平成29年度予算特別委員会(農政環境部)

石井秀武委員

1 養殖経営の強化について
(1)新たな養殖業の現状と課題について

瀬戸内海に春を告げるイカナゴのシンコ漁が3月7日に解禁されました。今年は県水産技術センターが不漁傾向を予測していますが、釜揚げやくぎ煮が季節の味として、また、文化として沿岸地域で定着しており、資源管理が重要と感じています。

本県は、近畿地方の生産額の約3分の2を占める漁業の盛んな県でありますが、漁獲量の減少や魚価の低迷、燃油や資材の高騰など経営環境は厳しい状況にあります。

このような中、経営安定をめざし、従来からノリやカキの養殖に加え、アサリ、サーモン、さらにはアカウニなど新たな品目へ積極的にチャレンジされていると聞いており、先頃も淡路島サクラマスのご当地メニューのお披露情報が報道されていました。

そこで、まず、最近の新たな養殖への取り組み状況についてお伺いします。

水産課長(小林孝司)

 養殖に適した瀬戸内海に面する本県は、ノリ、カキなどの養殖が盛んである。近年では、カキ養殖の複合的な経営として、アサリ養殖が行われ、さらにはローカルサーモンやアカウニなどの新たな養殖も試みられている。
 アサリ養殖は、平成27年には西播磨の46経営体が約20トンを生産している状況である。この養殖では種苗の確保と漁場の拡大が課題となっており、今年度から県栽培漁業センターで種苗の本格生産を開始するとともに、波浪に強いはえ縄式養殖の普及により、漁場の拡大に努めている。
 ローカルサーモンは、今年度から、海面では、姫路市2ヵ所、南あわじ市1ヵ所で、内水面では、豊岡市、宍粟市それぞれ1ヵ所で飼育試験を行っており、餌の見直しや飼育密度の改善による品質向上と県産種苗の確保に取り組んでいる。併せて、白鷺サーモン、淡路島サクラマスと名付けて販路の確保にも努めている。
 アカウニ養殖については、県民局指導のもと、昨年度から、洲本市の由良町漁協が中心となって、飼育試験を実施している。
 このように、漁業者と県が連携して新たな養殖業の振興に取り組んでいる。

石井秀武委員

(2)今後の養殖業の振興について

魚貝や藻類は、まだまだ生態がよく分からない場合や、育成技術の開発が研究途上のものも多く、新たな養殖業が確立するためには、優良品種の育種、種苗の生産、養殖の技術開発など、技術面で研究機関との連携が不可欠です。

また、新たな養殖業をビジネス化していくためには、生産のみならず、流通形態、食べ方、価格帯、客層のターゲットなど、流通・消費まで見通した方針を持って取り組むことが重要で、その方針のもとで、経営への取り組みを誘導し、その普及を図っていく必要があります。

このような観点に立って、今後、養殖業の振興にどのように取り組んでいくのか、当局のご見解をお伺いします。

水産課長(小林孝司)

 水産業の活性化を図るため、複数種類の養殖業や、漁船漁業と養殖業の複合経営を行うなど、安定した収入確保に向けた取組を進めている。
 本県の主要な漁業種類であるノリやカキの養殖業では、水産技術センターによる優良品種の開発をはじめ、新商品の開発や漁業経営の効率化、規模拡大への支援なども行い、生産から流通消費に至るまでの総合的な対策を推進している。
 また、新たな養殖業については、まず天然資源が減少しているなど、商品としての需要が大きいと思われる魚種を選定することが重要である。
 次に、種苗生産や飼育技術の確立が必要であり、技術開発は県水産技術センターが行うとともに、技術改良については、普及指導員が漁業者と連携して養殖試験などに取り組んでいる。さらに、これと並行して、漁業者と行政が観光業者や流通業者と連携しながら、出荷形態や食べ方提案、価格帯などについて検討し、新たな特産品として販路の確保にも取り組んでいる。
 今後も、アサリをはじめサーモンやアカウニなど新たな養殖がビジネスとして成立し、漁業経営の安定化や地域の活性化に資するよう積極的に振興を図っていく。ご指導のほど、よろしくお願いする。

