第354回定例会(6月)一般質問2021年6月7日

○(石井秀武議員)  おはようございます。
 ひょうご県民連合議員団、神戸市西区選出の石井秀武でございます。
 早速、分割にて質問に入らせていただきます。

第3期ひょうご教育創造プランについて

 まず、第3期ひょうご教育創造プランについてでございます。
 西上教育長におかれましては、平成30年4月に県民企画部長から教育長に就任され、この10月に任期を迎えられます。それまで主に財政畑を歩んでこられた経歴から一転、教育という新たなフィールドで、兵庫の教育のため、この3年、真摯に取り組んでこられたと受け止めております。
 さて、ご承知のように、ひょうご教育創造プランは、本県の教育全体に関する非常に重要な基本計画です。教育長は、就任最初の年に第3期ひょうご教育創造プランを策定され、予測困難な時代の中で、子供たちには変化に柔軟に対応できる力とともに、これからの社会を創造していく力の育成が重要であるとして、未来への道を切り開く力の育成を重点テーマとして掲げられました。
 そして、令和元年度からは、新しいプランに基づき、児童生徒の学力向上、県立高校の魅力づくり、特別支援学校の整備、学校のICT化など、着々とプランを実行されております。
 新たな分野での初めての挑戦として臨まれた第3期のプランの策定に当たっては、どのような思いを込め、またその推進に当たっては、どのようなことに注力して進めてこられたのでしょうか。
 令和2年の年明けからは新型コロナウイルス感染症が拡大し、移動や密集の自粛など人々の自由は制限され、世界的な交流の遮断、経済活動の停滞など感染拡大に伴う様々な影響が広がり、世界も日本も揺れ続けております。
 教育においても、一時は学校の一斉臨時休業を余儀なくされるなど、前例のない対応を迫られ、再開後の教育活動においてもあらゆる制限を受けてきました。兵庫が誇るトライやる・ウィークなど、体験教育においても、これまでどおりの実施ができず、試行錯誤の中で工夫されてきたと思います。
 一方で、学校での1人1台端末の普及に見られるようなICTを活用した新たな動きも急速に広がり、ポストコロナの世界は新たな時代の始まりとも言われております。
 まさに、第3期プランの重点テーマである未来への道を切り開く力が、子供たちだけではなく、教師、学校、教育行政そのものに今求められております。
 そして、このような激しい変化の時代だからこそ、このプランの前文に記載されている、いつの時代においても教育に必要とされるもの、不易が何であるのか、今この時代に合わせて、教育に必要とされるもの、流行が何であるのかが見えてくるのではないかとも感じているところです。
 この1年余りの間、教育長の立場で様々なご判断をされてきたと思いますが、コロナ禍というこれまでにない事態を経験し、兵庫の教育に対する思いや、子供たちが身に付けるべき力について、今どのように考えられているか、プラン策定時から変わったこと、変わらなかったことは何か、この第3期プランの計画期間、5年の折り返しの時期を迎えている今、教育長にご所見をお伺いいたします。

今後の県政を担う職員の採用について

 次に、今後の県政を担う職員の採用についてであります。
 これまで大多数の大学新卒の年齢である22歳人口は、2010年代ほぼ横ばいで推移してきましたが、今後、少子化の影響を受け、新卒採用の2021年問題と言われているように、2022年以降減少に転じるとされており、2022年度の採用、つまり今年、2021年度からの就活から学生獲得競争が激化すると言われております。
 このような中で、兵庫県が新規採用において優秀な人材を採用するには、民間、または他の地方自治体との争奪戦となることは明らかですが、兵庫県職員一般事務職、大卒程度の採用試験の受験者数の競争率は、就職氷河期の2000年頃には30倍程度あったものが、近年では、2018年度は3.9倍、2019年度4.8倍、2020年度5.3倍となっており、受験者数は低迷しております。
 感染症や災害が頻発する近年において、県民の公務員に対する期待と需要は高まっており、その一方で、公務員に向けられる視線は厳しさを増しております。そのため、公僕として県政を支え、県民のための仕事を高い志とやりがいを持って遂行できる優秀な人材を獲得していくことは、最重要課題であります。
 また、国内においても、デジタル改革関連法案が成立するなど、デジタル化が喫緊の課題である行政にとって、情報の基礎知識はなくてはならない社会常識となっております。
 そこで、将来の県行政を担う職員採用に当たって、どのような人材がふさわしいと考えているのか、また、その適性をどのように見極めるのか、そして優秀な人材を獲得するためには、受験者の獲得が不可欠であるが、そのためにどのような取組を行うのか、人事委員会の方針をお伺いいたします。

