石井秀武委員
1 孤独死・孤立死への対策について
はじめに、孤独死・孤立死への対策について、お伺いします。
昨年のはじめ、高齢者や障害のある方などが、近隣に気づかれずに亡くなり、相当日数が経ってから発見されるという、いわゆる「孤立死・孤独死」という悲惨な事件の発生が相次ぎました。1月には、札幌市で40代の姉妹が生活困窮から孤独死し、続いて2月には、さいたま市で親子が餓死、3月には立川市や川口市など、1月から4月までに報道で発表されているだけでも、13件の孤独死・孤立死が発生しています。それ以降も全国で孤独死あるいは孤立死と呼ばれるケースが相次いで発見され、地域社会の“無縁社会”化が、改めて問題視されました。
以前の孤独死は、家族構成の変化により独り暮らしをしていた老人が死後、だいぶ経過してから、久し振りに訪ねてきた親族に発見されるというのが典型パターンでありましたが、昨年のケースでは、複数の家族がなくなっていることさらには都市部に集中しているのがその特徴であります。
また、近年増加中の高齢者がその親を介護している、いわゆる“老老介護”の事例で、介護していた側が急病などで突然死し、副次的に動けない要介護者側が餓死するケースが増えているほか、貧困の拡大による生活困窮状態にある世帯が社会から孤立し、死に至るケースも目立ってきています。
孤独死もしくは孤立死には明確な定義がなく、死者数について統計データはありませんが、このような事案は増加しており、しかも高齢単身世帯の増加に伴い、今後ますます増えることが懸念され、自治体においてもその対策が求められています。
以上の点を踏まえ、孤独死・孤立死への対策について、以下3点にわたりお伺いします。
(1)無縁社会化に対する県の認識について
はじめに、無縁社会化に対する県の認識について、お伺いします。
また、無縁社会化を防止していくにあたり、県が担うべき役割をどのように認識しているのか、ご所見をお伺いします。
社会援護課長(尾山健司)
孤独死・孤立死の問題については、必ずしも高齢者世帯のみに起こり得る問題ではなく、生活困窮に陥った世帯や、障害者を含む世帯などにも発生する問題であり、これらの世帯に共通するのは、人と人とのつながりが変化し、社会から孤立した状態に陥っていることである。
また、孤立の生じる背景としては、社会の成熟化に伴い、価値観の多様化が進み、少子高齢化、核家族化、単身世帯の増加、結婚に対する若者の意識の変化、家族や社会とのコミュニケーションの希薄化、長引く不況を背景とした雇用形態の変化などの要因が重なり合い、社会から孤立していく人が急速に増えており、いわゆる無縁社会と呼ばれる社会状況が生じているものと考えている。
このことから、県としては、今日の無縁社会と呼ばれる社会状況を、県民一人一人が問い直し、お互いの存在を認め合い、人と人とがつながり、支え合える社会の実現に向け、広く県民に呼びかけるとともに、各市町や社協等が実施する地域における住民同士のつながり、支え合いの仕組みづくりや、高齢者等を見守る体制づくりなどへの支援を行う必要があると認識しているところである。
石井秀武委員
(2)生活困窮者への対応について
次に、生活困窮者への対応について、お伺いします。
生活困窮者への自立支援については、今年度のわが会派の6月定例会の代表質問において、ここに居ります山本議員が質問し、支援の入口は相談支援であり、本県においてもワンストップでの相談体制が必要である旨を指摘したところですが、生活困窮による孤独死・孤立死が続く状況を鑑みれば、生活困窮者を早期に発見し、生活保護等の福祉サービスに結びつけていくことについても併せて求められるものと考えますが、生活困窮者への対応の現状について県の所見を伺います。
社会援護課長(尾山健司)
生活困窮者の把握及び支援については、関係機関が協働して取り組むことが重要であり、県や市においては、これまでから、福祉事務所職員による生活困窮者の巡回相談、NPOによる炊き出し活動、民生委員による高齢者や障害者の安否確認や相談受け付け等を通して生活困窮者の把握に努めてきたところである。
また、生活困窮者を福祉サービスに早期に、かつ確実に結びつけていくため、漏給の防止を生活保護の基本とし、支援が必要な方に保護が実施されるよう福祉事務所を指導しているとともに、一つには、NPO法人と協働して、自立支援相談、一時宿泊所の提供、就労訓練等の総合的な支援を行う貧困・困窮者サポート事業の実施、二つには、社会福祉協議会等と連携した生活福祉資金の貸し付け、三つには住宅手当の給付及びハローワークと連携した就労支援、四つには、こうした関係機関・団体の連携強化を図る自立支援対策連絡協議会の開催等を行ってきたところである。
今後も、これまでの関係機関との協働の成果等を踏まえ、各市町と連携しながら、社会福祉協議会や社会福祉法人、NPO法人等民間団体とのネットワークづくりをさらに進め、県や市の福祉事務所等において、生活困窮者を早期に把握し、適切な支援につなげていくよう、体制の構築に努めていきたいと考えている。
