第299回定例会(2月)討論

石井秀武議員

 私は、民主党・県民連合議員団を代表して、ただいま上程中の平成21年度当初予算、関連条例及び事件決議に係る第1号議案ないし第109号議案に対し、賛同する立場から討論を行います。

 アメリカを震源地とした世界規模の金融経済危機の影響を受け、我が国経済は内需外需ともに停滞し、極めて厳しい状況に陥っております。

中小企業の資金繰りの悪化に加え、これまで景気回復を牽引してきた大企業でさえも相次いで大幅な減産を行うなど、我が国経済は景気後退の度合いをますます強めております。

 また、生産調整が雇用調整を招き、2009年問題がクローズアップされている非正規雇用の解雇、派遣契約の更新拒否、新規学卒者の採用内定取り消しの増加等は、深刻な社会問題に発展しております。

 原油価格の高騰が一段落したのもつかの間、所得が伸びない中で、やりくりに苦しむ家計に追い打ちをかけるように失業不安が社会を覆い、
さらには、この影響が今後、医療・福祉、教育、治安といった国民、県民の日常生活の隅々にまで波及していくのではないかと危惧するところであります。

 私たちの会派では、このような厳しい経済・雇用情勢を踏まえつつ、今定例会に提案された各議案に対し、本会議、常任委員会、予算特別委員会における質疑・質問を通じ、慎重に審議を行ってまいりました。

また、新行革プランの策定時の会派意見に加え、昨年11月には、当初予算編成に対して204項目にわたる申し入れを行ったところです。

そこで、このような私たちの会派の主張や活動方針を踏まえ、以下、来年度当初予算案などに対し、県民の立場に立って、私たちの会派の意見を述べたいと思います。

 まず、真の分権型社会の構築と県民の参画と協働の推進の中から、行財政構造改革への取り組みについてであります。

 本県では、新たな行財政構造改革の推進に取り組み、昨年の9月定例会において新行革プランを議決・策定いたしましたが、前述したように非常に厳しい経済・雇用情勢の中、編成された当初予算案は、歳入面では、企業業績の悪化や株価の低迷、消費の低迷等によって、法人関係税、個人県民税、地方消費税、自動車取得税などの主な税目が軒並み前年度当初予算を下回り、県税収入の下げ幅は過去最大となっております。

このため、新行革プランの財政フレームに定められた財源対策を講じても、なお生じる145億円の収支不足について、行革推進債の追加発行、県債管理基金の追加取り崩しによる、特別な財源対策を強いられたところであります。

 しかし、平成22年度以降、毎年度財政収支対策を行うこととなる要調整額が、平成30年度までの合計で880億円生ずることとなり、今回、変更議案の提案がなされました。

新行革プラン実施に向けての大前提となる財政フレームについては、いかに厳しい内容になるとはいえ、持続可能なフレームの提示とするべきです。

将来的に修正を繰り返すようであっては、県民に対して財政健全化に向けての安心感を与えるものではありません。

 また、新行革プランの作成に当たり、私たちの会派は、県民の生命と生活に直結する医療・福祉、教育、治安等については、極力、行革の対象とすべきではなく、「選択と集中」によってめり張りのある改革を行うとともに、県民だれもが納得できる社会的に弱い立場にある方々に光を当てた公平感のある改革に取り組むよう求めてきたところであり、改革の対象となった各分野において、再検討も含め、残された課題は少なくないと考えております。

 今後、行革の推進に関する条例に規定されたフォローアップの仕組みを最大限活用し、県民・市町・関係団体等の声も踏まえ、県民だれもが納得できる県民本位の行財政構造改革に取り組むべきことを強く主張いたします。

 次に、健康福祉社会の実現については、特に、少子化対策の推進に当たり、私たちの会派から強く申し入れた法人県民税の超過課税の活用により、県独自の施策として、「子育てと仕事の両立支援」、「子育て世帯への支援」を力強く展開しようとしている点で、評価できるところです。