知事選挙に向けた投票率向上のための啓発について

 次に、来月の7月1日に告示され、7月18日が投開票日となっている兵庫県知事選挙の投票率向上のための啓発についてお伺いいたします。
 2019年の統一地方選挙では、都道府県知事選挙を除き、各選挙ともに投票率が過去最低記録を更新いたしました。
 兵庫県知事選挙の近年の投票率は、参議院議員選挙と同日実施であった平成13年と平成25年を除き、昭和61年の選挙から計6回、30%台で推移してきました。前回の平成29年の選挙では、何とか40.86%と、わずかに回復したものの、かつて昭和26年には80%近い投票率という時代があったことを考えれば、全国の地方自治体同様、長期低落傾向にあります。
 一方で、昨年来の新型コロナウイルス感染症への対応において、各地方自治体の対応が比較され、首長の記者会見が度々報道されるなど、都道府県知事という存在に対する世間の関心は高まっていると感じております。
 民主主義の根幹たる選挙の重要性を鑑みれば、投票率の向上は非常に大きな課題です。総務省が平成29年に出した投票環境向上に向けた取組事例集によれば、全国では、大型商業施設、大学、高校、病院等での共通・期日前投票所の設置や、投票所の設備を備えた車による移動式期日前投票所の設置、交通弱者への移動支援などの取組が見られます。
 県内でも初めて、播磨町が今年の知事選において共通投票所を設置すると発表されております。従来、町内に13ヵ所設置してきた投票所を約半数の7ヵ所にし、代わりに全ての投票所に共通投票所を併設することで、播磨町の選挙人は町内全ての投票所どこでも投票できることになるとのこと。費用の面では、二重投票などを防ぐためのシステム導入費用などにコストがかかるが、投票所を半減することで、運営費用は圧縮できるとしております。
 また、神戸市が令和3年2月に記者発表されたところによると、今年の秋に予定されている神戸市長選挙において、候補者名が印刷された投票用紙に丸印を書いて投票する記号式投票を採用するとのこと。神戸市は、近年、特に若い有権者の低投票率が全国的な課題とされる中、投票方法が簡単になることで、有権者の利便性の向上や新たな制度採用により話題性を高め、投票率の向上を目指すとしております。
 今年7月の知事選挙では、新型コロナウイルス感染症も心配されるところであり、感染対策を行いながら取組を進めていかなければならないわけですが、県の選挙管理委員会として、コロナ禍での他県の先行事例も踏まえ、投票率向上に向け、具体的にどのように取り組むのか、ご所見をお伺いいたします。
 以下は質問席にて質問をさせていただきます。

答弁

○選挙管理委員会委員長(石堂則本)
 石井秀武議員のご質問のうち、知事選挙に向けた投票率の向上のための啓発についてをご答弁申し上げます。
 7月18日執行予定の知事選挙は、いまだ新型コロナウイルス感染症の収束が見通せないため、感染症に配慮した啓発を行う必要があります。コロナ禍での他団体の先行事例を踏まえまして、新型コロナウイルス感染症対策に配慮した効果的な啓発として、インターネットを活用した広告掲出回数の増加や、新たにウェブ動画作成、ショッピングセンターでのCM放送など、非接触型の啓発に重点的に取り組みます。
 また、感染防止に十分配慮した街頭啓発や、幅広く企業、各種団体の協力を得てポスターを掲示いただくなど、周知を図ってまいります。
 また、有権者が投票しやすい環境の向上を目指し、議員ご指摘の播磨町の共通投票所のほか、朝来市の投票所の復活や県全体でのショッピングセンターの期日前投票所が2ヵ所増設し、20ヵ所に設置されます。
 さらに、移動支援につきましても、淡路市がコミュニティバスの無料乗車券を配布する等、新たに4市町が実施し、過去最多の13市町となる予定であります。
 加えて、混雑回避のため、市町における投票所の過去の混雑状況のインターネット公表を促進するほか、加古川市や播磨町では公式ツイッター等を活用し、当日の混雑状況の提供も行います。
 なお、宿泊施設や自宅での療養者の郵便等投票を可能とする特例法案が6月3日に国会に提出されており、成立すれば、今回の知事選挙にも適用される予定であることから、成立した場合の対応につきまして、保健所及び市町と連携して検討を進めてまいります。
 知事選挙は、今後の県政の進むべき道筋が問われる重要な選挙であるため、特に投票率の低い若年層を含め、1人でも多くの有権者が投票を参加される必要があります。
 選挙管理委員会としましては、平時から積極的に出前事業等を通じて、知事選挙の意義も周知し、投票参加を促しております。議員各位におかれましても、投票率の向上に向け、格別のご協力を賜りますようお願い申し上げ、答弁といたします。

