから消費者に向けた各種啓発などにより注意喚起に取り組み、昨年12月には県と県警、金融関係団体、地域活動団体等により振り込め詐欺撲滅宣言を調印するなど、安全で安心な兵庫の実現に向け、官民一体となって取り組んでいる。しかし、より効果を上げていくためには、県警を初め、市町、各種団体、マスコミ等と幅広く連携し、県民への注意喚起やその他必要な対策に取り組んでいく必要があると考えるが、知事部局の担当部局として、その決意のほどをお聞かせ願う。

石井県民文化局長

振り込め詐欺や高齢者をねらった悪質な訪問販売など、悪質商法による被害が相次いでおり、委員ご指摘のとおり、何よりも被害に遭わないための未然防止が重要であると認識をしているところである。
 このため、県下7ヵ所の生活科学センター等において相談に応じているとともに、新聞やホームページのほか、生活情報誌「Aらいふ」の発行や高齢者と直接かかわることの多い社会福祉協議会、あるいは老人クラブ連合会などへメールでの情報提供を行うとともに、民生児童委員や老人会等への出前講座を積極的に実施することにより、広く県民に注意喚起を促しているところである。
 また、地域における消費者リーダーとしての役割を担っていただいているくらしのクリエーターや自主防犯活動を担っているまちづくり防犯グループ等への情報提供を通じ、地域での見守り活動を強化するほか、消費者団体や警察等との合同による街頭キャンペーンや、委員お話があったように、昨年12月の振り込め詐欺撲滅宣言の調印など、振り込め詐欺を初めとした悪質商法の撲滅に向けた取り組みを進めているところである。
 今後も知事部局として、この宣言の趣旨を踏まえ、これらさまざまな取り組みをよりきめ細やかに実施していくとともに、特に警察等関係機関とも連携を一層強化して、被害の未然防止に積極的に取り組んでいく覚悟であることを申し上げさせていただき、知事部局としての決意表明とさせていただきたいと思う。今後ともご支援よろしくお願いする。

石井秀武委員

どうもありがとうございます。
 知事部局としていろんな施策を展開されていることはよくわかった。しかし、現下の厳しい経済状況の中では、手を変え、品を変え、さまざまな新手の詐欺めいた事犯が発生するおそれがある。気のよい人が多いという県民性がかえって詐欺グループにねらわれやすいとの指摘もあるので、被害に遭わせないように、水際でしっかり食いとめていただけるよう、県警初め、その他関係団体等と密に連携しながら、安全で安心な兵庫の実現に向けて、全庁を挙げて取り組んでいただくことを強く要望して質問を終わる。どうもありがとうございました。