石井秀武委員

2 都市近郊の立地を活かした施設野菜の生産拡大について
(1)県が開発したオリジナルイチゴの普及状況について

施設野菜の生産拡大を進める、つまり儲かる経営を実現していくためには、①付加価値の高い商品の生産で売り上げを拡大する、②生産コストの低減や生産性の向上を図る、などが考えられます。

付加価値の高い商品としてオリジナル品種の開発がありますが、兵庫県では、農林水産技術総合センターがイチゴの新品種を開発し、2015年2月に「あまクイーン」、「紅クイーン」の愛称を決定するとともに、2020年に7haの栽培面積をめざしています。

この品種の開発は、本県農産物のブランド化を図るためにも重要で、応援してきた者の一人として大きく期待しているところですが、愛称決定から早2年が経過しました。

その後、「あまクイーン」、「紅クイーン」の生産拡大が進んでいると思いますが、その状況と今後の取り組みをお尋ねします。

農産園芸課長(多田勝利)

 消費者のイチゴへの人気が高まる中、生産者からの強い要望を踏まえ、県立農林水産技術総合センターが県ハウスいちご研究会と一体となって開発したオリジナル品種、あまクイーン、紅クイーンは、甘さや香り、大きさ、酸味等の個性・特徴が認められ、平成29年2月8日に品種登録された。
 平成28年度産の生産状況は、あまクイーンについては、22名で15アール、紅クイーンについては、22名で19アールが、神戸・阪神、播磨地域を中心に栽培されている。
 また、栽培マニュアルに基づく指導、栽培時期に応じた勉強会や県ハウスいちご研究会での講習会等を開催し、高品質なイチゴの生産技術の普及を図っている。
 さらに、種苗業者等と調整を行った結果、ウイルスフリーの良質な苗を供給できる体制が整ったことから、今後、生産者の意向を確認し、更なる生産の拡大を行う。
 併せて、消費者に対して、生産者と一体的にPRを行うとともに、レストランや洋菓子店、ホテルへの活用を積極的に推進し、需要の拡大を図るなどにより、本県のブランド産品に育成していく。ご指導をよろしくお願いする。

石井秀武委員

 どうもありがとうございます。ただ、今お聞きすると、両方合わせて34アールで、3年後の7ヘクタールは、栽培面積は20分の1である。現場の雰囲気として、年々、倍々で栽培していくという状況を感じ取れない実態である。
 結果として、市場に出してよかったのかどうか、素直なところ、どう思っているのか伺う。

農産園芸課長(多田勝利)

 委員ご指摘のあまクイーン、紅クイーンは、生産者によって意見はさまざまである。ただ、作り方、または販売の仕方によって評価が大きく変わり、観光いちご園によって摘み取りでイチゴを販売している農家にとっては、大変魅力あるイチゴ、特に、あまクイーンは甘くて大きいので非常に評価が高い。
 もう一つは、市場出しで料理用に使う、または洋菓子用に使うということになってくると紅クイーンが非常に人気があり、今後、市場向け出荷をしている方、または園路販売をされている方、観光摘み取り園をされている方の中で、取捨選択されて、この品種が定着していくものと考える。よろしくお願いする。

石井秀武委員

(2)低コスト環境制御技術の開発・普及について

生産コストの低減や生産性の向上を図る点から、環境制御技術の導入が注目され、本県でも、2015年7月、加西市にオランダ式の大規模環境制御温室が完成し、1年余りが経過しました。

約4ha規模で事業費は20億円を超えており、10a当たり投資額は5千万円、30a規模では1億円を軽く越えてしまいます。施設野菜は露地に比べて投資額が高くなりますが、施設園芸のモデルとしても投資額が大き過ぎないか。

大規模温室ほどでなくても、もう少し少額投資で生産性が向上するなら、既存の多くの農業者にも取り組みやすいものとなり、経営改善につながる可能性があります。

そこで、既存の施設に簡単な改善を行い、生産性を向上させる方法が工夫できそうに考えるがどうか。

農産園芸課長(多田勝利)