○教育長(西上三鶴) 
 私から、第3期ひょうご教育創造プランについてお答えをいたします。
 第3期のプランは、ご紹介いただきましたように、基本理念の兵庫が育む心豊かで自立する人づくりを不易とし、確かな学力の育成や本県が誇ります兵庫型体験教育などを着実に進める一方で、これからの変化の激しい時代に対応するため、未来への道を切り開く力の育成を流行として、多様な人々との共生を図る取組を進めることといたしました。
 1年目の2019年は、順調にスタートを切ることができたと思っておりますが、しかしながら、昨年度は臨時休業ということを余儀なくされました。その中で、授業だけでなく、様々な行事等を通じた人と人の交流によって、児童生徒が成長する場である学校の重要性を改めて認識をいたしました。
 また、授業日数を確保するため、行事の精選を多く行い、取組を中止・延期せざるを得ない中で、コロナ禍で従来の既成概念にとらわれない工夫をすることの重要性も改めて認識をしたところでございます。こういった教訓は、これからの取組に生かしてまいりたいと思っております。
 この中で特徴的な例といたしましては、やはりICT環境の整備だと考えます。これまで学校で整備が遅れておりましたけれども、今や学校内だけではなく、学校と家庭をつなぐ環境まで大幅に進みました。現在、ICT指導力セットアッププログラムによる教員研修に取り組んでいるところでございます。
 今後の課題といたしましては、1つとしては、小学校35人学級の円滑な移行と兵庫型教科担任制の見直し、2点目は、県立高等学校第3次実施計画の策定、3点目は、県立特別支援学校における障害種別に応じた教育の在り方など、喫緊の課題に取り組むこととしております。
 あわせて、学校が働きがいのある職場となりますよう環境整備、また教員の研修の充実を図ってまいります。
 新型コロナウイルス感染症の影響から、教育活動に引き続き制約がある中ではございますが、関係機関と連携し、教員個々の取組だけではなく、組織として様々な課題に知恵を出しながら、将来の兵庫を担う子供たちを育てる教育を展開してまいりたいと思っております。
 引き続きご協力をよろしくお願いいたします。

○人事委員会委員長(松田直人) 
 今後の県政を担う職員の採用についてお答えいたします。
 人口減少や少子・高齢化、自然災害の激甚化、更には感染症対策など、複雑・多様化する行政ニーズに応えるためには、課題への対応力、前例にとらわれない斬新な発想力、自ら考え、多様な主体と共同して実現を図る行動力、県民に寄り添い、最後までやり遂げる責任感、こういった能力を備えた人材が必要でございます。
 このため採用に当たりましては、受験者の人となりをじっくりと評価する人物重視の選考を行っており、筆記試験の成績にこだわらないリセット方式により、班長級職員と部局中級職員による2段階の面接で、能力や適正を見極めております。
 受験者確保対策といたしましては、五国からなる広大な圏域をフィールドに、地域課題を解決することで、県民を幸せにするという兵庫県の職員でしか味わえない仕事のおもしろさをしっかりと伝えていくことが重要でございます。
 このため職員の生の声や職場の雰囲気に触れる機会を増やしますとともに、動画コンテンツやSNSによる発信、ホームページのリニューアルなど、スマホ世代にも刺さる広報に取り組んでおります。
 今月20日実施予定の大卒者の採用試験に向けましては、コロナ対策として、オンラインでの採用説明会を53回実施した結果、一般事務職の申込み倍率は昨年並みの9.5倍を確保しております。
 今後は、経験者採用などに向け、民間主催のウェブ就職セミナーにも積極的に出店するため、補正予算案に計上をさせていただいたところです。
 なお、デジタル化につきましては、今年度、民間出身の外部専門人材が県職員を指導・助言する推進体制が整備されました。
 研修等による全庁的な職員の能力向上にも取り組まれていますが、人事委員会といたしましても、採用試験でデジタル関連の設問を充実させ、底上げにつなげてまいります。
 今後ともポストコロナ時代を先導するすこやか兵庫の実現に、共に挑戦する人材が採用できますよう全力で取り組んでまいります。