石井秀武委員
(3)地域における見守り体制の構築について
最後に、孤独死・孤立死対策としての地域における見守り体制の構築についてお伺いします。
要援護世帯への対応として、高齢単身世帯や障害者と高齢の身内だけの世帯等孤独死・孤立死の発生リスクが高い世帯を中心に、地域における身近で日常的な見守りが効果的であるとの認識のもと、各地に取組みが広がりつつあります。
また、国は、一連の孤独死・孤立死の状況をうけて、昨年2月以降各省庁より発出され、さらに昨年5月には厚生労働省が各省庁から出された通知を包括する形で、「地域において支援を必要とする者の把握及び適切な支援のための方策等について」という通知を都道府県・政令市等あてに発出されています。
地域における見守りをしていくにあたっては、個人情報の共有が適切に行われる必要がありますが、地方自治体が保有している個人情報の取扱いについては、いわゆる「過剰反応」が見られることも指摘されており、そのことにより福祉部局と関係者の情報共有に支障を来たしているのではないかと危惧しているところです。
先の通知では、消費者庁や厚生労働省より、個人情報保護法においても、「人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるときについては、あらかじめ本人の同意を得ずに個人データを第三者に提供できること」となっており、この規定について、国からも適切に解釈・運用するよう通知がなされているところです。
そこで、県内各市町または社協や民生委員協議会、神戸市ではふれまち協議会等の地域団体が、適切な情報共有のもと、高齢単身世帯や障害者と高齢の身内だけの世帯等、要援護世帯の異変を早期に察知し、救急救命、福祉サービス提供につなげていけるよう、孤独死を早期に発見するための見守り体制を構築していく必要がありますが、県としての取組み状況及び課題について、今後の展望と併せてお伺いします。
福祉監(真木高司)
孤独死・孤立死の防止、また早期発見のためには、各市町において、民生委員、地域団体等の地域住民が見守り対象者の情報を共有し、連携した見守り活動を行うことが重要であると考えているが、地域において孤立しがちな高齢単身世帯等への対応については、さらにより一層の、重層的な見守り体制が必要だと考えている。
このため、本県では、昨年度、安心地区整備推進事業を創設し、住民が求める見守り、また相談支援等の在宅福祉サービスの拡充を図る実践モデルを実施するとともに、本年度においては、特別養護老人ホームの民間活力と専門性の高い技能を活用した24時間体制の見守りを行う地域サポート型特養の創設を行ったところである。
また、各市町における、住民の異変を発見し行政サービスにつなぐ仕組みづくりを支援するために、ライフライン事業者である大阪ガス、関西電力や、宅配事業者である佐川急便、ヤマト運輸、また新聞販売店で組織する団体など、各家庭を訪問し異変を発見する可能性の高い22の民間事業者及び県の社会福祉協議会、民生委員児童委員連合会と、本年8月に兵庫県地域見守りネットワーク応援協定を締結した。
この協定の締結により、市町でも関係団体と積極的に協定を締結するなどして、各市町の活動に民間事業者が参画し、見守り体制の強化が図られ、住民の緊急事態などの早期発見、早期対応につながっていると考えている。
ちなみに、9月末現在で市町に問い合わせたところ、21市町において既にこの協定を活用して、さまざまなことを実施していると聞いているところである。
今後は、協定参加事業者から提供される情報内容の充実、また協定参加事業者や協定を活用する市町の拡大を図るとともに、安心地区整備推進事業など既存事業とも連携し、各市町における重層的な見守り体制の構築を支援していきたいと考えている。
石井秀武委員
2 高齢者を悪質商法から守る取組みの推進について
(1)高齢者を狙った悪質商法に関する消費者トラブルの現状について
次に、「高齢者を悪質商法から守る取組みの推進について」について、2点お伺いします。
はじめに、高齢者を狙った悪質商法に関する消費者トラブルの現状についてです。
高齢者が悪質な投資や訪問販売等の被害にあうケースが続発しています。
今年度の高齢社会白書によりますと、65歳以上のいる世帯は平成23年現在で1,942万世帯であり、そのうち、単独世帯は470万世帯と、約24パーセントを占めており、10年前と比べて、およそ1.5倍となっており、今後も単身世帯の高齢者が増加することが予想されています。
高齢者は健康や財産・住まいなどに対して不安を感じていることが多く、さらには独り暮らしの孤独感も大きいことから、悪質業者はこのような高齢者を狙い、必要のない商品やサービスを無理やり契約させようと言葉巧みに近づき、高齢者をねらった悪質商法によるトラブルが後を絶ちません。