 しかし、一方で、この分野においては、小児科・産科等の医師の地域偏在・診療科偏在の解消や、恒常的な医師不足解消への積極的な取り組みとともに、病院の機能分担や病院と診療所との連携を図るなどの地域医療の充実、
さらに、良質な介護を実現するためのマンパワーの養成や、地域に住み続けることが可能な介護サービスの基盤の充実、障害者福祉制度の充実に向けた取り組みなど、私たちの会派があらゆる機会をとらえて指摘してきた課題があり、より一層の積極的かつ効果的な施策展開が求められます。

 次に、産業の活性化、雇用対策の充実及び国際化の推進については、先に取り上げた法人県民税の超過課税の活用も含め、勤労者の労働環境向上への支援のさらなる推進を図るとともに、中高年者・若年者・障害者などおのおののニーズに対応し、かつ企業ニーズに沿った就業力の向上に向けた諸施策、政・労・使が一体となった取り組み等で、持続可能な雇用の創出・確保を一層進めていただきたいと考えます。

また、現下の経済不況、雇用不安の中、中小企業へのさらなる支援、そして新たな雇用創出に向けての農業・環境関連分野での積極的な取り組みを求めます。

 次に、新たな兵庫教育の推進については、ひょうごの未来を担う子供たちをすこやかにたくましくはぐくむため、学校・地域・家庭がそれぞれ役割分担を明確にするとともに、参画と協働のもと、少人数学級の着実な拡充などにより、基礎・基本の学力の確実な定着や一人一人の個性・能力を伸ばすとともに、情報、環境、福祉、人権、多文化共生など時代の要請に対応し、大震災を乗り越えた兵庫ならではの教育の推進に、さらに前向きに取り組まなければなりません。

 このほか、「環境適合型社会の実現」「活力ある農山漁村づくりの推進」「快適に暮らす社会環境づくりの推進」「芸術文化・スポーツの振興」「県民が安全で安心して暮らせる治安体制の充実と危機管理」などについても、重要課題として、着実かつ強力な取り組みを期待しております。

 以上、来年度当初予算案に対する評価、さらに一層の取り組みが求められる重要な県政課題等について述べてまいりましたが、上程された予算案等については、かつてない厳しい財政環境の中にあって、現下の経済・雇用情勢や、少子化を初めとする本県の実態を踏まえた必要不可欠な事業を選択し、重点的に実施するために必要な額を確保したものであり、県政を取り巻く重要課題の諸取り組みに対し、その解決また推進への努力がうかがえる予算となっている点で、評価をいたします。

 しかし、私たちの会派が提言・申し入れ、あるいは本会議など、あらゆる機会を通じて指摘してきた事項、そして新行革プランの対象となった各分野には、さらなる取り組みが必要な分野や精査すべき課題が少なからず残っております。

 開会日に行われた提案説明において、知事は、「行財政構造改革は着実に推進する」、「将来負担のさらなる増嵩が見込まれるが、県民生活への支障をできるだけ最小限に抑えながら、基本方針を堅持し、平成30年度の目標達成に向けて、全力で臨む」との決意を表明されましたが、今回の行革は、決して失敗は許されるものではなく、県民・議会と一体となって取り組まなければ、改革は達成し得ないと考えます。

 知事におかれては、今後とも、県民の声を真摯に受けとめ、新行革プラン全体が実効あるものとなるよう最大限配慮されるとともに、県民本位、生活重視、現場主義の県政を推進し、「ふるさと兵庫の再生」に向けた強力なリーダーシップを発揮されることを強く要望いたします。

 最後に、私たち民主党・県民連合議員団は、危機的な財政状況のもとであっても、「県民の生活が第一」と位置づけ、安全に安心して暮らすことのできる元気な兵庫づくりに全力で取り組む決意であることを表明いたしまして、討論を終わります。ご清聴ありがとうございました。