○(石井秀武議員) 
 それぞれからご答弁をいただきました。
 知事選の投票率は、少なくとも50%ぐらいの目標を掲げて、残された日々、精力的に啓発活動に取り組んでいただきたいと思っております。
 投票環境の整備はもとより、特に新人同士の戦いになりそうですので、県民に広報の政策など、しっかり見てもらい、知事選挙に関心を持っていただくよう、更なる取組が必要ではないかと思っておりますので、よろしくお願いをいたします。
 また、教育長からはご丁寧なご答弁をいただきました。教育長におかれましては、今なおコロナ禍の収束が見えない中、先行き不透明な状況の中、県教育行政のかじ取り役を担われておる中で、質問でも触れましたが、教育における不易、流行が何であるのか、いま一度、走り続けながら、時には立ち止まり、兵庫の次代を担う子供たちのための最適解を示していただきたいと思っておりますので、引き続きどうかよろしくお願いをいたします。
 県職員の採用に関しましては、デジタル化のことも触れていただきました。デジタル化の今後の進展や、また今後生まれてくるであろう新たな技術など、何事に対しても柔軟に対応できる職員の採用を心がけていただきたいと思っておりますので、どうかよろしくお願いをいたします。
 それでは、知事、お待たせいたしました。思い起こせば、20年前、知事選挙の応援のため早朝より神戸市西区の農業公園で待ち受けていた私に、前日発生した明石歩道橋事故のため予定を変更し、献花に向かう旨を伝えるためだけに、わざわざ立ち寄っていただいた謙虚な姿勢に感銘を受けたのを今でも鮮明に覚えております。
 その2年後、私も県議会に議席を得、18年前の11月定例県議会では緊張しながらの本会議デビューで、私は、地元明石川の河川管理の在り方や関西復権プロジェクトの推進についてなど、6項目について質問し、井戸知事から丁寧なご答弁をいただきました。以来16回、議場に立たせていただき、111問の質問を行い、うち55問、実に半分の問いに対し井戸知事からご答弁をいただいております。
 今回、時間の関係で質問はできませんが、自転車を活用した県下のにぎわいの創出などについては、私の中で3番目に多い9回の質問をさせていただきました。県下各地でアワイチをはじめ、サイクリングイベントが増えてきたことは、大変評価いたしております。
 また、神戸県民センターが中心となって準備委員会が立ち上がっている六甲山ヒルクライム大会や、まだまだハードルは高いですが、ツールド・ひょうごの実現、県立播磨中央公園では、自転車を核とした公園のリノベーションなどにも着手していただいております。
 県立明石公園自転車競技場の大規模改修については、まだ方向性が定まっていないのは残念でございますが、概ねそれらは全て知事の温かいご理解のもと、県施策として日の目を浴びようとしていることに感謝申し上げます。
 知事とのやり取りが本日で最後になる寂しさとともに、これまでの質問を振り返りつつ、総括いただきたいとの思いで、以降3問について質問を行います。