 大消費地に隣接した都市近郊の立地、食品産業の集積など、ひょうごの強みを生かし、農業所得を向上させるには、施設による生産性の高い取組が必要である。
 このため、平成27年度に加西市に整備した次世代施設園芸団地では、環境制御技術のポイント等について、若手農業者を対象に定期的な検討会を開催するなど、実証成果の県内への普及・拡大に取り組んでいる。
 しかしながら、環境制御技術を活用した場合、生産性は高いが、機器等への投資が必要なこと、データに基づいた栽培管理が必要なこと、一方で、多くの農家は経験則等に頼る生産が展開されていることから、環境制御技術の導入は一部の生産者に限られている。
 そのため、メーカー品では150万円程度必要とした環境制御機器を20万円程度の安価で自作できるように農林水産技術総合センターが開発し、既存のハウスでの応用段階まで研究を進めてきた。
 今後は、低コストで早期の投資回収が可能な本システムの活用ポイントをまとめた導入マニュアルの作成や研修会の開催、実証ほの設置等により普及を図るとともに、次世代施設園芸団地との技術情報交換会等により、環境制御技術を駆使した栽培及び経営管理手法を取組意欲ある生産者に対し普及を図る。ご指導をよろしくお願いする。

石井秀武委員

3 農地の有効活用につながる農協の取り組み支援について

農地の集積・集約化を進める農地中間管理事業においては、集落営農法人や大規模農業経営者を中心に約3,000haの農地が貸し付けられていますが、新たに農業を始めたい、規模を拡大したいという方の借り受け希望は1万ヘクタールを超えています。

一方で、耕作放棄地面積は農林業センサスベースで2015年は6,908haで、5年前より約1,000ha増えており、農地の流動化、有効活用がまだまだ進んでいません。

このような中、農協が出資して法人を立ち上げ、組合員の農作業の受託や経営の受託、さらには直接農業経営にまで乗り出す動きが目立ってきました。県下に9法人あり、今後の活動に大いに期待するところでありますが、経営体力が弱く、また、組合員から条件不利農地の利用を余儀なくされているような状況もあります。

折しも農業委員会改革や農協改革が進められていますが、農地の有効活用についても、地域の耕作条件や作付け事情に精通した農業者の協同組織である農協がさらに役割を果たしていく必要があります。

そこで、農業の担い手の一翼として、農地の有効活用に取り組む農協の活動をさらに支援していく必要があると考えるがどうか。

農政環境部長(新岡史朗)

 農地の有効活用を進めるためには、まず、借り手は優良農地を、貸し手は条件の良くない農地を希望するというミスマッチが生じていることや、農地所有者にとって面識のない相手に農地を預けることに心理的な抵抗感があることが課題である。
 また、昨年開催した有識者による検討会では、規模拡大する借り手の経営の安定を図る必要があるとの意見があった。
 このため、来年度から、各地域の農協などが主体となって、農地中間管理事業等を活用して耕作放棄地の発生を防止し、農地の有効活用を図る仕組みを構築する。
 具体的には、まず、農協等がコーディネート役となり、市町や農業委員会等の関係機関と連携して、地域での話し合いを進め、貸し手や借り手の意向を反映した農地利用図を作成する。次に、その農地利用図をもとに農地の借り手となる農協出資法人などに対して、農業機械の導入や生産・販売を担う人材の確保を支援する。加えて、ほ場整備されていない条件不利農地を活用する場合には、集積奨励金を交付する。
 平成29年度は、本事業を県内10ヵ所でモデル的に実施する。そして、農協による産地育成など農協改革が進む中、連動してこの取組を県内全域に波及させ、農地の有効活用を図る。
 よろしくお願いする。

石井秀武委員

4 五色沖の洋上風力発電の導入について
(1)洋上風力発電の導入支援について

本県では、2030年度の温室効果ガス削減目標と再生可能エネルギーの導入目標などを盛り込んだ兵庫県地球温暖化対策推進計画を検討しているところです。

こうした目標を実現するため、特に再生可能エネルギーの導入拡大のためには、太陽光発電に偏らず、風力・小水力・バイオマス発電など多様な再生可能エネルギーの導入が必要であることは理解できます。

一方、この2月定例会に「太陽光発電施設等と地域環境との調和に関する条例」を上程し、太陽光発電施設による景観、眺望の阻害、太陽光パネルの反射光による住環境の悪化等によるトラブルを防ぐため、一定の規制をかけることとしています。

来年度、洋上風力発電の導入促進として、環境省公募事業における洋上風力発電の適地抽出モデル地域に選定された洲本市五色沖の洋上風力発電について、具体化に向けた検討調査事業を支援するとしています。