しかし、被害額が少額である場合や、高度な法的問題も含むため、裁判費用を考え泣き寝入りするケースや逆に裁判するぞと脅され金額を振り込んでしまう場合も耳にします。
また、高齢者の消費者被害には,「だまされたことに気付きにくい」「被害にあっても誰にも相談しない」という特徴もあることのことで、表面化していないケースもかなりの数に上るものと思われます。
そこで、本県における高齢者を狙った悪質商法に関する消費者トラブルの現状について、県当局としてどのように把握しておられるのか、高齢者を狙った悪質商法の代表的な事例と併せてお伺いします。
消費生活課長(有本方子)
県・市町消費生活センターに寄せられた苦情相談では、平成24年度の相談件数は3万7,283件で年々減少傾向にあるが、そのうち60歳以上の件数は1万3,315件で、全体の相談件数の約36%を占めており、その割合は年々増加している。
また、平均被害額は59歳以下の約25万円に対して60歳以上が約93万円と高額になっているなど、高齢者の消費者トラブルが深刻化している状況にある。
60歳以上の苦情相談のうち、一番多いものが健康食品で964件、2番目がインターネット情報サービスで949件、3番目が預貯金・証券等で756件、4番目が工事・建築等で541件となっている。
健康食品では、注文した覚えのない健康食品が突然送りつけられ、代金請求される、いわゆる送りつけ商法や、インターネット情報サービスでは、架空請求や迷惑メールの相談が増加している。
また、預貯金・証券等は、利殖商法として、必ずもうかると強調し、投資ファンドや未公開株などを強引に勧め契約させるもの、工事・建築等では無料点検と言って訪問し、不要な工事を行う点検商法が多く、記憶力の低下や不安感に乗じた手口となっている。
このため、県としては、高齢者のみならず、地域で高齢者を見守る方々を対象に、送りつけや点検商法などの事例について記載したチラシを作成・配布して注意喚起を行っているところである。
石井秀武委員
(2)高齢者向けの消費者トラブル防止対策について
次に、高齢者向けの消費者トラブル防止対策についてお伺いします。
高齢者に限ったことではありませんが、被害にあわないためには、悪質商法の手口を知っておくことが重要です。
県民一人ひとりが消費生活の知識を身につけ実践していくことは、消費者被害に遭わないためだけでなく、高齢者の生活の質を高めることや、資源を大切にすること、環境に配慮した消費生活を送っていくうえで重要であると考えます。
私個人の考えとしては、悪質商法の事例は様々でありますが、①寂しいからといって、家に入れないこと、②現金の振込みや契約をその場で執拗に求められたら悪質商法であることを、高齢者に徹底していくことが何より必要であると考えています。
そこで、最も被害の多い高齢者が悪質商法の被害に遭わないよう、高齢者トラブルを防止するための施策及び悪質商法事業者への対応、併せて今後の取組についてお伺いします。
生活消費局長(柳瀬厚子)
高齢者の消費者トラブルがますます深刻化していることから、県では、9月、10月を高齢者消費者被害防止対策強化キャンペーン期間として、市町・団体等と連携のもと、各地でイベント・事業等を実施し、送りつけ商法には、不審な荷物は受け取り拒否、また無料点検には要注意、不要なものはきっぱり断るといったように消費者トラブルの未然防止のための啓発に取り組んでいるところである。
また、高齢者の見守りを強化するため、くらしの安全・安心推進員や地域包括支援センター職員等、地域で高齢者を見守る人を対象に、消費者トラブルの現状と対応について研修を行うとともに、見守りの留意点等を記載した高齢者見守りカードを配布しているところである。
また、県消費生活センターが中心となり、高齢者被害防止のネットワークを構築し情報共有を図っているところである。
さらに、健康食品の送りつけや不要な屋根修理など、不当な取引行為を行った事業者に対しては、特定商取引に関する法律や消費生活条例に基づき、24年度は21事業者、25年度は9月末までに11事業者に指導し、改善確約書等の提出を求めているところである。
今後は、地域包括支援センター等高齢者を支援する人からの高齢者トラブルの情報収集や提供、さらに医療機関へのネットワークの拡充など、高齢者の安全・安心な暮らしの推進に努めてまいりたいと考えている。
石井秀武委員
いろいろな取り組みをしていただいているようであるが、相手も手を替え品を替え、高齢者を狙っている。日々、こういったことが報道もされているので、高齢者が消費者トラブルに巻き込まれ、泣き寝入りしないよう、未然に防げる対策を、キーワードである地域と連携しながら、しっかりと取り組んでいただくよう要望し、私の質問を終わる。
ありがとうございました。