二重行政の解消と特別自治市に係る神戸市への対応について

 まず、二重行政の解消と特別自治市に係る神戸市への対応についてであります。
 知事退任後を見据えた神戸市との連携及び意思疎通についてお尋ねいたします。
 神戸市との連携についても何度かお尋ねさせていただきました。総論としては二度、各論は多数でございます。近年、どこの道府県も政令市との関係は頭を痛めているのではないかと思っております。
 平成27年12月定例県議会では、特に観光、農業等各分野での連携の取組について伺い、より適切な役割分担のもと、相協力すべき組織については、できるだけ一体的な運用が図られるように努力するとのご答弁をいただきました。
 新長田合同庁舎での協調やUNOPS、グローバル・イノベーション・センターの誘致など、県市の関係がこれまでになくうまく進んできたと感じております。ただし、これは知事と市長の個人的な関係、端的に言いますと、知事が自治省の先輩ということが大きいのではないでしょうか。しかし、知事交代後もこの関係は継続できるのでしょうか。
 県・神戸市調整会議や同連絡会議という形式的な場は有するものの、しっかりと日常的な事務レベルの連携が取れているのでしょうか。とりわけ、近年の特別自治市の法制化を巡る久元市長の発言や、令和2年10月には、アートや植物と融合したアクアリウムをはじめとする新港突堤西地区の再開発、あるいは今年4月には神戸市の音楽ホール計画の中止など、大きなプロジェクトについて、報道で初めて市の発表を知ることも多く、今後も県と市が適切に連携していけるのかと不安に感じております。
 特に、令和3年、今年の3月に発表された神戸市が民設民営で神戸港に県内最大の1万人収容規模のアリーナを整備することについてですが、令和元年12月定例県議会で、明石公園のリノベーションの一環として今後の利活用を考える中で、アリーナの規模やイベント需要、地域に求められる施設機能などを具体的に打ち出すことにより、どのような関心が寄せられるのか、サウンディングしてはいかがでしょうかとの私の質問に対して、知事より前向きなご答弁をいただき、その後、県が大規模アリーナの検討を大々的に発表されたことも踏まえると、一つの有力な候補地である明石での検討が隣接する神戸で先行することにより、可能性はほぼなくなり、真の意味での二重行政の解消に向けての議論が実務的に行われているのか甚だ疑問に感じざるを得ません。
 そこで、知事には、二重行政の解消に向けた神戸市との連携及び意思疎通を十分に図っていただくとともに、県議会において、特に警戒心の強い特別自治市の法制化を巡る神戸市の動きについて、神戸成り立ちの背景などをしっかりと踏まえた上での適切な対応を神戸市に求めていただきたいと考えますが、知事のご所見をお伺いいたします。

選択と集中の実現について

 次に、選択と集中の実現についてであります。
 私はこれまで10回もの行財政構造改革に絡む質問をさせていただきました。平成24年2月定例県議会では、過去のしがらみの中で進めていこうとする施策の検証が必要で、場合によっては立ち止まる勇気も必要と指摘し、井戸知事から、スクラップ・アンド・ビルドに徹し、ゼロベースの見直しを行うと答弁をいただきました。以降も選択と集中の徹底、シーリングの強化、事業数の10%削減といった言葉が予算編成方針や知事答弁で述べられております。
 これについては、平成20年度から30年度までの行革の成果として、廃止が2,728事業、新規事業が1,327事業となっており、差引き1,401事業が削減されているとのことです。
 一方、新規事業について、平成25年度予算特別委員会では、チャレンジ枠の意義と効果について指摘し、知事からは、大変ユニークな事業も上がっている。手始めであり温かく見守っていただきたいとのご答弁をいただきました。そして、それ以降、毎年のように、チャレンジ枠、地域創生枠、県政150周年記念事業枠、すこやか兵庫枠、リーディングプロジェクト特別枠、ポストコロナ対策特別枠のように新規要求枠が設定され続けています。
 平成25年の答弁で、知事は、チャレンジ事業は、新たな発想で取り組もうとするものであり、その効果にも期待しているが、チャレンジ事業を検討する過程が重要だと思っている。検討を重ねていくことが期待する原点であるという趣旨のご答弁をされています。私から見ると、本県では、最も柔軟な発想で新規施策を立案できるのが知事という印象ですが、これまで設定されてきた新規要求枠を検討する過程で、独創的な新規事業の立案等、知事が期待したような十分な意義があったのでしょうか。知事の見解をお伺いいたします。
 また、新規要求枠の中身を見ると、時に名称やスキームを変えて新規枠という名のもとで毎年同じような事業が続いてきたケースもあるのではないかと考えております。
 私が思うところ、やめられない事業には二つのパターンがあると分析しております。
 一つは、先進的な事業、モデル事業と認識して開始したが、役割を終えた、あるいは十分に成果が上がらないにもかかわらず、事業目的が達成していないか、中止が決断できない仕組みや事業です。このような事業の有無も含めて、再精査するためにも、個々の事業を再度ゼロベースで検証していく必要があるのではないでしょうか。
 もう一つは、地元や海外の企業、有識者等との個別のつながりを生かして事業を開始したものの、思った成果が上がっていないものもあるのではないかと考えております。このような地縁などによるつながりを生かした事業について、決して全否定するものではないですが、相手もビジネスライクな側面を有していると考えられることから、少し立ち止まって考える必要もあったのではと考えております。
 我々県議会としての役割も反省すべき点はあったと思いますし、県当局としても助言できる環境になかったのかとも思います。これら二つの要因により事業をやめる勇気を持てなかった部分が今でも残っているのではないでしょうか。
 事業を始める勇気よりやめる勇気が大切という言葉がありますが、改めて、井戸県政において、適切にスクラップ・アンド・ビルドが行われてきたのか。そして、今回の行財政運営方針の総点検について、今後どのように成果を上げられると考えているのか、お尋ねいたします。