そこで、いま、なぜ、この地域での導入支援が必要なのか、県として導入の意義をどのように考えているのか。また、県が支援する以上、今後、他の地域への導入の可能性はあるのか、ご所見をお伺いします。

温暖化対策課長(小塩浩司)

 再生可能エネルギーの100万キロワット新規導入目標は、2015年9月末に達成し、現在検討中の兵庫県地球温暖化対策推進計画では、2015年度の発電量約30億キロワットアワーから2030年度に70億キロワットアワーに増大させる目標としており、大規模太陽光発電に偏らないバランスのとれた導入を促進する。
 五色沖洋上風力発電事業は、一つには、あわじ環境未来島構想のエネルギー自給率100%に貢献できること、二つには、着床式風力発電設備の魚礁利用による漁業者との共存など、地域創生に資するモデルケースとなり得ること、三つには、県内には洋上風力の関連企業が多く、これらをうまく連携させ、事業参加を促すことで、島内だけでなく、県内経済にも寄与できる可能性があることなど、単に温暖化対策にとどまらない波及効果が期待できる事業であると考えている。このため、県として導入可能性調査等について支援していく。
 なお、当事業で得られる調査結果や、地域関係者の理解促進等の新たな知見を踏まえ、県内他地域への展開についても検討していきたい。

石井秀武委員

(2)洋上風力発電導入に係る課題への対応について

五色沖の洋上風力発電の導入により、温室効果ガス削減に効果があること、また、それにとどまらない波及効果が期待できることは一定理解できますが、洋上風力発電には、景観との調和や地域の理解、特に漁業者との調整などが不可欠であることや、洋上ゆえに津波に対する安全性確保など、多くの課題があると考えます。

そこで、このような課題に、どのように対応するつもりなのか、当局のご所見をお伺いします。

環境管理局長(春名克彦)

 洋上風力発電の課題としては、景観、騒音、生態系や漁業への影響、安全性の確保、地元調整などがあると認識している。
 現在、洲本市及び関係企業が環境省の委託を受けて、風況や地盤、法令に基づく規制、景観・生態系への影響などを総合的に評価して、適地を抽出する調査を実施中である。並行して、学識者、地元漁業協同組合、自治会、洲本市、県、環境省などが参加する協議会が発足している。当協議会は、事業具体化の前に地元として立地に関するルールづくりをするという先進的な取組をしている。
 また、事業が実施されることとなった場合は、事業実施に先立ち、条例等による環境アセスメントにより、景観や自然環境への影響が検証されるとともに、学識者や住民等の意見を踏まえ、県は事業者を指導することとなる。加えて、津波・高潮・潮流に対する対抗力の基準について、国土交通省等が検討中であり、洋上風力発電が建設される場合は、安全基準に沿った施工がされるかの確認も必要と考えている。
 事業化に当たっては、地元の合意形成や安全性の確保が不可欠と考えており、関係団体と連携して適切に対応していきたいので、ご指導のほどよろしくお願いする。

石井秀武委員

 どうもご答弁ありがとうございました。
 ここで、もう1点確認しておきたい。九州に続き、昨年12月に四国でも再生可能エネルギーの出力抑制が始まったようである。関西はまだであるが、淡路は四国と電力融通の面では不可分の関係にあり、出力の抑制等を行う順番は、再生可能エネルギーは優先順位は低いが、新設することの発電導入にはより慎重に取り扱う必要があるが、そのあたりの見解も併せて伺う。

環境管理局長(春名克彦)

 淡路島における風力発電等の電力の制限については、現在、淡路島関西電力と四国電力、両方が管轄しているが、両者に聞いたところ、風力発電については、現在、五色沖で研究・検討されている内容であれば十分対応できると確認をしている。

石井秀武委員

最後、コメントにする。このことを導入することによるメリット・デメリットもあり、五色浜は県道31号線の淡路サンセットラインの大変すばらしい夕日の景観のある場所である。計画地のすぐ南側には、万葉集に「飼飯の海の庭好くあらし刈薦の乱れ出づ見ゆ海人の釣船」、これを柿本人麻呂がうたった歌であるが、国の指定名勝の慶野松原がある。
 環境部局を所管する皆様方におかれては、景観も含めて、さまざまな観点で検討していただくことを期待して、質問を終わる。
 ありがとうございました。