関西広域連合の行く末と新しい形での道州制について

 最後に、関西広域連合の行く末と新しい形での道州制についてお伺いいたします。
 私が最もたくさんの質問をさせていただいたのが、地方分権や関西広域連合についてです。これまで14回、全てを知事からご答弁していただいております。中でも井戸知事が中心になって設立され、昨年12月までの10年間、連合長として主導されてきた関西広域連合の行く末について、最後にお尋ねいたします。
 東日本大震災でのカウンターパート方式、ドクターヘリの共同運航、更にはワールドマスターズゲームズの誘致など、これまで成果を上げてきたことは間違いなく井戸知事のご功績であります。ただし、私も連合議会議員を務めましたが、年々その活気が失われてきた感も否めません。それを最も感じているのは、井戸知事ご本人ではないでしょうか。
 そこで提案ですが、今こそ実績を積んだ関西広域連合を母体とした道州制への移行を本気で目指すべきではないでしょうか。これまで、井戸知事は、道州制へは一貫して慎重な姿勢を示される一方、連邦制を目指すのであれば選択肢の一つや、また、私の令和2年9月定例県議会での質問に対しては、新しい広域連携の在り方の検討として、新しい形での道州制も関西広域連合での検討に含まれることもあるとのご答弁をいただきました。
 コロナの状況が収まれば、大阪府市の二重行政の問題が再燃するかもしれませんし、都構想の次は道州制という風潮になるかもしれません。コロナを契機に、地方の行政形態への関心も高まっております。特に今後のデジタル化の進展は、国の在り方、都道府県の在り方に大きく影響してくるものと思われます。
 そして何より、明治以来、繰り返される市町村合併に比して、都道府県の数だけが当時のままという事実は変わっておりません。
 このようなときに、次の知事は、井戸知事のように理路整然と道州制の問題点を答えていくことができるんでしょうか。むしろ、国や大阪から押しつけられる道州制よりも、関西広域連合の実績を母体とする道州制を目指し、兵庫県が主導してはどうかと考えます。
 道州制への警戒が強い近隣府県にとっても、長年、連合長を務められた井戸知事が提唱する道州制ならば、比較的受け入れやすいのではないでしょうか。
 そこで、井戸知事には、知事退任後、自由な立場となられる中、ライフワークとして、これまでの各府県首長や経済界、国とのパイプを生かし、関西広域連合を発展させた形での道州制の設立に向けてご尽力いただきたいと切に願うところです。このことが国出先機関の丸ごと移管への答えとなるであろうし、地域主権改革の成果の継承にもつながると考えますが、知事のご所見をお伺いいたします。

答弁

兵庫県知事 井戸敏三○知事(井戸敏三)
 まず、二重行政の解消と特別自治市についてのお尋ねがありました。
 指定都市制度は、基本的に、県の事務のうち社会福祉関係と社会資本整備関係を中心に移譲を受け、その推進に責任を持たれて運営されますので、基本的に社会福祉や社会資本整備では、二重行政ということは生じ得ません。県の権限が全部移っておりますが、生じ得ません。
 しかし、産業とか文化の分野などでの分野では重なることが考えられますが、本県と神戸市との間では、医療産業都市の推進やスタートアップの創出など、お互いに連携・協力しながら関連施策に取り組んできておりますので、大きな重複は生じていないと考えています。
 特に、私は阪神・淡路大震災からの復旧・復興に当たりまして、県は県、神戸市は神戸市というような態度ではなかなか復旧・復興が進んでいかないということを身をもってそれぞれが体験、経験しておりますだけに、お互いの立場を考えながら、協力し合うという、そのような基本姿勢が、県、市で出来上がっていると、このように考えています。
 県庁舎周辺や三宮周辺を含む都心エリアの再整備計画についても、県と神戸市の関係部局による検討会議を設置して、この2月に取りまとめを行ってきました。県市連携のもとで、計画の具体化を進めているわけです。
 なお、ご指摘のアリーナなんですが、私は経過そのものは十分承知しておりませんけれども、ウオーターフロントの再開発の中で、事業者側から提案があったもの、これを採用されようとしていると承知しています。
 この話を聞きましたとき、私は県がアリーナを整備しなくても十分対応できるようなアリーナができるのかというふうに、一瞬期待したんでありますが、規模が小さ過ぎます。1万人規模では、世界的な大会を兵庫で開くようなアリーナにはなり得ません。
 そのような意味で、バスケットボールの主会場にしようということが中心のようですので、アリーナ構想は、今後も十分検討していただく必要がある、このように私自身は考えております。
 さて、特別自治市ですけれども、指定都市市長会が法制化を目指されているわけでありますが、特別自治市の構想の基本は、要は都道府県の区域から外れる、政令市は政令市として独立させろ、都道府県と同じような立場にさせろ、こういうことであります。したがって、区域内の施策の重複は、そのような意味では、県と同格ですから生じないということになります。
 ただ、それだけ済むのかという問題が市民から見てあるのではないでしょうか。例えば、災害対応です。大規模の災害への対応を考えましたとき、南海トラフ地震や、あるいは今回のコロナだけではなくて、新たな感染症対策などの大規模災害への対応、あるいは広域的な観光や産業のネットワークの形成など、都道府県の広域調整機能の発揮がこれまで以上に求められているのではないか。
 そのような意味で、市町域を越えた事務執行や市町間の連携調整体制の構築が、本当にうまく確保できるのか。また、税収が基本的に県税から特別市に移りますけれども、その税収減により周辺市町における国の行政サービス機能に支障が生じないのかなど、課題があると考えています。
 しかも根本的には、今、何のために特別実施市の成立を目指さなきゃいけないのか。十分説明されたと言えませんし、全然分かりません。そのような意味で、もっと慎重であってもいいのではないかと私自身は思っています。
 兵庫県は、ご指摘のように、150年を超える歴史の中で、現在の区域となるまで、飾磨県、豊岡、名東、両県の一部区域を編入・統合し、この広大な県土を基盤に、世界的な貿易都市となる神戸市を含め、県全体の発展を図ってきました。したがいまして、特別自治市の持つ課題や兵庫の成り立ちを踏まえる、現行制度のもとで緊密な意思疎通を図りながら連携・協力していくことで、何か問題があるのか、ないのか。一番最初の課題を十分に議論していただく必要があるのではないか、このように考えているものでございます。
 続きまして、選択と集中についてのお話がありました。
 財政運営は、やはり持続可能な行財政基盤が確立されて初めて新しい課題に的確に対応していくことができる。財政制約があると、その制約の範囲で施策を考えることになってしまいますので、そうなると、新たな課題へ十分対応できなくなるおそれがある。したがいまして、持続可能な財政基盤の確立のために、いろんな諸努力を重ねていく、これが財政運営の基本だと、このように考えています。
 そのときにご指摘もありましたが、平成25年からはチャレンジ枠、28年からは地域創生枠、平成30年は150周年を記念して記念事業枠、そして2030年の展望を実現させるためのすこやか兵庫枠を平成元年からというような形で、その時々の課題に焦点を当てて、そして部局全体として議論するための枠として設けました。
 どんな成果あったかと、私は大変全てが成果だったと思っていますが、あえて言いますと、県版の、例えば地域おこし協力隊の設置、あるいは新規就農者等への農業施設貸与事業、あるいはものづくり分野での女性就業の促進事業、あるいは教育でいいますと、兵庫型のスチーム教育の推進、これなど新規事業が予算化されて、新規要求枠が活用された例になるのではないかと思います。
 平成20年度から行財政構造改革を行ってきて、事業の選択と集中を徹底してまいりました。やめた代表を挙げにくいのでありますが、例えば、長寿祝い金事業とか、あるいは大学生の海外渡航を経験させる大学洋上セミナーですとか、あるいは県民交流の船事業を廃止させていただきました。県民交流の船などは、今でも特にお年寄りから、なぜやめたんですかと、こう言われたりしております。
 一方で、これらの見直しによる財源を活用した防災・減災対策の強化とか、地域創生の展開とか、新しいニーズに対応してきたものでございます。
 今回の行財政運営方針の見直しに当たりましても、ご指摘ありましたが、所期の目的をそれぞれの事業が果たしているかどうか十分検証して、スクラップ・アンド・ビルドによる選択と集中を一層徹底していきたいと考えております。
 ただ、ご指摘ありましたが、やめることの難しさ、これは実感をさせていただいております。特に県民の活動に関わる事業、地域活性化など、地域を巻き込んだ事業、これにつきましては、成果が直ちに出ないということもありまして、持続可能性に期待をする、継続に期待をするといったところがありますので、なかなかやめにくいというところが、率直に申し上げていけるのではないかと思います。
 しかし、今後のデジタル化の本格推進とか変化に強い産業構造への転換とか、地方回帰を促す環境整備など、行政課題に取り組む必要がありますので、持続可能な行財政基盤を確立するために、しっかりとした3年見直しを実施していかなければならない、このように組織挙げて対応させていただきます。
 続いて、道州制とか関西広域連合の関係についてのお話をいただきました。
 関西広域連合の設立時に道州制の議論が活発に行われ、広域連合は道州制に転嫁するとの考え方がある一方で、大阪への一極集中を警戒し、道州制をそのまま目指すべきではないという考え方が並立したのは事実であります。
 今回設立をしたときは、最大公約数的な意見でありますが、広域連合は道州制の一里塚ではないことを構成府県市間の合意し、これを前提に広域連合が設立されたという経緯でございます。したがいまして、今でも道州制を広域連合が直ちに転換していくということはないと理解をしております。
 道州制については、まず、国全体の統治機構がどうあるべきなのか。つまり今のような一極集中体制、中央集権体制がいいのかどうかというような議論も十分にする必要がありますし、併せて、なぜ都道府県が問題なのかという議論がされたことはない。都道府県が問題だというのは、明治以来、一度も合併してないじゃないかという指摘だけなんです。変わってないのがおかしいという指摘だけをされているんです。これが都道府県がおかしいという、要らないという理由になるんでしょうか。私はそこの1点が一番の問題点だと、実をいうと考えています。
 広域行政の必要性は否定しません。ですけど、都道府県が要らないという、論証がされたことはないのではないか、決めつけはありますけどという意味で、十分慎重に議論されるべきではないか、このように思っております。
 また、道州制の課題としては、広大な区域になりますので、住民意思の地方政治への十分な反映ができるのか、あるいは州都へ一極集中してしまって、州都以外の地域の活力が奪われてしまうのではないかというようなことも言われております。
 一方で、関西広域連合は、この10年間で七つの広域事務の推進などを中心に、広域連合がある関西ならではの成果を上げてきたと言えるのではないかと思っています。
 そのような意味で、これから新しい10年に、関西広域連合入っているわけでありますが、国との共同事務処理の仕掛けを考えていくとか、あるいは関西に対する国の計画策定事務を広域連合に委ねていただくとか、あるいは地方分権特区制度として提案していますが、地域限定の事務権限の移譲を行うとか、新たな推進方式を国に提案して、積極的に国の権限事務移譲の移譲につないでいく努力が必要なのではないかな、このように思っています。
 ただ、広域連合を更に発展させ、広域課題に対応していくためには、道州制という考え方自身も検討は必要だ。これは前から私が申し上げているところであります。
 そのときに本当に府県域を潰してしまったほうがいいのか、府県の機能をある程度残したほうがいいのかというような幅広の検討が不可欠なんではないかと、このように思っています。
 関西広域連合を構成する府県知事、市長の皆さんには、連合の成果を生かした今後の広域行政の目指すべき姿について、引き続き検討していただくことを期待したいと思います。
 そのような検討の中心に、ライフワークとして取り組めというご指導でありますが、これは私がその任にある、耐えられるかどうかということもありますし、辞めてから十分に検討させていただければと思っております。
 ともあれ、関西広域連合はしっかりと生かして活用を図っていくべき存在ではないかというふうに考えています。どうぞよろしく今後もご指導をお願いいたします。